暴力団の勢力は長期的に縮小している。しかし、構成員数の減少だけをもって、組織犯罪の危険性がなくなったと判断することはできない。
警察庁が公表した「令和7年における組織犯罪の情勢」によると、2025年末時点の暴力団構成員等は約1万7,600人だった。内訳は構成員約9,400人、準構成員等約8,200人で、前年より合計約1,200人減少している。
これは2005年以降の減少傾向が続き、暴力団対策法が施行された1992年以降で最少となった数字だ。2026年11月時点で確認できる最新の通年集計として、2025年末の数値が重要な基準になる。
主要な指定暴力団と勢力の特徴2025年末の警察庁資料では、主要団体として次の6団体が取り上げられている。
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この6団体に所属する構成員等は合計約1万2,500人で、全国の暴力団構成員等の約71%を占める。つまり、組織数が多くても、勢力は一部の主要団体に集中している。
指定暴力団は、暴力団対策法に基づき都道府県公安委員会から指定された団体を指す。2025年6月1日現在、指定暴力団は全国で25団体だった。
ここで注意したいのは、指定暴力団の指定と、個々の構成員の刑事責任は別の問題だということだ。指定されている団体に所属していることだけで、所属者全員が個別の犯罪を行ったと判断されるわけではない。
また、指定の有効期間や団体の状況は変わるため、過去の組織一覧や構成員数をそのまま2026年現在の確定値として扱うことはできない。
2025年の検挙状況から見える犯罪傾向警察庁の2025年統計では、暴力団構成員等の検挙人員は7,335人で、前年から914人減少した。
罪種別の検挙人員は次のとおりだ。
| 罪種 | 検挙人員 |
|---|---|
| 覚醒剤取締法違反 | 1,478人 |
| 傷害 | 938人 |
| 詐欺 | 875人 |
| 窃盗 | 617人 |
| 麻薬取締法違反 | 530人 |
| 恐喝 | 385人 |
覚醒剤関連犯罪が最も多く、詐欺や窃盗も大きな割合を占めている。暴力団関連事件を理解するには、銃撃や抗争だけでなく、薬物、金融、営業、詐欺といった経済犯罪にも目を向ける必要がある。
また、検挙人員の減少と、犯罪の悪質性や被害規模の縮小は同じ意味ではない。2026年の上野の窃盗事件やヤミ金事件は、資金獲得をめぐる犯罪が引き続き問題になっていることを示している。
【暴力団組織の実態】資金源・準構成員・トクリュウとの関係

暴力団組織の特徴は、単に構成員が集まっていることではない。組長を中心とする階層的な関係、組織の威力を背景にした活動、資金の流れ、周辺関係者とのつながりが組織の実態を形成している。
警察庁の分析では、暴力団の活動は不透明化し、時代に応じて資金獲得の方法を多様化させている。構成員数が減少しても、経済的基盤を維持している組織があることが指摘されている。
暴力団の主な資金獲得活動公的資料や2026年の事件報道から確認できる主な犯罪類型は次のとおりだ。
- 薬物犯罪: 覚醒剤やその他の違法薬物に関係する犯罪。
- 詐欺: 身分や関係性を偽って金銭や営業上の利益を得る行為。
- 窃盗: 組織的な窃盗事件や高額現金を狙った犯罪。
- 違法金融: 法定上限を超える金利での貸し付けや違法な利息の取得。
- 営業活動をめぐる不正: 露店、飲食店、海の家などの営業に関係する不正行為。
- 恐喝・不当要求: 暴力団の威力を示して金銭などを要求する行為。
2026年10月の河津桜まつり事件や浜松市の祭事事件は、営業権の取得と暴力団排除の仕組みが衝突した事例だ。上野の窃盗事件は高額な現金を狙った犯罪、10月のヤミ金事件は違法金融をめぐる事例に当たる。
ただし、個々の事件で得られた収益が組織の上層部に渡ったかどうかは、送金記録や関係者の供述などを通じて確認されるべき事実だ。犯罪の売上と組織全体の収入を無条件に同一視することはできない。
匿名・流動型犯罪グループとの関係2026年の組織犯罪対策で特に重要なテーマが、匿名・流動型犯罪グループ、いわゆるトクリュウとの関係だ。
警察庁の分析によると、トクリュウはSNSや求人サイトなどを通じて実行役を集め、犯罪ごとに参加者を入れ替える特徴を持つ。犯罪収益を吸い上げる中核部分が匿名化されており、組織の実態を把握しにくい。
一方、暴力団構成員や元構成員がトクリュウの中核に関わる例、トクリュウから暴力団に資金が流れる例も確認されている。警察庁は、暴力団がトクリュウを実質的に傘下に置き、資金獲得活動の一部を担わせているケースもあると分析している。
このため、警察の組織犯罪対策は、実際に犯罪を実行した人物の逮捕だけでは完結しない。背後にいる人物、組織間の関係、犯罪収益の流れまで明らかにすることが重要になっている。
2025年10月には、警察庁に「匿名・流動型犯罪グループ情報分析室」が設置された。警視庁にも専従捜査体制が整備され、全国の警察による情報共有と中核的人物の摘発が進められている。
【暴力団対策法と暴力団排除条例】逮捕・摘発につながる仕組み
暴力団関連事件を理解するうえで欠かせないのが、暴力団対策法と暴力団排除条例の違いだ。両者は目的や適用場面が異なり、警察による取締りと社会全体の暴力団排除を支えている。
暴力団対策法とは正式名称は「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」。1992年に施行され、指定暴力団員による暴力的要求行為などを規制するための法律だ。
指定暴力団員が所属組織の威力を示して不当な金品を要求した場合などには、都道府県公安委員会が中止命令や再発防止命令を出すことができる。
また、対立抗争が激化した場合には、特定抗争指定暴力団等への指定や警戒区域の設定など、地域住民の安全を守るための措置も取られる。
特定抗争指定暴力団等の制度六代目山口組と神戸山口組の対立抗争を受け、2020年1月に両団体が特定抗争指定暴力団等に指定された。その後、六代目山口組と池田組、六代目山口組と絆會の関係にも同様の指定が行われた。
2025年末時点では、六代目山口組と神戸山口組の関係で9府県17市町、六代目山口組と池田組の関係で7府県8市、六代目山口組と絆會の関係で8府県11市が警戒区域に設定されていた。
警戒区域内では、事務所の新設、対立組織の構成員へのつきまとい、相手側の事務所付近での行動、多数での集合などが規制される。
さらに五代目工藤會については、2012年12月に特定危険指定暴力団等に指定され、2025年12月には指定期限の13回目の延長が行われた。
暴力団排除条例が規制するもの暴力団排除条例は、都道府県や市区町村などが地域の実情に応じて定める条例だ。事業者や住民、行政機関が連携し、暴力団に利益が渡ることを防ぐ役割を担う。
主な対象となるのは、次のような場面だ。
- 事業者による暴力団への利益供与
- 公共工事や行政契約からの排除
- 不動産取引における暴力団排除条項
- 暴力団事務所の開設・運営に対する規制
- 祭事やイベントの出店に関する排除措置
- 暴力団関係者による不当要求への対応
警察庁の2025年資料によれば、同年の暴力団排除条例に基づく措置は、勧告36件、指導2件、中止命令2件、再発防止命令2件、検挙26件だった。
また、全都道府県で公共事業等を対象とした暴力団排除条項の整備が完了している。これは、暴力団排除が警察の捜査だけでなく、行政や民間企業の契約管理にも組み込まれていることを示している。
河津桜まつりや浜松市の祭事で報じられた誓約書をめぐる事件も、この社会的な排除の仕組みと関係する。ただし、個別の事件で適用されるのは、詐欺罪などの刑法上の規定や各地域の条例、施設の利用規則などであり、暴力団対策法がすべての違反に直接適用されるわけではない。
【捜査と摘発の重要事例】過去の抗争事件から2026年の新展開まで
2026年の暴力団ニュースには、過去に発生した事件の捜査が長期間にわたって続き、新たな逮捕や証拠の発見につながった事例もある。
2007年の山口組系組長刺殺事件2007年5月31日、神戸市中央区の路上で、指定暴力団山口組系多三郎一家の後藤一男組長(当時65歳)が刺殺された。
事件では実行役の組員ら数十人が逮捕されたほか、殺害を指示したとされた山口組系組長も組織的殺人の罪で起訴された。一審では無罪となったものの、控訴審では懲役20年の逆転有罪判決が言い渡され、2015年に確定している。該当する組長はすでに死亡している。
一方、現場指揮役とされた神戸山口組系幹部の勢昇被告(77)は、事件後に行方が分からなくなっていたが、2025年10月26日、約18年を経て神戸市東灘区のマンションから出てきたところを兵庫県警に確保された。
2026年4月には、同被告が生活していたマンションから拳銃2丁と実弾が見つかっていたことが報じられた。兵庫県警は銃刀法違反の疑いも視野に、拳銃の保管経緯や目的を調べている。
また、逃走を助けたとされる暴力団組長らについては、4人が組織犯罪処罰法違反(犯人隠避)などの罪で起訴されたと報じられている。
この事件は、発生から長い時間が経過した後でも、関係者の確保や新たな証拠の発見によって捜査が進むことを示す事例だ。
2026年の事件報道で見落としてはいけないこと暴力団ニュースには、事件の発生、逮捕、送検、起訴、公判、判決という異なる段階の情報が混在している。各段階の意味を正確に理解することが、事件の経緯と真相を読み解く基本になる。
| 段階 | 意味 | 読者が確認するポイント |
|---|---|---|
| 事件発生 | 犯罪の疑いが生じた状態 | 発生日時・場所・被害状況 |
| 逮捕 | 捜査機関が容疑者の身柄を拘束 | 逮捕容疑と本人の認否 |
| 送検 | 警察が事件を検察に送致 | 捜査資料が検察に引き継がれたか |
| 起訴 | 検察が刑事裁判を求める | 起訴された罪名と公訴事実 |
| 公判 | 裁判所で証拠や主張を審理 | 被告人の主張と証拠 |
| 判決 | 裁判所が有罪・無罪や刑罰を判断 | 判決内容と確定の有無 |
例えば、10月の河津桜まつり事件は逮捕・捜査の段階であり、上野の約4億2,300万円窃盗事件は一部被告について判決が出ている段階だ。両者を同じ「暴力団事件」として一括りにしても、刑事責任の確定状況は異なる。
また、判決が出ても控訴・上告によって争いが続く場合がある。報道の見出しに「有罪」「実刑」と書かれていても、判決の確定状況まで確認することが大切だ。
【プロの結論】2026年の暴力団ニュースを見極める5つの判断基準
2026年の事件を横断して見ると、暴力団対策の焦点は、組織の構成員を減らすことだけでなく、組織を支える資金、人間関係、営業活動、犯罪収益の流れを断つことに移っている。
ニュースを読む際には、次の5つの視点が重要だ。
1.逮捕された人物の所属と事件への関与を分ける暴力団幹部や組員が逮捕されたという情報だけでは、組織全体が犯罪を指示したとは判断できない。個人の犯行なのか、組織的な指示があったのか、組織に利益が渡ったのかを区別する必要がある。
2.警察発表と報道上の見立てを区別する警察が正式に発表した逮捕容疑と、捜査関係者への取材による報道は、情報の性質が異なる。特に資金源や組織の関与については、警察が捜査している段階なのか、裁判で認定された事実なのかを確認したい。
3.抗争事件と個人的なトラブルを混同しない神戸の連続発砲事件は、元暴力団員が逮捕されたものの、兵庫県警は暴力団同士の抗争ではないとの見方を示した。所属歴と事件の動機は別々に検証する必要がある。
4.資金の流れに注目する露店営業、ヤミ金、窃盗、詐欺など、犯罪の形は異なっても、犯罪収益が誰に渡ったかは共通する重要な論点だ。組織犯罪の実態を把握するには、逮捕された人数や被害額だけでなく、資金の帰属先にも注目したい。
5.行政と民間の暴力団排除対策も確認する暴力団排除条例や契約上の排除条項は、暴力団が一般社会の経済活動に入り込むことを防ぐ仕組みだ。警察による逮捕・摘発と並行して、企業、自治体、イベント主催者がどのような対策を実施しているかも重要な判断材料になる。
こうした視点を持てば、単発の事件報道だけでなく、暴力団組織の現在、資金獲得活動の変化、警察庁の組織犯罪対策がどの方向に進んでいるのかまで理解しやすくなる。
【暴力団ニュース事件簿】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年に注目された暴力団関連事件は何ですか?
A1:東京・上野の約4億2,300万円窃盗事件、神戸の連続発砲事件、河津桜まつりや浜松市の祭事をめぐる露店出店権の不正取得疑惑、住吉会関係者らのヤミ金事件などが挙げられる。
Q2:2026年現在、指定暴力団は全国に何団体ありますか?
A2:警察庁の2025年6月1日現在の公表資料では25団体が指定されている。指定状況は変更される可能性があるため、最新の公安委員会や警察庁の公表資料を確認する必要がある。
Q3:暴力団幹部が逮捕される理由は何ですか?
A3:幹部という立場だけで逮捕されるのではなく、詐欺、窃盗、違法金融、薬物犯罪、銃刀法違反など、具体的な犯罪の疑いが捜査対象になる。組織的な関与についても個別の証拠に基づいて判断される。
Q4:暴力団対策法と暴力団排除条例は何が違いますか?
A4:暴力団対策法は、指定暴力団員による暴力的要求行為などを規制する国の法律。暴力団排除条例は、地域社会や企業、行政が暴力団への利益供与や取引を排除するための自治体の条例だ。
Q5:暴力団の構成員が減っているのに事件が続くのはなぜですか?
A5:構成員数が減少しても、資金獲得活動の多様化や準構成員、元構成員、匿名・流動型犯罪グループとの関係が残るためだ。警察庁も組織の実態や犯罪収益の流れの解明を重視している。
2026年の暴力団ニュース事件簿を振り返ると、上野の高額窃盗事件の判決、神戸の連続発砲事件、祭事や観光地での営業をめぐる詐欺容疑事件、住吉会関係者らのヤミ金事件など、事件の種類は多岐にわたる。
一方、警察庁の2025年末統計では暴力団構成員等が約1万7,600人まで減少し、過去最少を更新した。主要団体の勢力縮小が続く一方、トクリュウとの関係や資金獲得活動の不透明化が新たな課題になっている。
今後の注目点は、逮捕された関係者の起訴・判決、犯罪収益の行き先、暴力団と匿名・流動型犯罪グループの関係、抗争指定の継続状況、そして暴力団排除条例の運用だ。
暴力団事件を正しく理解するためには、センセーショナルな見出しだけに注目するのではなく、警察庁、都道府県警察、検察、裁判所が公表する情報を照らし合わせることが欠かせない。逮捕された事実、捜査中の疑い、起訴された内容、裁判で確定した事実を区別することが、2026年の組織犯罪情勢を読み解く最も確かな方法となる。
主な情報源:警察庁「令和7年における組織犯罪の情勢」、警察庁「令和8年警察白書」、全国暴力追放運動推進センター、兵庫県警察、警視庁、TBS NEWS DIG、共同通信、神戸新聞、FNNプライムオンライン、テレビ朝日ニュース。