2026年の第76回安田記念は、6月7日に東京競馬場の芝1600メートルで開催された。レース前の追い切りでは、ガイアフォース、パンジャタワー、レーベンスティール、ステレンボッシュ、トロヴァトーレなど実力馬の仕上がりに注目が集まった。JRA公式の調教動画や各馬の最終追い切り時計を振り返ると、単純な時計の速さだけでは判断できない調整過程の違いが浮かび上がる。
2026年11月現在、レースはすでに終了している。実際の結果と照らし合わせると、事前の調教評価が好走につながった馬だけでなく、時計以上のパフォーマンスを発揮した馬も確認できる。ここでは美浦ウッド、栗東CW、栗東坂路の調教内容を比較し、1週前追い切りから最終追い切りまでの変化、全17頭の調教診断、実戦との関連を整理する。
【2026年安田記念】追い切りを振り返る前に押さえたい開催情報と結果

2026年の安田記念は、6月7日(日曜)、東京競馬場の芝1600メートルで行われた第76回のGⅠ競走だ。
春のマイル王決定戦には17頭が出走。前年の安田記念やマイルチャンピオンシップで好走した実績馬に加え、世代を代表するマイラーや異なる距離適性を持つ馬も顔をそろえた。
JRA公式成績によると、優勝したのはシックスペンス。2着にはワールズエンドとガイアフォースが同着で入った。勝ち時計は1分32秒1だった。
2026年安田記念・上位5頭
| 着順 | 馬名 | 走破タイム |
|---|---|---|
| 1着 | シックスペンス | 1分32秒1 |
| 2着同着 | ワールズエンド | 1分32秒1 |
| 2着同着 | ガイアフォース | 1分32秒1 |
| 4着 | セイウンハーデス | 1分32秒1 |
| 5着 | パンジャタワー | 1分32秒2 |
特に注目したいのは、事前の調教段階で高い評価を受けていたガイアフォースとパンジャタワーが、それぞれ2着同着、5着と上位に入ったことだ。
一方、上位人気だったレーベンスティールやトロヴァトーレ、ステレンボッシュは期待された着順には届かなかった。
この結果は、追い切り評価が単なる勝ち馬予想ではないことを示している。調教で確認できるのは、あくまでレースに向けた身体の状態や動き、負荷への反応だ。実際の着順には展開、位置取り、馬場適性なども関係する。
【JRA公式調教動画】最終追い切りで注目したい5頭の動き
2026年の安田記念では、JRA公式サイトに出走馬の調教動画が公開された。
公式動画は全17頭を対象としており、個別映像のほか全頭版も用意されていた。公式YouTubeチャンネルの動画は6月5日に公開され、馬ごとの映像開始時間も案内されている。
映像を見る際に注目したいのは、単純なスピードではない。
- 走行中の首や背中の使い方
- 前脚と後肢の連動性
- 直線に向いた際の加速反応
- 騎手や調教助手の手応え
- 併せ馬で相手に対してどのような動きを見せたか
特に今回の注目馬については、次の時間帯が確認ポイントとなる。
ガイアフォース
公式動画 8分21秒~
1週前の坂路で高い負荷をかけた後、最終追い切りは無理をさせず調整。負荷の配分がポイント。
パンジャタワー
公式動画 9分38秒~
栗東CWでの併せ馬と、最終追い切りでの馬なりの反応を確認したい一頭。
レーベンスティール
公式動画 11秒~
1週前の鋭い終いと、最終追い切りでの時計の変化を比較したい。
ステレンボッシュ
公式動画 3分17秒~
美浦ウッドでの馬なり調整。動きの滑らかさと終いの反応が評価材料。
トロヴァトーレ
公式動画 10分17秒~
併せ馬での追走と、直線での加速力に注目したい。
JRA公式の動画は、時計だけでは分からない馬のフォームや走行中の雰囲気を把握するための重要な資料だ。
なお、JRA公式サイトの調教動画ページでは、調教タイムについて自動計測を除き競馬ブック提供のデータであることも案内されている。映像と時計は、それぞれ異なる情報として組み合わせて見るのが適切だ。
【美浦ウッド・栗東CW・栗東坂路】追い切り時計の比較で分かる仕上がりの違い
安田記念の調教診断で欠かせないのが、追い切りを行ったコースの違いだ。
2026年の出走馬には、美浦ウッド、栗東CW、栗東坂路を使って最終調整した馬がいた。
ただし、異なるコースの時計をそのまま比較して、最速の馬が最も好調と判断するのは適切ではない。
美浦ウッド追い切りの特徴美浦ウッドは、長めの距離を走らせながら持続力やフォームを確認しやすい調教コースだ。
今回の安田記念では、レーベンスティール、ステレンボッシュ、トロヴァトーレ、シックスペンスなどが美浦ウッドで最終調整を行った。
特に注目したいのは、1週前から最終追い切りまでのラップの変化だ。
レーベンスティールは1週前に6F81.3秒、ラスト1F10.9秒を記録。最終追い切りでは6F80.3秒、ラスト1F11.9秒となった。
終いの時計だけを見ると減速しているが、最終追い切りの目的は必ずしも自己ベストを更新することではない。負荷を調整しながらレース当日に向けて状態を整える過程も評価すべきだ。
栗東CW追い切りの特徴栗東CWは、長めの距離を使った調整や併せ馬による反応確認に適したコースだ。
パンジャタワーは1週前に6F80.5秒、ラスト1F11.2秒を記録。セイウンハーデスを追走してクビ先着した。
最終追い切りも栗東CWを使用し、6F82.8秒、ラスト1F11.2秒。馬なりで安定した内容だった。
1週前にしっかり負荷をかけ、最終追い切りで動きを維持するという調整の流れは、今回の同馬を評価するうえで要点だった。
栗東坂路の調教時計坂路は800メートルの時計を中心に、全体の負荷と終いの反応を見る。
ガイアフォースの1週前追い切りは800メートル50.3秒。ラスト1Fは11.8秒だった。
一方、最終追い切りは54.9秒、ラスト1F13.2秒。数字だけなら大きく時計を落としているように見える。
しかし、1週前に十分な負荷をかけており、最終追い切りでは無理をさせない方針だった。さらに最終追い切り時の馬場は不良。調教師も時計を出すことを目的とせず、流す調整だったと説明している。
このようなケースでは、最終時計の遅さをそのまま状態低下と判断してはいけない。
| 調教コース | 主な確認ポイント | 2026年の注目馬 |
|---|---|---|
| 美浦ウッド | 長めの負荷、終いの伸び、フォーム | レーベンスティール、シックスペンス |
| 栗東CW | 併せ馬の反応、持続力、負荷への対応 | パンジャタワー |
| 栗東坂路 | 全体時計、加速力、終いの反応 | ガイアフォース、セイウンハーデス |
重要なのは、同じ距離、同じ馬場状態、同じ調教強度で比較できるかどうかだ。コースが異なる場合は、時計だけで優劣を決めず、追い切りの目的まで確認したい。
【安田記念2026全頭調教診断】最終追い切り時計と評価を一覧比較
ここからは、2026年安田記念に出走した全17頭の最終追い切りを整理する。
時計は2026年6月6日公開の追い切り記録に掲載された数値を基にしている。評価は追い切りの負荷、馬場状態、1週前との比較、併せ馬の内容を踏まえた編集上の診断であり、公式発表の格付けではない。
※Wは美浦ウッド、CWは栗東CW。坂路は800mの時計。W・CWの時計は馬によって4F、5F、6Fの計測区間が異なるため、単純な横並び比較には注意が必要。
この全頭診断から分かるのは、好時計を出した馬だけが好走したわけではないということだ。
シックスペンスは1週前から最終追い切りまで安定した調整を続け、最終追い切りでも6F83.2秒、ラスト1F11.2秒を記録。その後、実戦で勝利を収めた。
一方、ガイアフォースは最終追い切りこそ控えめだったが、1週前の内容が充実しており、結果も2着同着だった。
調教時計の意味を考えるうえで、非常に参考になる2頭だった。
【注目馬5頭の追い切り評価】ガイアフォース・パンジャタワーらの仕上がり
ここでは検索需要の高い5頭について、1週前追い切りと最終追い切りを詳しく比較する。
1. ガイアフォース|1週前の坂路50.3秒が際立つ
ガイアフォース
結果:2着同着
50.3秒
1週前・栗東坂路800m
ガイアフォースの追い切りで最も注目されたのは、1週前の栗東坂路で記録した800メートル50.3秒という時計だ。
ラップは50.3-36.4-23.7-11.8。プラヤデルカルメンを追走し、0.2秒先着する内容だった。
杉山晴紀調教師は、1週前の時計と動きに満足している旨を説明し、年齢的な衰えも感じていないと評価していた。
最終追い切りは800メートル54.9秒、ラスト1F13.2秒。数字だけなら1週前より大きく落ちているが、これは予定どおり負荷を抑えた調整だった。
実戦では上がり3F33.0秒を記録して2着同着。調教段階で確認された状態の良さを、レースでも示した。
2. パンジャタワー|栗東CWで安定した終い11.2秒
パンジャタワー
結果:5着
11.2秒
1週前・最終ともにラスト1F
パンジャタワーは、1週前の栗東CWで6F80.5秒、ラスト1F11.2秒を記録した。
セイウンハーデスを0.7秒追走し、クビ先着。松山弘平騎手が騎乗し、しっかり負荷をかける内容だった。
最終追い切りも同じ栗東CWを選択。6F82.8秒、ラスト1F11.2秒を馬なりでまとめた。
橋口慎介調教師は、前走では検疫の関係で調整期間が限られた一方、今回は十分な時間をかけられたことを評価。リラックスした状態で調整できている点にも言及していた。
気になるのは距離適性だ。調教師は、NHKマイルカップを勝った実績がある一方、当時よりスプリンター寄りになっているとの見方を示していた。
調教の仕上がり自体は良好で、実際のレースでも5着。上位争いに加わった。
3. レーベンスティール|1週前の鋭い伸びと最終時計の変化
レーベンスティール
結果:7着
10.9秒
1週前・ラスト1F
レーベンスティールは、美浦ウッドで1週前に6F81.3秒、ラスト1F10.9秒を記録した。
シックスペンスを0.9秒追走して同入。終いの鋭さは今回の出走馬の中でも目を引く内容だった。
最終追い切りは6F80.3秒、ラスト1F11.9秒。馬なりでの調整となった。
田中博康調教師は、前走からのダメージが比較的少ないことや、東京マイルへの対応を意識した調整を進めてきたことを説明していた。
また、馬に落ち着きが出て、我慢するところと頑張るところの理解が進んできたという見方も示していた。
調教時計だけなら高く評価できる部分が多かったが、実戦では7着。追い切りの動きと、マイルGⅠで結果を出すための競走内容は別の観点から見る必要があることを示した。
4. ステレンボッシュ|美浦ウッドで馬なりの好内容
ステレンボッシュ
結果:10着
65.2秒
最終・美浦ウッド5F
ステレンボッシュは1週前に美浦ウッドで5F66.2秒、ラスト1F11.1秒。最終追い切りでは5F65.2秒、ラスト1F11.3秒だった。
いずれも馬なりで、最終追い切りでは全体時計を詰めながら、無理に終いを伸ばす内容にはしていない。
宮田敬介調教師は、最終追い切りで引き続き良い動きが見られたことを評価していた。
一方で、マイルは若干短いという距離適性への見方も示されていた。
調教内容そのものは順調だったが、実戦では10着。状態の良さが、そのまま距離適性やレース展開の問題を解決するわけではないことが分かる。
5. トロヴァトーレ|最終追い切りは追走先着がポイント
トロヴァトーレ
結果:9着
11.3秒
最終・美浦ウッドのラスト1F
トロヴァトーレは1週前に美浦ウッドで6F83.3秒、ラスト1F11.2秒。最終追い切りでは6F85.4秒、ラスト1F11.3秒だった。
最終追い切りではイゾラフェリーチェを0.8秒追走し、0.1秒先着している。
時計全体は速くなかったものの、併せ馬での反応が評価材料となった。
鹿戸雄一調教師は、以前は稽古でよく動く馬と一緒に走ると最後に苦しくなる面があったが、今回は追走して最後まで動けた点を評価していた。また、筋肉量が増えてきたことや、以前より折り合いが改善していることにも触れていた。
ただし、実戦では9着。調教での動きの良さを、実際のレースでの位置取りや末脚につなげることはできなかった。
【追い切り評価の落とし穴】時計だけでは見抜けない仕上がりの判断基準
安田記念の調教を振り返ると、競馬ファンが陥りやすい誤解がいくつか見えてくる。
誤解1:最終追い切りの時計が速いほど好調これは必ずしも正しくない。
ガイアフォースは1週前に坂路で50.3秒を記録し、最終追い切りでは54.9秒まで時計を落とした。それでも実戦では2着同着だった。
最終追い切りで重要なのは、どれだけ速い時計を出したかではなく、1週前までに積み重ねた負荷を適切に調整できているかだ。
誤解2:ラスト1Fが最速の馬が最も強い終いの時計は重要な判断材料だが、全体時計とのバランスも見なければならない。
例えば、1週前に強く追われた馬と、最終追い切りで軽く調整した馬では、ラスト1Fの数字が持つ意味が異なる。
また、併せ馬で先着したかどうかも確認したい。相手の力量や追走距離によって、その評価は変わってくる。
誤解3:美浦ウッドと栗東CWは時計で直接比較できる同じ6Fの計測でも、馬場状態やコースの特徴、調教の目的が異なる。
加えて、坂路の800メートル時計とウッドの6F時計を並べて、速い遅いを判断することには意味がない。
比較するなら、同じコースでの過去の時計、同じ馬の1週前と最終追い切りの変化、併せ馬での反応を優先したい。
プロが重視したい5つのチェック項目| 評価項目 | 確認するポイント |
|---|---|
| 全体時計 | 過去の自己時計や調教メニューとの比較 |
| ラスト1F | 最後まで加速できているか |
| 馬なり・強め | どの程度の負荷で時計を出したか |
| 併せ馬 | 追走や先着、手応えの違い |
| 調整過程 | 1週前から最終までの負荷の変化 |
特に重視したいのは、最後の調整過程だ。
シックスペンスは最終追い切りだけでなく、1週前から継続的に負荷をかけていた。ガイアフォースは1週前にしっかり追い、最終追い切りで余力を残した。
両馬の調整方法は違うが、それぞれの馬に合わせた仕上げが実戦で結果につながった。
【安田記念の追い切り】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年安田記念で最も注目された追い切りはどの馬ですか?
A1:ガイアフォースとパンジャタワーが注目された。ガイアフォースは1週前の栗東坂路で800メートル50.3秒、パンジャタワーは栗東CWで6F80.5秒、ラスト1F11.2秒を記録した。
Q2:安田記念の最終追い切りはいつ確認できますか?
A2:2026年はJRA公式チャンネルが6月5日に調教動画を公開した。公式サイトの調教動画ページでは出走馬ごとの映像と全頭版が案内されている。
Q3:美浦ウッドと栗東CWではどちらの時計を重視すべきですか?
A3:一概に優劣はつけられない。調教コース、馬場状態、走行距離、追い方が違うため、時計の数字だけでなく、同じ馬の過去の調教や1週前からの変化を比較するのが適切だ。
Q4:最終追い切りで時計が遅くなった馬は評価を下げるべきですか?
A4:必ずしもそうではない。ガイアフォースのように1週前に十分な負荷をかけ、最終追い切りを軽くする調整もある。追い切りの目的と馬場状態を確認する必要がある。
Q5:2026年安田記念で追い切り評価と実際の結果が一致した馬は?
A5:ガイアフォースは1週前の好時計が評価され、2着同着。パンジャタワーも安定したCW調整から5着に入った。また、シックスペンスは最終追い切りで安定した動きを見せ、実際に優勝した。
2026年の安田記念は、追い切り時計と実際のレース結果を照らし合わせるうえで興味深い一戦となった。
ガイアフォースは1週前の栗東坂路50.3秒という好時計から、最終追い切りでは余裕を残した調整に切り替え、2着同着。パンジャタワーも栗東CWで安定した動きを見せ、5着に入った。
レーベンスティールやステレンボッシュ、トロヴァトーレについても、それぞれ異なる調整過程が確認できた。
そして優勝したシックスペンスは、1週前から最終追い切りまで継続的に状態を整えていた。
今回の調教分析から得られる教訓は明確だ。
追い切り評価で最も重要なのは、単独の好時計ではなく、1週前から最終追い切りまでの一貫した調整過程を読み解くこと。
JRA公式の調教動画でフォームや反応を確認し、美浦ウッド・栗東CW・栗東坂路の時計をコースごとに比較する。そのうえで馬場状態、追い方、併せ馬の内容を組み合わせれば、数字だけでは見えない仕上がりの違いを把握しやすくなる。
安田記念に限らず、今後のGⅠ予想でも、この視点は調教診断の精度を高めるための大切な判断材料になる。