焼き鳥店の定番メニューとして親しまれている「砂ずり」。コリコリとした独特の歯ごたえが魅力ですが、鶏のどこの部位なのか、砂肝とは別の食材なのか、疑問に感じる人もいるのと考えられます。
砂ずりは、鶏の胃の一部である「砂嚢(さのう)」を指す呼び名です。砂肝と基本的に同じ部位で、関西以西を中心に「砂ずり」や「ズリ」と呼ばれています。文部科学省の食品成分データベースによると、生の砂肝は可食部100g当たり86kcal、たんぱく質18.3g。脂質が比較的少なく、鉄や亜鉛も含む食材です。この記事では、名前の由来から栄養、下処理、簡単レシピ、食中毒を防ぐ加熱方法まで、家庭で役立つ知識をまとめます。
【砂ずりとは】鶏のどこの部位?砂肝との違いと名前の由来

砂ずりとは、鶏の消化器官の一部である「砂嚢(さのう)」のことです。一般的な食肉の呼び名では「砂肝」と表記され、焼き鳥店や精肉店では「砂ずり」「ズリ」という名称も使われます。名前が異なっても、基本的には同じ部位です。
砂ずりは胃の一部にある筋肉鶏の胃は、食べ物を消化液などで処理する腺胃と、食べ物を物理的にすりつぶす筋胃に大別されます。砂ずりは、このうち筋胃に当たります。農林水産省が紹介する鶏肉の部位解説でも、砂肝は鶏の胃のうち筋胃に当たる部位として説明されています。
鳥類には歯がありません。そのため、飲み込んだ食べ物を細かくする際には、筋胃の強い収縮と、食べ物と一緒に飲み込まれた小石や砂粒などの働きが役立ちます。こうした消化の仕組みが、砂ずりという食材の特徴にもつながっています。
なお、砂ずりは肝臓ではありません。「砂肝」という名前に「肝」の文字が含まれていますが、鶏レバーのような肝臓とは別の器官です。砂ずりを肝臓の仲間だと考えるのは、よくある誤解の一つです。
砂ずりと砂肝の違いを比較砂ずりと砂肝は、基本的に地域や店舗による呼び方の違いです。部位や栄養が名前によって変わるわけではありません。
| 比較項目 | 砂ずり | 砂肝 |
|---|---|---|
| 指す部位 | 鶏の筋胃・砂嚢 | 鶏の筋胃・砂嚢 |
| 主な呼び方 | 関西以西を中心に使用 | 東日本を含め広く使用 |
| 食感 | コリコリとした歯ごたえ | コリコリとした歯ごたえ |
| 代表的な料理 | 焼き鳥、炒め物、唐揚げ | 焼き鳥、炒め物、煮物 |
| 栄養上の違い | 呼び名による違いはない | 呼び名による違いはない |
砂ずりという名前は、砂嚢が食べ物をすりつぶす働きに由来すると考えられています。「砂をすり合わせる」「砂と一緒に食べ物をすりつぶす」という機能を表す呼び名です。
一方、「砂肝」の「砂」は、砂嚢の働きや内部に取り込まれた砂粒に関係します。「肝」は必ずしも肝臓そのものを意味するわけではなく、ここでは内臓を表す名称として使われています。
地域によって呼び名が異なるのは、食文化や方言の違いが背景にあるためです。一般には東日本では「砂肝」、西日本では「砂ずり」や「ズリ」がよく使われます。ただし、境界線が明確に分かれているわけではなく、店舗や家庭によっても呼び方は異なります。
【食感の秘密】砂ずりがコリコリする理由と鮮度の見分け方
筋肉が発達しているため歯ごたえが強い砂ずりの最大の特徴は、噛んだときに感じるコリコリとした食感です。その理由は、食べ物をすりつぶす役割を担う筋胃の筋肉が発達していることにあります。
鶏もも肉やむね肉のような一般的な筋肉とは異なり、砂ずりは消化のために食べ物を物理的に砕く働きを持っています。筋肉の厚みや内部の組織構造が、独特の弾力と歯ごたえを生みます。
加えて、砂ずりの表面や周囲には、食べにくさにつながる硬い膜や筋があります。これらを適切に取り除くことで、口当たりがよくなり、食べやすさも変わります。
砂ずりの鮮度は色・におい・表面で判断する砂ずりを購入するときは、色だけでなく、においや表面の状態、包装内のドリップ、消費期限などを総合的に確認します。
- 色:赤みのある色合いが一般的。多少の色の違いだけで鮮度を断定しない。
- におい:強い酸臭や腐敗臭など、普段と異なる不快なにおいがないか確認する。
- 表面:不自然なぬめりや異常な変色がないかを見る。
- ドリップ:包装内に液体が多くたまっていないか確認する。
- 表示:消費期限、保存方法、加熱用などの表示に従う。
ただし、見た目やにおいに異常がないからといって、食中毒菌がいないとは限りません。農林水産省や厚生労働省も、鶏肉は新鮮であっても生食できるとは限らないと注意喚起しています。鮮度の確認は品質を判断するための目安であり、安全性を保証するものではありません。
【栄養とカロリー】砂ずりは低脂質でたんぱく質やミネラルを含む
砂ずり100g当たりの栄養成分文部科学省の食品成分データベースに掲載されている「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」の数値によると、鶏の砂肝は次のような栄養成分を含みます。数値は生の可食部100g当たりです。
- エネルギー:86kcal
- たんぱく質:18.3g
- 脂質:1.8g
- 鉄:2.5mg
- 亜鉛:2.8mg
- ビタミンB12:1.7μg
- コレステロール:200mg
砂ずりは、たんぱく質を摂取できる一方で、脂質が比較的少ない食材です。鉄や亜鉛、ビタミンB12も含まれています。食事にたんぱく質源やミネラルを取り入れたいとき、選択肢の一つになります。
ヘルシーな食材でも食べ方には注意砂ずりそのものは比較的低カロリーですが、調理方法によって摂取エネルギーや塩分量は変わります。油を多く使った炒め物や揚げ物、塩をたっぷり振った焼き鳥では、完成した料理の栄養価も変化します。
また、砂ずりにはコレステロールも含まれます。低脂質という理由だけで大量に食べるのではなく、野菜や豆類、魚なども組み合わせ、食事全体のバランスを整えることが大切です。
栄養成分の数値は生の砂肝を基準にしたものです。加熱すると水分が減り、調理後100g当たりの成分量は変化します。油や調味料を加えた料理のカロリーを計算するときは、調理後の重量や使用量も考慮してください。
【下処理の基本】砂ずりの臭み取り・切り方・銀皮の取り方
砂ずりを家庭でおいしく調理するには、下処理がポイントです。硬い銀皮を取り除き、食べやすい大きさに切ることで、食感を調整できます。慣れれば難しい作業ではありません。
砂ずりの下処理は3つの手順で進める手順1:余分な脂や血の塊を取り除く。砂ずりの表面に付いた余分な脂や、目に見える血の塊を包丁で取り除きます。生の鶏肉を水道水で洗うと、水はねによって周囲の食品や調理台に菌が広がるおそれがあるため、洗わずにペーパータオルで汚れやドリップを拭き取ります。
手順2:銀皮を確認する。砂ずりの片側には、白っぽく硬い膜状の部分があります。一般に「銀皮」と呼ばれる部分で、食感が硬くなりやすいため、柔らかく仕上げたい場合は取り除きます。銀皮を残して調理する方法もありますが、歯ごたえが強くなります。
手順3:食べやすい大きさに切る。中央のくぼみや筋に沿って半分に切り分け、必要に応じてさらに小さくします。厚みを均一にそろえると火の通りを調整しやすくなります。包丁を使う際は、滑らないように注意してください。
銀皮の取り方と切り方のコツ銀皮を取り除くときは、膜と身の境目に包丁の刃先を入れ、膜を引っ張りながら少しずつ切り離します。身まで大きく削り取ると可食部分が減るため、薄く切り進めるのがコツです。
コリコリした食感をしっかり楽しみたい場合は、銀皮をすべて取り除かず、食べやすい大きさに切るだけでも構いません。反対に、子どもや硬い食感が苦手な人向けには、銀皮を除去して小さめに切る方法が適しています。
砂ずりの臭み取りは水洗いより適切な処理を砂ずりのにおいが気になる場合は、まずドリップや血の塊、余分な脂を丁寧に取り除きます。ペーパータオルで水分を拭き取り、酒やしょうが、にんにくなどを使った下味を付けると、風味を整えやすくなります。
酒やしょうがは風味を調えるためのもので、食中毒菌を確実に取り除く方法ではありません。強い異臭や不自然なぬめりがある場合は、調味料でごまかさず、食べるのを避けてください。
生の砂ずりを扱った包丁やまな板、容器は、ほかの食品に使う前に十分に洗浄・殺菌します。下処理を済ませた砂ずりも室温に放置せず、速やかに調理しましょう。
【焼き鳥から簡単レシピまで】砂ずりのおいしい食べ方
焼き鳥は塩で素材の味を楽しむ砂ずりの代表的な食べ方は焼き鳥です。脂が比較的少なく、噛むほどに感じられる歯ごたえが魅力なので、シンプルな塩味と相性がよい部位です。
下処理した砂ずりを食べやすい大きさに切り、串に刺して塩を振ります。表面を香ばしく焼きつつ、中心まで十分に火を通してください。レモンを添えれば、さっぱりした風味も楽しめます。
焼き鳥店で注文するときは、塩味で食感を楽しむほか、たれ味で香ばしさと甘辛い風味を組み合わせるのもおすすめです。ただし、表面が焼けていても中心が生焼けの場合があるため、色や焼き目だけで安全性を判断しないようにしましょう。
フライパンで作る砂ずりのガーリック炒め自宅で手軽に作るなら、にんにくとレモンを使った炒め物がおすすめです。材料が少なく、砂ずりの食感を生かせます。
材料(2人分)
- 砂ずり:200g
- にんにく:1片
- サラダ油:小さじ1
- 塩・こしょう:適量
- レモン:適量
- 好みで青ねぎや黒こしょう:適量
作り方
- 砂ずりの余分な脂や血の塊を取り除き、食べやすい大きさに切る。
- にんにくを薄切りにする。
- フライパンに油とにんにくを入れ、弱めの中火で香りを出す。
- 砂ずりを加え、焦げ付きに注意しながら炒める。
- 厚い部分まで十分に火を通し、中心部が75℃以上で1分間以上になることを確認する。
- 塩・こしょうで味を調え、レモンを添えて仕上げる。
砂ずりは厚みのある部分が生焼けになりやすいため、切り方をそろえることが大切です。中心温度を確認できる食品用温度計を使うと、加熱状態を判断しやすくなります。
唐揚げ・煮物・おつまみにも向いている砂ずりは焼き鳥や炒め物だけでなく、唐揚げ、煮物、アヒージョ風の料理などにも使えます。唐揚げは外側の香ばしさと内側の歯ごたえを楽しめる一方、厚い部分まで火を通す必要があります。
煮物にする場合は、しょうゆやしょうがを使った味付けがよく合います。長く加熱しすぎると硬さが増すこともあるため、切る大きさや火加減を調整しながら仕上げてください。
おつまみとして楽しむなら、塩・レモン・黒こしょうの組み合わせが手軽です。塩分を控えたい場合は、しょうがやにんにく、柑橘類、香辛料を活用すると、塩を増やさずに風味を付けられます。
【安全性を最優先】砂ずりは生で食べられる?正しい加熱方法
砂ずりの生食や半生調理は避ける砂ずりは、刺身や生焼けの状態で食べることは避けてください。鶏肉や鶏の内臓には、カンピロバクターなどの食中毒菌が付着している可能性があります。
厚生労働省の「カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)」では、鶏肉を十分に加熱し、生や加熱不十分な鶏肉料理を食べないことが予防の基本として示されています。新鮮な食材であることや、信頼できそうな店舗で購入したことだけでは、生食の安全性は保証されません。
中心部を75℃以上で1分間以上加熱する厚生労働省や農林水産省が案内する加熱の目安は、肉の中心部を75℃以上で1分間以上加熱することです。砂ずりもこの目安に沿って調理しましょう。
- 厚みをそろえて切り、熱が均一に伝わるようにする。
- 表面だけでなく、中心部まで十分に加熱する。
- 可能であれば食品用温度計で中心温度を確認する。
- 生肉を扱った包丁やまな板、手指を洗浄し、ほかの食品への二次汚染を防ぐ。
- 生の鶏肉を水で洗わず、ドリップはペーパータオルで拭き取る。
低温調理の場合も、設定温度だけで安全性を判断することはできません。食品の中心部が目標温度に達するまでの時間と、その温度を維持する時間の両方を考慮する必要があります。家庭で加熱条件を正確に管理できない場合は、中心部まで十分に火が通る一般的な加熱方法を選ぶと安心です。
食中毒を防ぐには、加熱だけでなく、保存や調理器具の衛生管理も欠かせません。購入後は表示に従って冷蔵・冷凍保存し、生肉をほかの食材から分けて扱ってください。
【プロの結論】砂ずり選びと調理で失敗しない判断基準
砂ずりをおいしく食べるために押さえておきたいのは、部位の特徴、下処理の目的、加熱の安全性を分けて考えることです。コリコリした食感は砂ずりの魅力ですが、硬い膜を残すかどうか、どのくらいの大きさに切るかによって食べやすさは変わります。
食感をしっかり楽しみたい人には、銀皮を一部残して塩焼きにする方法が向いています。柔らかく食べやすく仕上げたい人は、銀皮を取り除き、厚みをそろえて切るとよいでしょう。脂質を抑えたい人は、揚げ物よりも焼き物や炒め物を選び、油や塩の使用量を調整する方法があります。
一方、強い異臭や不自然なぬめりがあるものは購入・調理を避けるべきです。また、鮮度がよさそうに見えても、生食や半生で食べることはおすすめできません。安全な加熱と衛生管理は、食感や味付けとは別に必ず守るべき条件です。
【砂ずりとは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:砂ずりと砂肝は別の部位ですか?
A1:基本的に同じ部位です。どちらも鶏の胃の一部である砂嚢・筋胃を指し、地域や店舗によって呼び方が異なります。
Q2:砂ずりは鶏の肝臓ですか?
A2:肝臓ではありません。砂ずりは食べ物をすりつぶす筋胃に当たる部位で、レバーとは異なる器官です。
Q3:砂ずりのカロリーはどれくらいですか?
A3:文部科学省の食品成分データベースでは、生の砂肝100g当たり86kcalです。調理に使う油や調味料、加熱による水分の減少によって、料理のカロリーは変わります。
Q4:砂ずりの銀皮は必ず取る必要がありますか?
A4:必ず取り除かなければならないわけではありません。銀皮は硬さが出やすいため、柔らかく仕上げたい場合は取り除き、歯ごたえを重視する場合は残す方法もあります。
Q5:砂ずりは生や半生でも食べられますか?
A5:生食や半生での喫食は避けてください。鶏の内臓にも食中毒菌が付着している可能性があるため、中心部を75℃以上で1分間以上加熱することが基本です。
Q6:砂ずりの臭みを取るにはどうすればよいですか?
A6:余分な脂や血の塊を取り除き、ペーパータオルでドリップを拭き取ります。酒やしょうが、にんにくで風味を整える方法もありますが、異臭がある場合は食べずに処分してください。
砂ずりとは、鶏の胃の一部である筋胃・砂嚢を指す呼び名です。砂肝とは基本的に同じ部位で、地域によって「砂ずり」「ズリ」「砂肝」などの名称が使われています。食べ物をすりつぶすために発達した筋肉が、独特のコリコリした食感を生み出します。
栄養面では、生100g当たり86kcal、たんぱく質18.3gで、鉄や亜鉛なども含まれています。下処理では、余分な脂や血の塊を取り除き、好みに応じて銀皮を処理すると、焼き鳥や炒め物、唐揚げなど幅広い料理に活用できます。
ただし、鶏の内臓は鮮度がよくても生食できるとは限りません。中心部まで十分に加熱し、調理器具の衛生管理を徹底することが大切です。部位の特徴を理解し、下処理・味付け・加熱を適切に行えば、砂ずりならではの歯ごたえと風味を家庭でも楽しめます。