稲川会の組織を調べる際、最初に区別したいのが「公的資料に掲載されている組織情報」と「内部の役職・人事に関する情報」だ。
警察庁が公表する組織犯罪情勢や、各都道府県警察の指定暴力団一覧表には、次のような基本情報が掲載されている。
- 団体の名称
- 代表する者
- 主たる事務所の所在地(本記事では具体的な住所を省略)
- 勢力範囲
- 構成員数
一方、個々の幹部の役職、傘下組織の全代表者、内部の指揮命令関係を網羅した完全な組織図は、一般向けの公式資料として確認できない。
公開情報から読み取れる組織の基本構造稲川会は、代表者の統制下に複数の階層を持つ組織として警察当局に把握されている。
ただし、法律上の階層的な組織という説明と、個々の人物を配置した詳細な組織図は別物だ。
特に注意したいのは、ネット上に掲載されている古い組織図である。過去の役職者や当時の所属関係が現在も継続しているとは限らない。
2025年には代表者の変更と組織内部の昇格人事が記録されており、以前の資料を2026年現在の組織図として扱うことには無理がある。
【代表者は内堀和雄】稲川会の歴代会長と組織の変遷

現在の代表者を理解するうえで重要なのが、2019年と2025年の二つの転換点だ。
内堀和雄が代表者となった経緯は、2019年に稲川会の六代目会長に就任した人物である。
当時の会長だった清田次郎は総裁に就任し、内堀が会長として組織を率いる体制に移行した。
その後、2025年5月、総裁だった清田次郎(辛炳圭)の死去を受け、東京都公安委員会は内堀和雄を稲川会の代表する者として公示した。
この変更は、警察庁の2025年版「組織犯罪の情勢」にも明記されている。
したがって、2026年の代表者を調べる際には、過去の会長交代報道だけでなく、2025年の公安委員会による公示を確認することが重要だ。
稲川会の歴史を年代別に整理稲川会の起源は、戦後間もない時期にさかのぼる。
警察庁の過去の警察白書によると、1949年ごろ、稲川角二が静岡県熱海市を拠点に稲川組を結成したことが起源とされる。
その後、名称の変更を経て、1972年に稲川会となった。
歴代会長の変遷と近年の代表者交代を整理すると、次のようになる。
| 時期 | 人物・組織 | 主な変遷 |
|---|---|---|
| 1949年ごろ | 稲川角二(稲川聖城) | 稲川組を結成 |
| 1972年 | 稲川会 | 現在の名称に変更 |
| 1985年 | 石井進 | 二代目会長に就任。稲川聖城は総裁に就任 |
| 1990年 | 稲川裕紘 | 三代目会長に就任 |
| 2006年 | 四代目体制 | 角田吉男による体制が発足 |
| 2010年 | 清田次郎 | 五代目会長に就任 |
| 2019年 | 内堀和雄 | 六代目会長に就任。清田次郎は総裁に就任 |
| 2025年5月 | 内堀和雄 | 清田次郎の死去を受け、公安委員会が代表者として公示 |
| 2025年10月 | 稲川会 | 昇格人事や二次組織の代表者に関する継承儀式を実施 |
この歴史から読み取れるのは、稲川会が長期間にわたり代表者の交代と組織体制の再編を繰り返してきたことだ。
特に2025年の変更は、単なる肩書の変更ではない。警察庁の資料には、代表者の変更に加えて、同年10月に昇格人事や二次組織の代表者に関する継承儀式が行われたことも記録されている。
なお、歴代会長の名称や就任時期を調べる際は、当時の報道と警察白書の記録を照合する必要がある。
【構成員数は約1,600人】2026年に確認できる最新統計
稲川会の現在の規模を知るうえで、最も重要なのが警察庁の統計である。
2026年4月に公表された警察庁の「令和7年における組織犯罪の情勢」は、2025年末時点の全国の暴力団情勢をまとめた最新の確定年次資料だ。
この資料によると、稲川会の人数は次のようになっている。
2025年末時点・警察庁公表値約1,600人
暴力団構成員
準構成員等
約1,000人
合計
約2,600人
警察庁「令和7年における組織犯罪の情勢」に基づく。合計は構成員と準構成員等の合算。
構成員数はどのように変化したのか
警察庁の長期統計を見ると、稲川会の構成員数は減少傾向にある。
| 年末 | 構成員数 |
|---|---|
| 2016年 | 約2,500人 |
| 2017年 | 約2,300人 |
| 2018年 | 約2,200人 |
| 2019年 | 約2,100人 |
| 2020年 | 約2,000人 |
| 2021年 | 約1,900人 |
| 2022年 | 約1,900人 |
| 2023年 | 約1,700人 |
| 2024年 | 約1,600人 |
| 2025年 | 約1,600人 |
2016年末と比較すると、2025年末の構成員数は約36%減少している。
注目すべきなのは、構成員と準構成員等を分けて把握する必要がある点だ。
「構成員約1,600人」という数字だけを見て、稲川会と関係する人物すべてが1,600人だと理解するのは正確ではない。
警察庁の統計では、準構成員等も別の区分で計上されている。
全国の暴力団勢力と比較すると?2025年末時点の全国の暴力団勢力は約17,600人だった。
内訳は以下のとおり。
- 構成員:約9,400人
- 準構成員等:約8,200人
警察庁は、全国の暴力団勢力が21年連続で減少し、暴力団対策法施行後の最少水準となったことを報告している。
稲川会も、この全国的な縮小傾向の中に位置している。
【勢力範囲は1都1道15県】警察資料から見る全国的な位置づけ
稲川会の勢力範囲について、大阪府警の指定暴力団一覧表と静岡県警の2026年公表資料は、いずれも次の情報を掲載している。
公表されている勢力範囲1都1道15県
合計17の都道府県単位
代表する者
内堀和雄
構成員数
約1,600人
2025年末時点の指定暴力団一覧表に掲載された情報。
ここで注意したいのは、「1都1道15県」という表記の意味である。
これは警察が把握する団体の勢力範囲を示す行政上の集計情報であり、該当する地域のすべてを同じ強さで支配しているという意味ではない。
また、勢力範囲の数字だけでは、地域別の構成員数や活動状況、組織の影響力の強弱までは分からない。
静岡県警の2026年公表資料にも掲載静岡県警は2026年6月4日に暴力団対策の情報を更新している。
同資料では、令和8年5月末時点で全国の指定暴力団が24団体とされ、稲川会についても代表者、勢力範囲、構成員数が掲載されている。
また、静岡県内についても稲川会の傘下組織を把握していると説明している。
一方、同ページに掲載される県内の暴力団勢力約575人という数字は、稲川会だけの人数ではなく、県内全体の数字である。
このように、全国統計と都道府県別統計を混同しないことが大切だ。
【指定暴力団とは?】暴力団対策法による指定要件を解説
稲川会を理解するうえでは、指定暴力団という法律上の区分も押さえておきたい。
指定暴力団とは、単に構成員数が多い団体や、世間で有名な団体を指す言葉ではない。
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律、いわゆる暴力団対策法に基づいて、都道府県公安委員会が指定する団体である。
指定に関係する主な3つの要件東京都の暴力団排除に関する公表資料では、指定暴力団の判断に関係する要件として、次の3点を説明している。
1. 構成員が団体の威力を利用して資金を得ることを実質的な目的としていること。
2. 構成員の犯罪経歴保有割合が政令で定める基準を超えていること。
3. 代表者の統制の下で階層的に組織されていると認められること。
これらは暴力団対策法第3条に定められた指定要件に関係する。
指定の手続きでは、公安委員会による意見聴取や国家公安委員会による要件該当性の確認なども定められている。
指定されると何が変わるのか指定暴力団に対しては、構成員による不当な要求行為などを規制する仕組みが適用される。
代表的なものとして、暴力団の威力を背景にした不当要求や、企業・個人に対する不当な利益の要求などへの規制がある。
また、都道府県の暴力団排除条例などと組み合わせて、企業や住民が暴力団と関係を持たないための対策が進められている。
稲川会についても、指定暴力団としての法的な位置づけと、実際の構成員数や活動状況は分けて理解する必要がある。
【稲川会の現在の実態】縮小する勢力と変化する組織犯罪
構成員数の減少だけを見て、暴力団の社会的な脅威がなくなったと判断することはできない。
警察庁の2026年公表資料は、全国の暴力団勢力が減少する一方、活動の不透明化や資金獲得活動の多様化が課題になっていると指摘している。
暴力団と匿名・流動型犯罪グループの関係近年の組織犯罪対策で注目されているのが、匿名・流動型犯罪グループ、いわゆるトクリュウとの関係だ。
警察庁の報告書では、暴力団構成員がこうした犯罪グループの首領となる事例や、犯罪グループから暴力団へ資金が流れる事例などが確認されている。
つまり、伝統的な暴力団組織の人数だけでは、現在の組織犯罪の全体像を把握できない。
組織の看板や固定的な階層だけでなく、周辺人物や資金の流れを含めて捉える必要がある。
稲川会に関する具体的な警察庁の記録警察庁の令和7年版資料には、稲川会の傘下組織に関係する薬物事件も記録されている。
資料によると、神奈川県内で2024年1月から10月にかけて覚醒剤を密売した傘下組織の組員が、2025年3月までに覚醒剤取締法違反で逮捕された。
同事件では覚醒剤約11.308グラムが押収され、購入者6人も逮捕されたとされる。
これは個別事件の記録であり、稲川会の全構成員や組織全体の活動を示す統計ではない。しかし、組織犯罪の実態を理解する際には、人数や役職だけでなく、警察の検挙情報も重要な資料になる。
【稲川会の組織図最新】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年現在、稲川会の代表者は誰ですか?
A1:2026年に確認できる警察公表資料では、内堀和雄です。2025年5月、前総裁の死去を受けて東京都公安委員会が代表する者として公示しました。
Q2:稲川会の現在の構成員数は何人ですか?
A2:警察庁の2026年4月公表資料に記載された2025年末時点の数字は、構成員約1,600人です。準構成員等約1,000人を加えると約2,600人となります。
Q3:稲川会の勢力範囲はどこまでですか?
A3:警察の指定暴力団一覧表では、1都1道15県とされています。ただし、地域ごとの実際の活動状況や影響力を示す数字ではありません。
Q4:稲川会の最新の完全な組織図は公開されていますか?
A4:一般向けの警察公表資料で、内部の全役職者や指揮命令関係を網羅した完全な組織図は確認できません。代表者、構成員数、勢力範囲などの基本情報が主な公開内容です。
Q5:稲川会はいつ結成されたのですか?
A5:警察白書では、1949年ごろに稲川角二が熱海市を拠点として結成した稲川組が起源とされています。1972年に稲川会へ名称が変更されました。
Q6:稲川会は現在も指定暴力団ですか?
A6:はい。2026年に更新された静岡県警の公表資料にも指定暴力団として掲載されています。
2026年11月現在、稲川会について公的資料から確認できる主要な情報は、次のとおりだ。
- 代表者:内堀和雄
- 構成員数:約1,600人
- 準構成員等:約1,000人
- 合計:約2,600人
- 勢力範囲:1都1道15県
- 法的な位置づけ:指定暴力団
特に大きな転換点は2025年5月の代表者変更である。内堀和雄が公安委員会によって代表する者として公示され、同年10月には組織内部の昇格人事なども警察庁の報告書に記録された。
【プロの結論】
稲川会の最新情報を調べるなら、次の4つを必ず確認したい。
1. 資料の公表日と統計の基準日:2026年に公開された資料でも、統計そのものは2025年末時点の場合がある。
2. 代表者と会長の違い:組織内の肩書と、暴力団対策法上の「代表する者」は区別する。
3. 構成員と準構成員等の違い:人数を比較するときは同じ集計区分を使う。
4. 勢力範囲と実際の活動状況の違い:都道府県数だけで地域への影響力を判断しない。
情報源として優先したいのは、警察庁の「令和7年における組織犯罪の情勢」、静岡県警の2026年更新資料、大阪府警の指定暴力団一覧表、暴力団対策法の条文である。
稲川会の組織図をめぐる情報で最も大切なのは、公開されている基本情報と、公開資料では把握できない内部情報を混同しないことだ。 代表者や構成員数のような公的に確認できる数字を基準にすれば、古い組織図や出典の不明なネット情報に振り回されず、2026年現在の状況をより正確に理解できる。