スーパーのチーズ売り場で目にする「ナチュラルチーズ」と「プロセスチーズ」。どちらも身近な食品ですが、製法や風味、保存性には明確な違いがあります。ナチュラルチーズは、生乳などに含まれるたんぱく質を凝固させ、乳清(ホエイ)の一部を取り除いたもの、またはそれを熟成させたものです。原料となる乳や微生物、熟成期間、製造方法によって、味わいも食感も大きく変わります。
2026年3月5日更新の独立行政法人農畜産業振興機構(alic)のチーズ解説や、厚生労働省の現行法令、消費者庁の食品表示資料を踏まえると、購入時に押さえたいのは「チーズの種類」「加熱の必要性」「保存方法」の3点です。この記事では、法令上の定義から代表的な種類、カロリー、食品表示の読み方、安全な食べ方まで、日常の買い物や食卓で役立つ知識を整理します。
【基本を解説】ナチュラルチーズの定義とプロセスチーズとの違い

ナチュラルチーズを理解するうえで重要なのが、食品としての一般的な説明と、法令上の定義を区別することです。日本では、チーズの定義が「乳及び乳製品の成分規格等に関する命令」に定められています。
ナチュラルチーズとは何か厚生労働省が所管する同命令では、ナチュラルチーズについて、乳、バターミルク、クリームなどのたんぱく質を酵素その他の凝固剤によって凝固させ、できた凝乳から乳清の一部を除去したもの、またはそれを熟成させたものなどと定義しています。これに加え、乳などを原料とし、同様の化学的・物理的・官能的特性を持つ製品も対象です。
つまり、「ナチュラルチーズは必ず生乳だけで作る」「必ず熟成させる」という理解は正確ではありません。牛乳のほか、山羊乳や羊乳などを使った製品もあり、モッツァレラのように熟成をほとんど行わないものもあれば、長期間熟成させるものもあります。
ナチュラルチーズとプロセスチーズはどう違う?両者の違いは、主に製造工程にあります。ナチュラルチーズは乳を凝固させ、乳清を取り除くなどして作るチーズです。一方、プロセスチーズは、すでにできているナチュラルチーズを粉砕し、加熱して溶かし、乳化したものを指します。
プロセスチーズでは加熱工程によって熟成に関わる微生物の働きが抑えられるため、一般に風味や品質を安定させやすくなります。ただし、保存期間は製品の水分量、包装、殺菌方法、保存条件などにも左右されます。「プロセスチーズなら必ず長持ちする」と単純化せず、個々の商品の期限表示を確認することが大切です。
独立行政法人農畜産業振興機構の2026年3月の解説でも、ナチュラルチーズはフレッシュタイプからハードタイプまで多様な風味を持ち、プロセスチーズは加熱によって品質が安定しやすい点が特徴として紹介されています。
なお、ナチュラルチーズは必ずしも「添加物を一切使っていないチーズ」という意味ではありません。名称だけで添加物の有無や原料の詳細まで判断することはできず、必要に応じて原材料名も確認する必要があります。
【種類別に比較】フレッシュ・白カビ・青カビ・ハードタイプの特徴
ナチュラルチーズは、製法や熟成方法、水分量、表面に繁殖させる微生物などによって分類されます。売り場で見かける代表的なタイプを知っておくと、好みや料理に合わせて選びやすくなります。
| 種類 | 代表例 | 特徴 | おすすめの食べ方 |
|---|---|---|---|
| フレッシュチーズ | モッツァレラ、カッテージ | 熟成をほとんど行わず、水分が多く、乳の風味が感じられる | サラダ、カプレーゼ、パン、デザート |
| 白カビチーズ | カマンベール、ブリー | 表面の白カビによって熟成が進み、内部がクリーミーになる | そのまま食べる、パンに合わせる |
| 青カビチーズ | ゴルゴンゾーラ、ロックフォール | 内部に青カビを繁殖させ、塩味や独特の香りを生み出す | パスタ、ソース、サラダ、はちみつとの組み合わせ |
| ウォッシュチーズ | マンステールなど | 表面を塩水などで洗いながら熟成させ、香りに個性が出る | パン、温かい料理、少量ずつ味わう食べ方 |
| セミハード・ハードチーズ | ゴーダ、エダム、エメンタール | 比較的水分が少なく、弾力や硬さがあり、熟成によるうま味を楽しめる | サンドイッチ、チーズ盛り合わせ、加熱料理 |
フレッシュチーズは、凝固させた乳から乳清を取り除くなどして作り、通常は長期間の熟成を行いません。酸味が穏やかなものから、さっぱりしたものまであり、ミルクに近い風味やみずみずしい食感を楽しめます。水分が多い製品は傷みやすいため、開封後は特に早めに食べる必要があります。
熟成チーズは、微生物や酵素の働きを利用して、時間をかけて風味や組織を変化させたものです。熟成が進むと、たんぱく質や脂肪などが分解され、香りやうま味、食感に変化が生まれます。ただし、熟成期間が長ければ必ずおいしい、あるいは栄養価が高いというわけではありません。
白カビチーズと青カビチーズの特徴白カビチーズは、表面に生育させた白カビの働きによって熟成が進みます。カマンベールなどは、時間の経過とともに内部が柔らかくなり、香りや味わいも変化します。表面の白い部分は製造に利用するカビであり、一般的な青カビや黒カビが生えた状態とは区別する必要があります。
青カビチーズは、内部に青カビを生育させることで、独特の香りと塩味、濃厚な風味を生み出します。青い筋や斑点は製品の特徴ですが、青カビが使われているという理由だけで、別の場所に発生したカビまで安全だと判断してはいけません。開封後に見慣れないカビや異臭が生じた場合は、食べずに処分するのが安全です。
初めて購入するなら、クセの少ないモッツァレラやゴーダから試し、慣れてきたら白カビ、青カビ、ウォッシュタイプへと広げると、自分の好みに合うチーズを見つけやすくなります。
【製造工程を理解】原材料とナチュラルチーズの作り方
ナチュラルチーズの基本的な原材料は乳です。牛乳、山羊乳、羊乳、水牛乳などが使われ、製品によって食塩、乳酸菌、凝乳酵素、その他の凝固剤などが加えられます。すべての製品が同じ原材料や製法で作られるわけではありません。
チーズはどのように作られるのか一般的なチーズの製造では、乳の成分を凝固させて固形分と乳清を分け、その後の処理によって水分や食感を調整します。熟成するタイプでは、さらに微生物や酵素の働きを利用して風味を形成します。
- 原料乳の準備:乳を受け入れ、製品の規格に合わせて必要な処理を行います。
- 凝固:乳酸菌や凝乳酵素などを利用し、乳のたんぱく質を凝固させます。
- カードの形成:固まった部分を必要に応じて切り分け、乳清を排出しやすくします。
- 水分調整と成形:排出する乳清の量や成形方法によって、チーズの水分や組織を調整します。
- 加塩:塩を加えることで風味を整え、製品の種類に応じて熟成環境などを調整します。
- 熟成または包装:必要な熟成を行うか、フレッシュチーズなどは製品に適した工程を経て包装します。
これは基本的な流れであり、実際の工程はチーズの種類によって異なります。モッツァレラのようにカードを温めて練る工程を持つものもあれば、表面にカビを生育させるもの、長い期間にわたって水分を管理しながら熟成させるものもあります。
原料乳や製法によって味が変わる理由乳の種類や成分、乳酸菌の種類、凝固方法、加塩、熟成温度などの条件は、チーズの香りや食感に影響します。たとえば、同じ白カビチーズでも、水分量や熟成の進み具合によって、口当たりや香りの強さは変わります。
「ナチュラルチーズ」という名称は、味や品質がすべて同じことを意味するものではありません。製造者や産地、原料乳、熟成方法などを組み合わせて選ぶことが、好みに合うチーズを探す近道です。
【栄養とカロリー】ナチュラルチーズは高カロリー?健康面の特徴
ナチュラルチーズは、乳に含まれるたんぱく質や脂質、カルシウムなどを摂取できる食品です。一方で、脂質や食塩相当量も製品によっては多く含まれるため、「チーズなら健康に良いから、量を気にせず食べてよい」と考えるのは適切ではありません。
100g当たりのカロリーを比較文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」に基づく食品成分データベースでは、ナチュラルチーズのエネルギーは種類ごとに異なります。たとえば、カマンベールは100g当たり291kcal、エダムは321kcalです。
これらは100g当たりの値であり、実際に食べる量とは区別して考える必要があります。仮に20g食べた場合、カマンベールなら約58kcal、エダムなら約64kcalです。製品や水分量によって数値は変わるため、商品に栄養成分表示がある場合はそちらも確認しましょう。
ナチュラルチーズに含まれる主な栄養成分たんぱく質:筋肉や皮膚など、体を構成する組織に必要な栄養素です。チーズは水分が少ない種類ほど、重量当たりのたんぱく質が多くなる傾向があります。
カルシウム:骨や歯の形成に必要なミネラルです。チーズはカルシウムを摂取できる食品ですが、含有量は種類によって差があります。
脂質:エネルギー源となる一方、摂取量の管理も必要な栄養素です。クリームチーズなど脂質の多い製品と、比較的水分の多い製品では、同じ重量でもエネルギー量が異なります。
食塩相当量:加塩する製品では、塩分の摂取量にも注意が必要です。青カビチーズや熟成チーズなど、味わいが濃厚な製品では、少量でも塩味を強く感じる場合があります。
ダイエット中は何を基準に選ぶべきかカロリーを抑えたい場合は、商品名や見た目だけで判断せず、栄養成分表示の「エネルギー」と「脂質」を確認しましょう。たんぱく質やカルシウムを意識する場合も、含有量を比較したうえで、食事全体のバランスを考えることが大切です。
また、ナチュラルチーズがプロセスチーズより必ず低カロリーということもありません。どちらも原料や水分、脂質などによって栄養価が変わるため、種類の名称だけで優劣をつけるのではなく、実際の表示を比較するのが合理的です。
【食品表示の見方】ナチュラルチーズの見分け方と失敗しない選び方
ナチュラルチーズかプロセスチーズかを見分けたい場合、パッケージの商品名だけで判断する必要はありません。まず確認したいのは、包装に記載された「種類別」などの表示です。
種類別表示・原材料名・保存方法を確認する消費者庁の食品表示資料では、乳製品について種類別表示や原材料名などの記載方法が示されています。店頭で購入するときは、次の項目を順に確認すると、製品の特徴を把握しやすくなります。
- 種類別:「ナチュラルチーズ」か「プロセスチーズ」かを確認する基本項目です。商品名に「チーズ」と書かれているだけでは、種類別の判断材料として不十分です。
- 原材料名:乳の種類や食塩など、使用されている原材料を確認します。原材料の表示は製品の特徴を知る手がかりになります。
- 原料乳の種類:牛乳、山羊乳、羊乳などの違いが表示されている場合は、味わいや原料の特徴を比較する際に役立ちます。
- 保存方法:「要冷蔵」などの表示に従い、購入後の温度管理を行います。
- 期限表示:賞味期限や消費期限を確認し、開封後は期限にかかわらず早めに食べ切ります。
- 加熱に関する表示:容器包装に入れた後に加熱殺菌した旨や、飲食に供する際に加熱が必要な旨の表示がないかを確認します。
食品表示基準に関する消費者庁のQ&Aでは、対象となる一部のナチュラルチーズについて、包装後に加熱殺菌した場合や、食べる際に加熱が必要な場合の表示方法が説明されています。こうした表示は、製品の取り扱いを判断するうえで重要です。
「ナチュラルチーズなら無添加」「白カビなら危険」は誤解ナチュラルチーズという名称だけでは、添加物の有無、原料乳の殺菌方法、包装後の加熱処理の有無までは判断できません。気になる点があれば、原材料名や加熱に関する表示、メーカーの製品情報を確認しましょう。
また、白カビや青カビは、特定のチーズを作るために利用される微生物です。製品に本来備わっているカビと、保存中に予期せず発生したカビは区別しなければなりません。カビの色だけで食品全体の安全性を判断するのではなく、製品の特徴と保存状態の両方を確認することが必要です。
購入時に迷ったら、用途から選ぶ料理に使うなら溶けやすさや風味、毎日少量食べるなら食べ切りやすさや栄養成分、チーズそのものを楽しむなら熟成度や香りを基準にすると選びやすくなります。食べ慣れていない人は、クセの少ないフレッシュタイプやゴーダなどから始めるとよいでしょう。
【そのまま食べられる?】保存方法・加熱による変化・安全性
ナチュラルチーズは、そのまま食べられる製品も多くあります。ただし、すべての製品が加熱せずに食べられるわけではありません。製品の製法や殺菌工程、食品表示に応じて判断することが大切です。
ナチュラルチーズはそのまま食べてもよい?そのまま食べることを想定した製品で、表示に従って適切に保存されている場合は、通常、そのまま食べられます。一方、加熱して食べる必要がある製品には、加熱に関する表示があります。購入時と調理前に確認し、加熱が必要な場合は指示に従いましょう。
とりわけ注意したいのが、リステリア・モノサイトゲネスによる食中毒です。厚生労働省や農林水産省は、加熱せずに食べるナチュラルチーズなどを原因食品の例として挙げています。リステリアは冷蔵温度でも増殖できるため、冷蔵庫に入れておけば完全に安全というわけではありません。
妊娠中の人は特に注意が必要です。農林水産省や食品安全委員会の注意喚起では、加熱殺菌していない乳から作られたナチュラルチーズなどについて摂取を避けるよう案内しています。製品の殺菌状況がわからない場合は、加熱して食べる方法を選び、妊娠中の食事については公的機関や医療従事者の案内を優先してください。高齢者や免疫機能が低下している人も、食品衛生に十分注意する必要があります。
ナチュラルチーズを加熱するとどう変わる?加熱すると、チーズに含まれる脂肪が溶け、たんぱく質の構造や水分の状態が変化します。その結果、柔らかくなったり、伸びたり、油分が分離したりします。変化の仕方はチーズの種類や水分量、酸度などによって異なります。
モッツァレラは加熱すると伸びのある食感を楽しみやすく、ゴーダやチェダーはトーストやグラタンなどに使いやすいタイプです。一方、フレッシュチーズなどは水分が多いため、加熱によって水分が出やすい場合があります。
加熱には風味や食感を変える役割だけでなく、リステリアなどの食中毒菌への対策という意味もあります。妊娠中などリスクが高い人は、表面だけを温めるのではなく、食品全体に十分に火が通る調理方法を選びましょう。
ナチュラルチーズの正しい保存方法一般社団法人日本乳業協会は、チーズの冷蔵保存について、10℃以下を目安とし、5℃前後での保存が理想的と案内しています。実際には商品ごとの保存方法の表示を優先し、購入後はできるだけ速やかに冷蔵庫へ入れましょう。
- 開封後は密閉する:乾燥やほかの食品のにおい移りを防ぐため、ラップや密閉容器を利用します。
- 水分に注意する:余分な水気はカビの原因になることがあります。冷蔵庫から出したチーズを戻す際は、表面の状態を確認します。
- 早めに食べ切る:開封後は外気や調理器具に触れる機会が増えるため、期限表示にかかわらず早めに消費します。
- 保存中の異常を確認する:製品本来の状態と異なるカビや異臭が生じた場合は、食べずに処分します。
冷凍保存は、チーズの種類によって食感や風味が変わることがあります。特にそのまま食べるタイプでは品質が落ちる場合があるため、冷凍の可否や方法は製品の案内を確認しましょう。粉チーズなど常温保存を指定された製品は、記載された保存方法に従ってください。
【ナチュラルチーズとは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ナチュラルチーズとプロセスチーズは、どちらが体にいいですか?
A1:一概にどちらが優れているとはいえません。どちらもたんぱく質やカルシウムなどを摂取できますが、エネルギー、脂質、食塩相当量は製品によって異なります。栄養成分表示を比較し、食事全体のバランスに合わせて選びましょう。
Q2:ナチュラルチーズは加熱しないと食べられませんか?
A2:そのまま食べられる製品もありますが、加熱が必要な製品もあります。パッケージの加熱に関する表示を確認してください。妊娠中の人などはリステリア対策が必要なため、殺菌状況を確認し、十分に加熱して食べる方法を選ぶと安心です。
Q3:ナチュラルチーズの白いカビや青いカビは食べても大丈夫ですか?
A3:白カビチーズや青カビチーズでは、製造に利用するカビが製品の特徴になっています。ただし、保存中に別のカビが生えた場合は話が異なります。見慣れないカビや異臭がある場合は、目に見える部分だけを取り除いて食べるのではなく、製品全体を処分してください。
ナチュラルチーズとは、乳などのたんぱく質を凝固させ、乳清の一部を取り除くなどして作るチーズです。フレッシュチーズから白カビ、青カビ、ハードタイプまで幅広く、原料乳や熟成方法によって風味や食感が大きく変わります。プロセスチーズとの最大の違いは製造工程にあり、プロセスチーズはナチュラルチーズを加熱・溶融して乳化したものです。
購入時に確認したい要点は、次の3つです。
- 味わいで選ぶ:さっぱりした味ならフレッシュタイプ、クリーミーさなら白カビ、個性的な風味なら青カビ、濃厚なうま味ならハードタイプを試す。
- 表示で選ぶ:種類別、原材料名、栄養成分表示、保存方法、加熱に関する表示を確認する。
- 安全性で選ぶ:開封後は早めに食べ切り、適切に冷蔵保存する。妊娠中などはリステリアへの注意を優先し、製品の殺菌状況や加熱方法を確認する。
チーズ選びで大切なのは、「ナチュラルチーズだから健康的」「プロセスチーズだから品質が劣る」といった名称だけの判断を避けることです。味、栄養、保存性、食べ方はそれぞれ異なります。法令上の定義と食品表示を理解し、用途や体調に合う製品を選ぶことで、日々の食事にも、料理やチーズそのものを楽しむ時間にも、より上手に取り入れられます。