「在日犯罪」という言葉を正確に理解するには、まず「在日」と「外国人犯罪」を分けて考える必要がある。
一般に「在日」は、日本に居住する外国人や、歴史的経緯から日本で生活してきた人々を指す文脈で使われる。しかし、警察庁の犯罪統計には「在日」という属性だけで分類した独立項目はない。
公的資料で中心となるのは、次のような区分だ。
1. 来日外国人犯罪警察庁の「来日外国人犯罪情勢」では、来日外国人を独自に定義している。
具体的には、日本にいる外国人のうち、次の対象を除いた人々が該当する。
- 永住者
- 永住者の配偶者等
- 特別永住者
- 在日米軍関係者
- 在留資格不明者
つまり、留学生、技能実習生、特定技能の在留者、短期滞在者などが主な対象となる。
ここで注意したいのは、来日外国人犯罪の数字は、日本に住む外国人全体の犯罪統計ではないという点だ。
2. 外国人犯罪外国人犯罪という表現は、来日外国人犯罪より広い意味で使われる。
日本国籍を持たない人による犯罪を論じる際に使用されるが、資料によって対象となる在留資格、犯罪類型、集計期間が異なる。
そのため、犯罪白書の「外国人」と警察庁の「来日外国人」を同じ集計対象として扱うことはできない。
3. 在日韓国・朝鮮人という呼称と国籍の違い「在日韓国・朝鮮人」という表現には、国籍だけでは整理できない歴史的・社会的背景がある。
例えば、韓国籍の人、朝鮮籍の人、日本国籍を取得した人では、法律上の扱いも統計上の分類も異なる。
日本国籍を取得した人は、民族的・家族的なルーツにかかわらず、外国人犯罪統計の外国籍対象には含まれない。
一方、外国籍を保持する人は、在留資格や統計の集計条件によって異なる区分に入る。
したがって、民族的なルーツと警察統計上の国籍区分を混同してはいけない。
【2026年最新データ】令和7年の外国人犯罪はどこまで増えたのか

2026年11月現在、年間を通じた最新の確定データは令和7年(2025年)の統計である。2026年の年間犯罪統計は、まだ1年分が確定していない。
警察庁が公表した「令和7年における組織犯罪の情勢」では、来日外国人犯罪の検挙件数と検挙人員について、次の結果が示されている。
1. 2025年の検挙件数・検挙人員
令和7年・来日外国人犯罪の総検挙件数25,480件
総検挙人員
12,777人
前年比5.0%増
刑法犯検挙件数
17,614件
前年比31.4%増
特別法犯検挙件数
7,866件
前年比6.2%減
刑法犯検挙人員
7,333人
前年比15.2%増
出典:警察庁「令和7年における組織犯罪の情勢」。
注目すべきなのは、検挙件数の増加がすべての犯罪類型で一様に起きたわけではないことだ。
刑法犯は前年比31.4%増加した一方、特別法犯は6.2%減少している。
特別法犯には、入管法違反や薬物関連法令違反などが含まれる。日本人にも適用される一般的な犯罪と、外国人の在留・入国に関係する法令違反を一括して比較することには限界がある。
2. どの犯罪が増加したのか2025年の刑法犯では、窃盗犯の増加が特に目立った。
| 犯罪分類 | 2025年の検挙件数 | 前年比 |
|---|---|---|
| 窃盗犯 | 12,226件 | 34.3%増 |
| 知能犯 | 1,368件 | 77.9%増 |
| 粗暴犯 | 1,566件 | 16.9%増 |
| 凶悪犯 | 295件 | 13.5%増 |
窃盗犯は刑法犯全体の大きな割合を占めており、前年比でも3割以上増加した。
また、知能犯も77.9%増となっている。知能犯には詐欺や横領、偽造などが含まれる。
一方、凶悪犯は295件であり、窃盗犯の12,226件とは規模が大きく異なる。増加率だけを並べると、実際の件数規模が見えにくくなる。
なお、2026年4月24日の衆議院法務委員会でも、警察庁側が2025年の来日外国人犯罪について説明している。特別法犯全体は減少したものの、薬物事犯の検挙件数は前年比20.8%増加したとの答弁があった。
したがって、2025年の特徴は、刑法犯の増加、とりわけ窃盗犯・知能犯の増加と、特別法犯全体の減少が同時に起きたことにある。
3. 2026年の在留外国人数は428万人を突破犯罪統計と併せて確認したいのが、出入国在留管理庁の在留外国人数である。
2026年10月16日に公表された令和8年6月末現在の統計によると、在留外国人数は次のようになっている。
2026年6月末現在・在留外国人数4,281,026人
中長期在留者
4,017,321人
特別永住者
263,705人
前年末からの増加
155,631人
出典:出入国在留管理庁、2026年10月16日公表資料。
国籍・地域別では、中国が941,031人、ベトナムが693,750人、韓国が408,682人となっている。
ここで重要なのは、在留外国人数の増加と犯罪検挙件数の増加は、それぞれ別の統計上の動きだということだ。
人口が増えれば、社会活動や人の移動が増え、犯罪に接する機会も変わり得る。しかし、人口増加だけを根拠に犯罪率が上昇したと判断することはできない。
また、2025年の犯罪統計と2026年6月末の在留外国人数をそのまま割り算して、2025年の犯罪率を算出することも適切ではない。集計期間と対象者の定義が一致していないためだ。
【国籍・在留資格を比較】韓国・朝鮮人と特別永住者の統計上の扱い
「在日韓国・朝鮮人の犯罪統計」を調べる際に、最も混乱しやすいのが国籍と在留資格の関係である。
警察庁の2025年資料では、来日外国人の国籍等別の検挙状況と、在留資格「永住者」の検挙状況が別々に掲載されている。
両者を混ぜずに整理すると、統計の意味が明確になる。
国籍・在留資格・検挙統計の関係警察庁の2025年の来日外国人犯罪統計では、韓国籍の総検挙件数は404件だった。
内訳は次のとおり。
- 刑法犯:315件
- 特別法犯:89件
- 総検挙人員:357人
総検挙件数に占める韓国籍の割合は1.6%、総検挙人員に占める割合は2.8%である。
ただし、この404件は日本に住む韓国籍の人全員による犯罪を表す数字ではない。
永住者や特別永住者など、警察庁の「来日外国人」の定義から除外される人々は、この集計に含まれない。
2. 在留資格「永住者」の韓国籍データ警察庁は、来日外国人とは別に、在留資格「永住者」の検挙状況も公表している。
2025年の永住者全体では、総検挙件数が4,094件、総検挙人員が3,175人だった。
このうち韓国籍は、検挙件数467件、検挙人員367人である。
ここで注意すべきなのは、永住者と特別永住者は同じ制度ではないという点だ。
この467件を特別永住者の検挙数として紹介するのは、統計の読み違いになる。
3. 特別永住者とはどのような人なのか特別永住者は、一般的な在留資格の「永住者」とは異なり、特別永住者制度に基づく法的地位を持つ人々である。
制度の背景には、第二次世界大戦後の日本の国籍・出入国管理制度の変更と、歴史的経緯によって日本に居住することになった人々の存在がある。
出入国在留管理庁によれば、特別永住者は日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した人々などに関係する特例法上の地位である。
一方、一般の永住者は、出入国管理及び難民認定法に基づいて法務大臣から永住許可を受けた外国人を指す。
両者は、在留管理の根拠法も異なる。
4. 韓国・朝鮮という統計表記にも注意警察庁の資料では、集計内容によって国籍・地域の表記が異なる場合がある。
例えば、2025年の薬物事犯に関する外国人検挙人員の資料では「韓国・朝鮮」というまとめ方が用いられ、119人とされている。
これは薬物事犯という特定分野における外国人の集計であり、来日外国人全体の韓国籍検挙人員357人とは別の統計である。
また、この119人を特別永住者だけの数字と解釈することもできない。
国籍・地域の分類、在留資格、犯罪類型の3つを確認しなければ、数字の正確な意味は分からない。
【犯罪率と人口比を検証】外国人と日本人は単純比較できるのか
インターネット上で特に議論になりやすいのが、「外国人の犯罪率は日本人より高いのか」という疑問だ。
この問題については、2025年11月20日の参議院内閣委員会で、政府側が具体的な人口比の試算を説明している。
1. 国会で示された1.72倍という試算2024年の数字を使った政府答弁では、次の計算が示された。
| 区分 | 検挙人員 | 人口・在留者数 | 単純計算 |
|---|---|---|---|
| 日本人 | 226,038人 | 120,155,000人 | 0.188% |
| 外国人(短期滞在を除く) | 12,173人 | 3,768,977人 | 0.323% |
この計算では、外国人の比率は日本人の約1.72倍となる。
ただし、これは2024年の検挙人員と人口を使った便宜的な計算であり、年齢や滞在期間などを調整した犯罪発生率ではない。
政府側も、外国人と日本人では滞在目的・期間や年齢構成が異なるため、正確に比較できる統計を特定することは困難だと説明している。
2. なぜ人口比だけでは不十分なのか犯罪率を比較する場合、単に検挙人員を人口で割れば正しい結論が出るわけではない。
少なくとも、次の条件を揃える必要がある。
① 年齢構成の違い
日本人と外国人では年齢構成が異なる。犯罪統計を比較するなら、年齢階層ごとの人口比を考慮する必要がある。
② 滞在期間の違い
外国人には、長期間生活する人もいれば、数日から数週間だけ滞在する人もいる。
年間を通じて日本で生活する人と、短期滞在者を同じ人口として扱うと、実際の活動期間を反映できない。
③ 犯罪類型の違い
刑法犯と特別法犯を一緒にすると、入管法違反など外国人の在留資格に関係する犯罪も含まれる。
日本人と同じ条件で比較するなら、共通して適用される法律や犯罪類型に限定する必要がある。
④ 検挙人員と有罪判決の違い
検挙された人は、裁判で有罪が確定した人と同じではない。
検挙統計は警察活動の結果を示す資料であり、確定した犯罪者の人数をそのまま示すものではない。
3. 検挙件数・検挙人員・認知件数の違い統計を読むときは、次の3つを区別したい。
- 認知件数: 警察が犯罪の発生を認知した件数。
- 検挙件数: 警察が事件を検挙した件数。
- 検挙人員: 事件について検挙された人員。
例えば、1件の事件で複数人が検挙される場合もある。
逆に、1人が複数の事件に関係して検挙されることもある。
したがって、検挙件数と検挙人員を同じ数字として扱うことはできない。
また、検挙件数が増えたからといって、実際に発生した犯罪全体が同じ割合で増えたと断定することもできない。捜査体制や摘発活動の変化も影響するためだ。
【ネット上の誤解を検証】在日犯罪の数字から言えること・言えないこと
「外国人犯罪が増えている」「特定の国籍の犯罪が多い」といった情報は、SNSやニュースの見出しで目にすることがある。
こうした情報を評価するには、数字の出典だけでなく、集計対象と比較条件を見る必要がある。
誤解1:来日外国人犯罪の増加は、在日外国人全体の犯罪増加を意味するこれは正確ではない。
2025年の来日外国人犯罪は増加したが、統計上の対象は永住者や特別永住者などを除いた区分である。
在日外国人全体の犯罪状況を把握するには、別の在留資格区分や外国人全体の統計も確認する必要がある。
誤解2:国籍別の検挙件数が多ければ、その国籍の犯罪率も高いこれも必ずしも成立しない。
国籍別の検挙件数は、その国籍の対象人口、滞在期間、在留資格、年齢構成などによって変わる。
例えば、ある国籍の検挙件数が別の国籍より多かったとしても、それだけで個人が犯罪に関与する確率まで高いとは判断できない。
誤解3:特別永住者の犯罪統計は来日外国人犯罪の数字に含まれている警察庁の定義では、特別永住者は来日外国人から除外されている。
一般の永住者については別途集計されているが、それを特別永住者の数字と取り違えることも誤りである。
誤解4:外国人犯罪はすべて凶悪事件である2025年の来日外国人犯罪の刑法犯検挙件数では、窃盗犯が12,226件と大きな割合を占めている。
凶悪犯は295件だった。
犯罪の種類を無視して「外国人犯罪」という一つの言葉だけで論じると、実際の事件構成が見えなくなる。
2025年の犯罪白書と2026年の警察統計はどう使い分ける?法務省の「令和7年版犯罪白書」も重要な資料だ。
ただし、同白書の外国人による刑法犯の分析は、主として2024年までのデータを扱っている。
2024年の外国人による刑法犯検挙件数は18,861件、検挙人員は10,464人だった。検挙人員全体に占める外国人の割合は5.5%とされている。
一方、2025年の警察庁資料で示される17,614件、7,333人は「来日外国人」に限定した刑法犯の数字である。
対象範囲が異なるため、18,861件と17,614件をそのまま並べて増減を判断してはいけない。
統計資料を調べる際は、次の判断基準が役立つ。
- 数字の公表元が警察庁・法務省・出入国在留管理庁などの公的機関か。
- 集計対象が外国人全体なのか、来日外国人なのか。
- 検挙件数なのか、検挙人員なのか、認知件数なのか。
- 比較する人口の基準日が統計期間と一致しているか。
- 国籍と在留資格を混同していないか。
- 刑法犯と特別法犯を分けているか。
これらを確認するだけでも、統計の誤読を大幅に減らせる。
【在日犯罪に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:在日犯罪という正式な犯罪統計は存在する?
A1:警察庁に「在日犯罪」という独立した統計区分はない。来日外国人、外国人全体、永住者など、定義の異なる統計を使って把握する必要がある。
Q2:2026年最新の外国人犯罪統計は何年のデータ?
A2:2026年11月時点で、年間を通じた最新の確定犯罪統計は2025年(令和7年)のデータである。警察庁の2025年確定値は2026年8月27日に更新されている。
Q3:2025年の来日外国人犯罪の検挙件数はいくつ?
A3:25,480件で、前年比16.9%増だった。内訳は刑法犯17,614件、特別法犯7,866件。検挙人員は12,777人である。
Q4:在日韓国・朝鮮人の犯罪件数は分かる?
A4:警察庁は国籍・地域別の検挙状況を公表しているが、来日外国人の韓国籍と、永住者の韓国籍は別集計である。また、犯罪類型によっては「韓国・朝鮮」という統合表記も使われる。民族的ルーツだけで分類した包括的な犯罪統計とは異なる。
Q5:特別永住者は来日外国人犯罪に含まれる?
A5:含まれない。警察庁の定義で特別永住者は来日外国人から除外されている。一般の永住者とも別の制度である。
Q6:外国人の犯罪率は日本人より高い?
A6:単純な人口比による試算は存在するが、滞在期間、年齢構成、犯罪類型などの違いがあるため、その数値だけで正確な犯罪率の高低を判断することはできない。
【プロの結論】在日犯罪の実態を見極めるには統計の定義がすべて
2026年11月現在、警察庁が公表している2025年の確定統計では、来日外国人犯罪の総検挙件数は25,480件に達し、3年連続で増加した。
特に刑法犯の増加が目立ち、窃盗犯や知能犯などで大きな伸びが確認されている。一方、特別法犯全体は減少しており、犯罪類型によって動向は異なる。
また、2026年6月末の在留外国人数は428万1,026人と過去最高を更新した。日本で生活する外国人の人口構成が変化するなかで、犯罪統計の継続的な分析は治安対策を考えるうえで欠かせない。
ただし、統計を正しく読むためには、次の3点が特に重要だ。
1. 対象者を確認すること。 来日外国人、永住者、特別永住者、外国人全体は同じ集計対象ではない。
2. 数字の種類を確認すること。 検挙件数、検挙人員、認知件数、人口比は、それぞれ異なる意味を持つ。
3. 国籍と個人を切り離して考えること。 特定の国籍の検挙件数は、その国籍に属する人々全体の性質や犯罪傾向を示すものではない。
犯罪対策に必要なのは、国籍による一律の判断ではなく、実際の犯罪類型、組織的な関与、発生地域、被害状況などに基づく具体的な分析である。
「在日犯罪」という曖昧な言葉だけでは、日本の犯罪情勢の全体像は見えてこない。公的統計の定義を理解し、同じ条件の数字を比較すること。それが、2026年の日本の治安を冷静に考えるための出発点となる。
主な参考資料
- 警察庁「令和7年における組織犯罪の情勢」
- 警察庁「令和7年の犯罪情勢」
- 警察庁「令和8年警察白書・統計資料」
- 法務省「令和7年版犯罪白書」
- 出入国在留管理庁「令和8年6月末現在における在留外国人数について」
- 出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」
- 第219回国会参議院内閣委員会会議録(2025年11月20日)
- 第221回国会衆議院法務委員会会議録(2026年4月24日)