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将棋の封じ手とは?書き方・封印の手順から翌朝の開封まで公平性の仕組みを徹底解説

霧島 直人 霧島 直人 • 更新: • 公開: • 読了約 18 分
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将棋のタイトル戦を観戦していると、夕方になるころに棋士が別室へ移動し、赤いペンで何かを書き、封筒に入れて立会人に預ける場面が登場します。これが「封じ手(ふうじて)」です。封じ手とは、2日制の対局で1日目を終える際、翌日に指す予定の次の一手を専用の用紙に記録し、封筒に入れて厳重に保管する仕組みです。

なぜ次の一手をわざわざ秘密にするのでしょうか。誰が記入し、どのように封印するのか。翌朝は誰が開封し、持ち時間はどう扱われるのか。2026年のタイトル戦で見られた実例も交えながら、封じ手の意味、具体的な手順、立会人の役割、封筒の保管方法まで初心者にも分かりやすく解説します。

【基本知識】将棋の封じ手とは?意味と仕組みを初心者向けに解説

将棋封じ手とは

将棋の封じ手とは、対局を翌日に持ち越す際、次に指す棋士が自分の指し手をあらかじめ用紙に記入し、封筒に入れて封印しておく制度です。

読み方は「ふうじて」。囲碁やチェスなどでも似た仕組みが使われますが、将棋では主に2日制のタイトル戦で目にすることができます。

封じ手と「指し掛け」の違い

関連する用語に「指し掛け(さしかけ)」があります。これは、対局を途中で中断することを意味します。

例えば、1日目の対局が終了時刻を迎えた場合、その時点で対局を中断し、翌日に続きを指します。この中断が指し掛けであり、その際に次の一手を記録して封印する手続きが封じ手です。

つまり、両者は同じ意味ではありません。

  • 指し掛け:対局を一時的に中断すること。
  • 封じ手:再開後に指す一手を秘密にして保管すること。
  • 指し継ぎ:中断していた対局を再開すること。

封じ手は単なる休憩の合図ではなく、翌日の対局を公平に始めるための正式な手続きなのです。

封じ手はどんな対局で行われる?

代表的なのは、2日制で開催されるタイトル戦です。

将棋界では、名人戦、竜王戦、王位戦、王将戦などの2日制の七番勝負で封じ手が行われる場面があります。

一方、1日で決着する対局では、通常この手続きは必要ありません。すべての公式戦で必ず封じ手を行うわけではなく、対局日程や棋戦の運営規定によって異なります。

日本将棋連盟の対局規則では、公式棋戦における立会人の設置や対局進行の管理についても定められています。

【目的と理由】なぜ封じ手をする?対局の公平性を守る重要な役割

封じ手を行う最大の理由は、対局者の間に不公平な思考時間が生じることを防ぐためです。

封じ手がなければ、どちらかが有利になる可能性がある

仮に、1日目の終了時に手番の棋士が盤上に次の一手を指して対局を終えたとします。

その場合、相手は次の日の対局開始まで、公開された一手に対して時間をかけて考えることができます。持ち時間を消費しない夜間に、次の対応をじっくり検討できるわけです。

反対に、手番の棋士がまだ指し手を決めていなければ、その棋士だけが翌日まで次の一手を考え続けられる状況になります。

どちらのケースでも、情報の公開タイミングによって一方に有利な条件が生まれかねません。

そこで、次の一手を紙に記録して秘密にすることで、相手に指し手を先に見せることなく、対局を中断できるようにしています。

封じ手には心理戦の側面もある

封じ手は公平性を守る制度であると同時に、タイトル戦の見どころにもなっています。

封じ手を行う棋士は、翌日の展開を見据えて一手を選びます。局面によっては、複数の有力候補から慎重に判断しなければなりません。

一方、相手はどの手が選ばれたのか分からないまま翌朝を迎えます。封じ手の局面から考えられる候補手を予想することはできますが、実際に選択された一手は開封まで明らかになりません。

観戦する側にとっても、翌朝の開封は期待が高まる瞬間です。封筒から現れた一手が予想どおりなのか、それとも意表を突くものなのか。盤上の勝負とは別の緊張感が生まれます。

【実践手順】封じ手の書き方から封筒への封印・翌朝の開封まで

封じ手の手続きは、いくつかの段階に分かれています。ここでは、一般的な2日制タイトル戦で行われる流れを順番に整理します。

1. 封じ手の時刻を迎える

1日目の対局は、あらかじめ決められた時刻に中断されます。

多くの2日制タイトル戦では、午後6時が封じ手の基準時刻として設定されています。対局の進行や棋戦ごとの規定によって、実際の手続きが始まる時刻は異なります。

この時点で次に指す権利を持つ棋士が封じ手を行います。

2. 記録係が封じ手用紙の局面図を準備する

封じ手に使用するのは、専用の封じ手用紙です。

用紙には盤面の局面図があり、記録係がその時点の駒の配置を記録します。棋士はこの図を使って、自分が翌日に指す手を記入します。

ここで重要なのは、封じ手を書くのは棋士本人ですが、盤面の配置を記録する作業には記録係が関わるという点です。

3. 手番の棋士が別室で次の一手を記入する

封じ手を行う棋士は、相手に指し手を見られないよう、指定された別室などに移動します。

一般的な記入方法は、赤いペンを使って次のように示すものです。

  • 動かす駒を丸で囲む。
  • 駒の移動先を矢印で示す。
  • 持ち駒を打つ場合は、持ち駒の種類を示して打つ場所を矢印などで記入する。
  • 成るか成らないかの判断が必要な場合は、「成」「不成」を明記する。

特徴的なのは、通常の棋譜のように指し手の符号だけを書く形式ではないことです。

2025年3月9日のALSOK杯王将戦中継ブログでは、実際に使われた封じ手用紙が紹介されました。動かす駒を丸で囲み、矢印で着手先を示す形式で、原則として符号は記載せず、成・不成が必要な場合に欄外へ記す方法が説明されています。

4. 同じ封じ手を2通作成して封筒に入れる

封じ手用紙は、原則として同じ内容のものを2通作成します。

それぞれを専用の封筒に入れ、封をします。封筒には棋戦名、対局会場、対局者名などが記載され、立会人などの署名が加わることもあります。

加えて、両対局者が封筒の封をした部分に署名することで、後から開封されていないかを確認できるようにします。

5. 立会人と対局場がそれぞれ保管する

封印が完了した2通の封じ手は、別々の場所で保管されます。

一般的には、一通を立会人が管理し、もう一通を対局場となるホテルや旅館などが保管します。

2020年7月の第61期王位戦七番勝負第1局の中継記録でも、立会人と対局場がそれぞれ封じ手を保管する手続きが紹介されています。

2通に分けるのは、紛失や保管上のトラブルに備え、翌日の確認を確実にするためです。

6. 翌朝、前日の局面を再現してから開封する

2日目の朝は、まず両対局者が盤面を整えます。

記録係が前日の棋譜を読み上げ、それに従って初手から指し手を再現します。封じ手直前の局面まで戻したところで、立会人が封筒を開封します。

封じ手用紙を取り出して内容を確認し、両対局者に示したうえで、立会人が指し手を読み上げます。

最後に封じ手を記入した棋士が実際にその一手を盤上に指し、対局が再開されます。

【関係者と役割】封じ手は誰が書く?立会人・記録係・対局場の仕事

封じ手は棋士だけで完結する手続きではありません。複数の関係者がそれぞれの役割を担うことで、秘密保持と公平性を支えています。

それぞれの関係を整理すると、次のようになります。

関係者・道具 主な役割 公平性を守る仕組み
封じ手を行う棋士 次の一手を専用用紙に記入する 相手に指し手を知られないよう別室で記入する
対局相手 封筒への署名などを行う 封印が保たれていることを確認する
記録係 盤面の配置や棋譜、時間を記録する 局面の正確な再現を支える
立会人 封じ手の受け取り、管理、翌日の開封を担当する 手続きと対局進行を監督する
対局場・ホテル もう一通の封じ手を保管する 立会人保管分とは別に保管する
封じ手用紙・封筒 指し手を記録し、秘密の状態で保存する 署名と封印によって改ざんや開封を確認しやすくする
立会人は封じ手の管理責任者

立会人は、対局が規則に沿って進んでいるかを確認する重要な役割を担います。

日本将棋連盟の対局規則では、公式棋戦に立会人を置き、規則遵守の確認、良好な対局環境の維持、対局当日の裁定や必要な処置を行う権限が定められています。

封じ手の場面では、封筒の受け取りや保管、翌朝の開封などを通じて、手続きが適切に進むよう管理します。

記録係は正確な局面再現を支える

記録係は、対局中の指し手や消費時間を記録する担当者です。

翌朝の封じ手開封では、前日の棋譜を読み上げ、両対局者が同じ局面を正確に再現できるようにします。

日本将棋連盟の対局規則でも、記録係の役割として、棋譜と時間を正確に記録し、両対局者に公平に情報を伝えることが示されています。

封じ手は、棋士の判断だけでなく、こうした裏方の仕事によって成立しているのです。

【持ち時間とタイミング】封じ手の時刻を過ぎても考えられる?

観戦初心者が疑問に感じやすいのが、封じ手の時刻と持ち時間の関係です。

午後6時が封じ手の定刻だからといって、必ず午後6時ちょうどに記入を終えなければならないというわけではありません。

定刻後も考え続けることはできる

棋士が封じ手をするかどうか判断するまでに考慮を続ける場合、その時間は持ち時間の扱いに従って計上されます。

実例として、2025年1月25日の第74期王将戦七番勝負第2局では、藤井聡太王将が午後6時27分まで考え、封じ手の意思を示しました。

当日の王将戦中継ブログには、18時27分の着手として持ち時間を消費し、その扱いが翌日に引き継がれることが記録されています。

つまり、封じ手の定刻を過ぎても考え続けることは可能ですが、その時間が無条件で与えられるわけではありません。

封じ手を行うタイミングも戦略の一部

封じ手の時刻が近づくと、棋士は次の一手を決めるタイミングも考慮します。

早めに指し手を決めて封じれば、1日目の時間を使い切る前に対局を中断できます。一方、難しい局面では、少しでも考える時間を確保してから封じたいという判断もあります。

ただし、どの程度まで考えるかは残りの持ち時間や局面の複雑さによって変わります。

封じ手は単なる事務的な区切りではなく、限られた時間の使い方を含めた勝負の一部なのです。

翌日の持ち時間はどうなる?

翌日の対局では、封じ手の開封後に対局が再開されます。持ち時間の扱いは、それぞれの棋戦の時間規定に従います。

封じ手によって、翌日の持ち時間が無条件に最初から与えられるわけではありません。前日の消費時間や残り時間が関係するため、棋士は初日から時間配分を意識して戦っています。

【2026年の実例と誤解】封じ手の開封方法・ルール・マナーを検証

封じ手は長く続く伝統的な手続きですが、実際の対局中継を見ると、開封の様子や封筒の扱いにも注目すべきポイントがあります。

2026年2月の王将戦でも封じ手が公開された

2026年2月4日、第75期王将戦七番勝負第3局の2日目には、封じ手の開封が行われました。

対局者が1日目の指し手を再現した後、立会人の島朗九段が封筒にハサミを入れ、封じ手用紙を両対局者に示しました。

読み上げられた指し手は「▲3八飛」。午前9時に対局が再開されました。

この一連の流れは、封じ手が単に紙を開ける儀式ではなく、盤面の再現、封筒の開封、指し手の公開、実際の着手という段階を踏んでいることを示しています。

2026年4月の名人戦では開封方法にも注目

2026年4月26日に行われた第84期名人戦七番勝負第2局でも、封じ手の開封が話題になりました。

藤井聡太名人が封じた37手目の封筒を、立会人の行方尚史九段が開封した際、ハサミを少し入れた後に手でちぎる方法を披露しました。

ABEMA TIMESの報道によると、封筒をどのように切るかについて明確な統一ルールがあるわけではなく、立会人によって開封の仕方に違いがあります。

つまり、重要なのはハサミの入れ方ではありません。封印された状態を確認でき、対局者の前で透明性を保ちながら開封することです。

封じ手に関するよくある誤解

誤解1:封じ手は必ず午後6時に行う。

実際には、午後6時は多くの2日制タイトル戦で採用されている時刻の一つです。すべての棋戦で同じ時刻になるわけではありません。また、定刻を過ぎて考慮を続けるケースもあります。

誤解2:封じ手は立会人が書く。

実際に次の一手を決めて記入するのは、次に指す棋士本人です。立会人は封じ手の手続きや保管、開封を管理します。

誤解3:封じ手は1通だけ作る。

一般的なタイトル戦では2通作成します。立会人と対局場で分けて保管することで、万一の紛失などに備えています。

誤解4:翌朝は封筒を開けるだけで対局が始まる。

実際には、まず記録係の読み上げによって前日の手順を再現します。その後、立会人が開封し、封じ手を公開してから着手するという順序です。

封じ手で守られるルールとマナー

封じ手を適切に行うには、対局者と関係者がそれぞれの役割を守る必要があります。

  • 封じ手を行う棋士は、相手に見られない場所で記入する。
  • 封じ手用紙には、誰が見ても判別できるよう明確に記入する。
  • 封筒の封印と署名を適切に行う。
  • 保管担当者は翌日の開封まで封筒を安全に管理する。
  • 翌朝は両対局者の前で封筒を確認し、開封する。
  • 封じ手が公開されてから、記入された棋士が実際に着手する。

こうした作法は、棋士同士の信頼関係だけでなく、タイトル戦を支える運営全体への信頼にもつながっています。

【将棋の封じ手とは】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:将棋の封じ手は誰が書くのですか?
A1:翌日の最初の手番を持つ棋士本人が書きます。記録係が用紙の局面図を準備し、棋士が別室で赤ペンを使って次の一手を記入します。

Q2:封じ手はなぜ2通作るのですか?
A2:紛失や保管上のトラブルに備えるためです。一般的には1通を立会人、もう1通を対局場が保管します。

Q3:封じ手は何時に行われますか?
A3:午後6時に設定される棋戦が多く見られます。ただし、実施時刻は棋戦ごとの規定によって異なります。定刻後も持ち時間を使って考える場合があります。

Q4:翌日の封じ手は誰が開封しますか?
A4:原則として立会人が開封します。前日の指し手を再現した後、対局者の前で封筒を開き、封じ手を読み上げます。

Q5:封じ手の内容は相手に知られないのですか?
A5:封印する段階では、相手に見られないように別室で記入します。封筒は署名を施して保管され、翌朝の開封まで指し手は公開されません。

Q6:封じ手は1日制の対局でも行われますか?
A6:通常、1日で対局が完結する棋戦では必要ありません。主に2日制の対局で、翌日に持ち越す際に使用されます。

Q7:封じ手の開封方法に決まりはありますか?
A7:封印された封筒を立会人が開封して指し手を公開するのが基本です。ハサミで切る位置や開封の細かな所作まで、すべてが統一されているわけではありません。

将棋の封じ手とは、2日制の対局で1日目を終える際、翌日の最初の一手を専用用紙に記入し、封筒に入れて保管する仕組みです。

その目的は、対局の中断によって生じる思考時間や情報の不公平を防ぐことにあります。

手続きの中心となるのは、次に指す棋士による記入、2通の用紙の作成、封筒への封印、立会人と対局場による保管、そして翌朝の開封です。記録係は盤面の再現を支え、立会人は手続きと対局進行を監督します。

2026年の王将戦や名人戦でも確認できるように、封じ手は現在もタイトル戦を支える大切な仕組みとして受け継がれています。

将棋中継で棋士が別室へ移動し、赤ペンを手に封筒を預ける場面を見かけたら、それは単なる休憩ではありません。翌日の勝負を公平に始めるための重要な一手を決めている瞬間です。

封じ手の意味や手順を知っておけば、翌朝の開封で明らかになる一手にも、より深い興味を持って対局を楽しめるはずです。

主な事実確認資料: 日本将棋連盟の対局規則、王位戦・王将戦の公式中継ブログ、ABEMA TIMESの2026年4月26日付報道。

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コンテンツディレクター 霧島 直人
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芸能担当15年。事務所の公式リリースと本人の公式SNSを一次情報とし、夕刊紙の報道は複数媒体が一致した場合だけ触れます。

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