2019年12月15日、阪神競馬場で開催された第71回朝日杯フューチュリティステークス(GⅠ)は、R.ムーア騎手が騎乗した1番人気サリオスが優勝。2歳マイル王決定戦で、1分33秒0という当時のレースレコードを樹立し、デビューから無傷の3連勝でGⅠタイトルを獲得した。
2着には武豊騎手のタイセイビジョン、3着には14番人気のグランレイが入線。上位2頭は順当な決着だった一方、伏兵グランレイの激走によって3連単は9万260円となった。2026年現在、改めて振り返っても、サリオスの完成度と波乱を演出したグランレイの末脚が際立つ一戦である。
【レース概要】朝日杯フューチュリティステークス2019はサリオスが無敗でGⅠ制覇

2019年の朝日杯フューチュリティステークスは、阪神競馬場の芝1600m・右回り外回りコースで行われた。第71回を迎えたこのレースには16頭が出走。天候は晴れ、芝は良馬場だった。
開催日は2019年12月15日の日曜日。2歳馬にとって翌年のクラシック戦線を占う重要なGⅠであり、重賞勝ち馬や将来を期待される素質馬が顔をそろえた。
サリオスが1番人気に支持された理由レース前の注目を集めていたのは、堀宣行厩舎のサリオスだった。
同馬は2019年6月の新馬戦を勝利。その後、サウジアラビアロイヤルカップでも圧倒的な走りを披露し、2連勝で朝日杯FSに参戦した。
特に前走のサウジアラビアロイヤルカップでは、東京芝1600mを1分32秒7で走破。2歳コースレコードを記録しており、マイル適性とスピード能力の高さはすでに証明されていた。
今回の単勝オッズは2.0倍。2番人気タイセイビジョンの5.8倍を大きく引き離しており、サリオスへの期待がいかに高かったかが分かる。
その期待に応え、サリオスは3戦3勝でGⅠ初制覇。R.ムーア騎手にとっても、2013年のアジアエクスプレス以来となる朝日杯フューチュリティステークス2勝目となった。
【全着順・結果一覧】サリオス、タイセイビジョン、グランレイの順位と人気を比較
朝日杯FS2019の結果で最も注目すべきなのは、上位3頭の人気とレース内容の違いだ。
サリオスは1番人気に応える勝利。タイセイビジョンも2番人気にふさわしい走りで2着を確保した。一方、グランレイは14番人気という低評価を覆し、最後方に近い位置から追い込んで3着に食い込んだ。
朝日杯FS2019の全16頭の着順・騎手・単勝オッズ| 着順 | 馬番・馬名 | 騎手 | タイム | 人気・単勝オッズ |
|---|---|---|---|---|
| 1着 | 6 サリオス | R.ムーア | 1:33.0 | 1番人気・2.0倍 |
| 2着 | 8 タイセイビジョン | 武豊 | 1:33.4 | 2番人気・5.8倍 |
| 3着 | 9 グランレイ | 池添謙一 | 1:33.6 | 14番人気・229.3倍 |
| 4着 | 14 タガノビューティー | 和田竜二 | 1:33.6 | 9番人気・61.6倍 |
| 5着 | 13 プリンスリターン | 原田和真 | 1:33.8 | 15番人気・347.1倍 |
| 6着 | 1 ジュンライトボルト | 岩田康誠 | 1:33.9 | 10番人気・66.8倍 |
| 7着 | 2 ビアンフェ | 藤岡佑介 | 1:33.9 | 5番人気・12.6倍 |
| 8着 | 16 ラウダシオン | C.ルメール | 1:34.0 | 6番人気・18.0倍 |
| 9着 | 7 ウイングレイテスト | 松岡正海 | 1:34.3 | 8番人気・43.5倍 |
| 10着 | 12 レッドベルジュール | C.スミヨン | 1:34.3 | 3番人気・5.9倍 |
| 11着 | 4 トリプルエース | W.ビュイック | 1:34.4 | 7番人気・37.9倍 |
| 12着 | 11 カリニート | 幸英明 | 1:34.9 | 16番人気・453.0倍 |
| 13着 | 5 マイネルグリット | 国分優作 | 1:35.8 | 13番人気・174.2倍 |
| 14着 | 10 エグレムニ | 福永祐一 | 1:35.8 | 12番人気・146.8倍 |
| 15着 | 15 メイショウチタン | 松山弘平 | 1:36.5 | 11番人気・117.0倍 |
| 16着 | 3 ペールエール | O.マーフィー | 1:37.0 | 4番人気・8.8倍 |
※単勝オッズはレース確定時の数値。タイムはJRA公表の競走成績に基づく。
2着タイセイビジョンは武豊騎手の好騎乗が光るタイセイビジョンは2番人気で出走し、勝ち馬から2馬身半差の2着に入った。
序盤は12番手付近で脚を温存し、4コーナーでは8番手まで進出。直線では馬場の中央から力強く伸び、先頭のサリオスに迫った。
結果的に勝利には届かなかったものの、速い流れの中で後方から脚を伸ばした内容は評価できる。武豊騎手の判断によって、前半のペースに巻き込まれず、最後の直線で持ち味を発揮した。
14番人気グランレイが3着に飛び込んだ理由このレース最大のサプライズはグランレイだった。
単勝229.3倍の14番人気。事前評価では伏兵の立場だったが、直線で見せた末脚は出走馬の中でも際立っていた。
3コーナー、4コーナーともに15番手。後方でじっくり脚をため、最後の直線では大外から追い込んだ。推定上がり3ハロンは34秒9で、勝ち馬サリオスの35秒4、2着タイセイビジョンの35秒3を上回る最速の末脚だった。
最後にはタガノビューティーを差し切り、3着を確保。14番人気の馬がGⅠの馬券圏内に入ったことで、配当面でも大きな存在感を残した。
【サリオスの勝因を徹底分析】R.ムーアの位置取りとハーツクライの血統
サリオスの勝利を単純に能力差だけで説明するのは十分ではない。注目すべきなのは、速いペースに対応しながら好位を確保し、最後まで脚を使えたことだ。
好位3番手から抜け出したレース運びスタート後、逃げたのはビアンフェ。メイショウチタンが2番手につけ、その直後にサリオスとトリプルエースが並ぶ形になった。
サリオスは3コーナー、4コーナーともに3番手。後方で脚をためるのではなく、前を射程圏に入れたまま競馬を進めた。
通常、前半から速いペースで進むレースでは、先行馬が最後の直線で苦しくなるケースが多い。実際、このレースでは逃げたビアンフェが7着、2番手を追走したメイショウチタンが15着に終わっている。
それでもサリオスは失速しなかった。直線でビアンフェをかわし、残り250m付近で先頭に立つと、追いすがるタイセイビジョンらを振り切った。
特に重要なのは、先行しながらも最後の坂で再び伸びた点だ。前半のスピードと終盤の持続力を両立したことが、2馬身半差の勝利につながった。
父ハーツクライ、母サロミナという血統背景サリオスの血統も、このレースを理解するうえで見逃せない要素だ。
- 父:ハーツクライ
- 母:サロミナ
- 母の父:Lomitas
- 生産牧場:ノーザンファーム
- 馬主:シルクレーシング
- 調教師:堀宣行
父ハーツクライは、現役時代に有馬記念やドバイシーマクラシックなどを制した日本を代表する名馬。産駒には長距離適性や持続力を示す馬も多く、サリオスもその血統的背景を受け継いでいた。
母サロミナはドイツオークスの勝ち馬。母系にも欧州の競走能力を支える血統があり、スピードだけでなく、レースを通じて力を発揮する持続力も期待できる組み合わせだった。
JRA公式のレース回顧では、ムーア騎手も血統や馬体の完成度、直線での反応を評価している。一方で、コーナーではまだ幼さが見られたという趣旨のコメントも残しており、2歳時点での完成度と成長余地の両方がうかがえる。
R.ムーア騎手の判断が勝利を後押しJRA公式のレース回顧で紹介されたムーア騎手のコメントには、位置取りについて「思い通りの位置。スムーズな競馬だった」という趣旨の発言がある。
サリオスはスタート後に好位を確保し、逃げ馬のペースに付き合いすぎることなく、前を見ながら追走できた。直線では仕掛けどころを逃さず、坂を上りながら後続との差を広げた。
騎手の判断、馬自身の能力、そして血統的な裏付け。これらがかみ合ったことが、2019年のサリオスの勝因だった。
【ラップタイム・レース展開】前半800m45秒4のハイペースをどう乗り切った?
朝日杯FS2019を分析するうえで重要なのが、各200mのラップタイムだ。数字を見ると、前半から非常に速いペースで進み、終盤まで大きく緩むことのない持続力勝負だったことが分かる。
朝日杯FS2019の全ラップタイム- 200m:12.2秒
- 400m:10.5秒
- 600m:11.1秒
- 800m:11.6秒
- 1000m:11.8秒
- 1200m:11.8秒
- 1400m:11.6秒
- 1600m:12.4秒
ハロンタイム:12.2-10.5-11.1-11.6-11.8-11.8-11.6-12.4
前半800mは45秒4、前半1000mは57秒2。2歳GⅠとしては厳しい流れとなった。
後半800mは47秒6、上がり3ハロンは35秒8。最後の200mは12秒4まで時計がかかっており、直線では各馬のスタミナと持続力が試された。
ビアンフェの逃げがレース全体を速くしたレースを引っ張ったのは5番人気のビアンフェだった。スタートから積極的に先頭へ立ち、メイショウチタンを従えて逃げる形を作った。
サリオスはその直後の3番手を確保。前半800m45秒4という速い流れでも、無理に先頭へ並びかけず、好位でリズムを維持した。
一方、タイセイビジョンは序盤12番手付近、グランレイは15番手で追走。前方の馬たちが消耗する展開を見越したかのように、後方で脚を温存する形になった。
この展開の違いが、上位3頭の脚質の対比につながった。サリオスは先行して押し切り、タイセイビジョンは中団後方から伸び、グランレイは最後方に近い位置から強襲した。
阪神競馬場の芝1600m外回りが求める能力2019年の舞台となった阪神芝1600mは右回りの外回りコース。向正面の中ほどからスタートし、ゆったりとした3、4コーナーを経て、長い直線に向かう構造になっている。
JRAのコース紹介によると、外回りコースの直線距離は473.6m。ゴール前には高低差1.8mの急坂も設けられている。
そのため、単純な瞬発力だけでなく、長い直線で脚を持続させる能力と、最後の坂を乗り越えるパワーが求められる。
サリオスは好位から長く脚を使い、最後の坂でも後続を引き離した。阪神外回りの特徴に合った、非常に完成度の高い競馬だった。
【払戻金・配当一覧】3連単9万260円!グランレイの激走が生んだ高配当
朝日杯FS2019は1番人気サリオス、2番人気タイセイビジョンが1、2着を占めたため、馬連などの組み合わせは比較的堅い結果となった。
しかし、3着に14番人気グランレイが入ったことで、3連系の馬券では大きな配当が発生した。
朝日杯FS2019の払戻金一覧- 単勝:6番 200円(1番人気)
- 複勝:6番 120円(1番人気)
- 複勝:8番 190円(4番人気)
- 複勝:9番 2,360円(14番人気)
- 枠連:3-4 530円(1番人気)
- 馬連:6-8 660円(2番人気)
- ワイド:6-8 310円(2番人気)
- ワイド:6-9 6,240円(39番人気)
- ワイド:8-9 13,830円(63番人気)
- 馬単:6-8 950円(2番人気)
- 3連複:6-8-9 38,080円(78番人気)
- 3連単:6-8-9 90,260円(232番人気)
※払戻金は100円あたりの金額。
馬連660円と3連単90,260円の大きな違い今回の馬連は6-8で660円。1番人気サリオスと2番人気タイセイビジョンの組み合わせだったため、比較的低い配当となった。
一方、3連単は6-8-9で90,260円。3着に入ったグランレイの単勝オッズは229.3倍で、14番人気という評価だった。
つまり、1着と2着を順当に当てても、3着の伏兵を見抜けるかどうかで払戻金が大きく変わったレースだった。
特に注目したいのは、グランレイ絡みのワイドだ。タイセイビジョンとの組み合わせは13,830円、サリオスとの組み合わせは6,240円。上位人気馬同士の馬連とは対照的な高配当になった。
3連複も38,080円となっており、人気馬2頭に伏兵1頭が加わった典型的な高配当パターンだった。
【レースレコードのその後】2019年の1分33秒0は現在も破られていない?
サリオスが記録した1分33秒0は、2019年当時の朝日杯フューチュリティステークスのレースレコードだった。
それまでの記録は、2017年にダノンプレミアムがマークした1分33秒3。サリオスはこれを0.3秒更新し、2歳マイル王決定戦で強烈な印象を残した。
翌2020年にグレナディアガーズが記録を更新ただし、2026年現在の記録と2019年当時の記録は区別する必要がある。
翌2020年12月20日の第72回朝日杯フューチュリティステークスでは、川田将雅騎手が騎乗したグレナディアガーズが1分32秒3で優勝。サリオスの記録を0.7秒更新した。
つまり、サリオスの1分33秒0は2019年の歴史的なレースレコードではあるものの、現在のレコードではない。2020年のグレナディアガーズによって更新された記録である。
サリオスの記録が評価される理由注目すべきなのは、サリオスが速い馬場だけに助けられて記録を出したわけではないことだ。
前半800m45秒4という速いペースに対応し、3番手で流れに乗りながら、最後の直線でしっかり加速した。さらに阪神の急坂を越えて2馬身半差をつけた点に価値がある。
また、勝ち馬の上がり3ハロンは35秒4。グランレイの34秒9より速くはない。それでもサリオスが勝ったのは、後方からの追い込みに頼らず、前方で余力を残してレースを進められたためだ。
レースの勝敗は上がり3ハロンの数字だけでは決まらない。位置取り、ペースへの対応、仕掛けるタイミング、最後まで脚を維持する能力を総合して評価する必要がある。2019年のサリオスは、その好例となった。
【朝日杯フューチュリティステークス2019】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:朝日杯フューチュリティステークス2019の優勝馬と騎手は誰?
A1:優勝馬はサリオス。騎手はR.ムーアで、勝ちタイムは1分33秒0だった。これがサリオスにとってデビューから3連勝となるGⅠ初制覇だった。
Q2:朝日杯FS2019で2着・3着に入った馬は?
A2:2着は武豊騎手が騎乗した2番人気タイセイビジョン。3着は池添謙一騎手が騎乗した14番人気グランレイだった。
Q3:朝日杯FS2019の3連単はいくらだった?
A3:3連単6-8-9の払戻金は90,260円。14番人気グランレイが3着に入ったことで、232番人気の組み合わせとなった。
Q4:サリオスの朝日杯FS2019の勝ちタイムはレコードだった?
A4:はい。1分33秒0は当時の朝日杯フューチュリティステークスのレースレコードだった。ただし、2020年にグレナディアガーズが1分32秒3を記録し、更新している。
Q5:サリオスの父と母は?
A5:父はハーツクライ、母はサロミナ、母の父はLomitas。母サロミナはドイツオークスの勝ち馬で、血統面でも注目されていた。
Q6:グランレイは何番人気で3着に入った?
A6:14番人気で、単勝オッズは229.3倍だった。上がり3ハロン34秒9の末脚で後方から追い込み、タガノビューティーをかわして3着を確保した。
2019年12月15日に開催された第71回朝日杯フューチュリティステークスは、サリオスがR.ムーア騎手とのコンビで圧巻の勝利を飾った一戦だった。
1分33秒0の当時のレースレコード、2馬身半差の完勝、そしてデビューから無傷の3連勝。父ハーツクライ、母サロミナという血統背景も含め、サリオスの能力の高さを強く印象づけた。
2着タイセイビジョンは武豊騎手の手綱で安定した末脚を発揮。3着グランレイは14番人気という低評価を覆し、上がり3ハロン34秒9の鋭い末脚で波乱を演出した。
馬券面では馬連660円に対して3連単90,260円という大きな差が生まれ、人気馬の信頼度と伏兵の激走が同時に表れた結果となった。
2026年にこのレースを振り返る際の要点は、2019年のレースレコードと現在の記録を混同しないこと、そしてサリオスの勝利を単純な時計の速さだけで評価しないことだ。
速い流れを好位で受け止め、最後まで脚を持続させたサリオス。後方から鋭く追い込んだグランレイ。異なる競馬で結果を残した3頭の走りこそ、朝日杯フューチュリティステークス2019を印象深いGⅠとして記憶させる理由である。
主な照合資料: JRA公式2019年レース成績・払戻金、JRA-VAN公式レース回顧、JRA公式競走馬情報、JRA公式2020年レース成績。これらの記録に基づき、着順・オッズ・ラップ・血統・レコード更新を整理しています。