裁判官の給料を理解するには、判事と判事補の違いを知っておく必要があります。両者は同じ裁判官ですが、法律上の職位や担当できる職務の範囲が異なります。
判事補は裁判官キャリアのスタート地点司法試験に合格した後、司法修習を終え、裁判官として任命されると、通常は判事補としてキャリアをスタートします。
判事補は、裁判官としての経験を積みながら、民事・刑事・家事などの事件を担当します。ただし、判事とは法律上の職務権限に違いがあり、原則として単独で裁判を行う権限には制限があります。
判事補の報酬は1号から12号までの区分で決まります。司法修習終了後の初任給の例として紹介されることが多いのが10号です。
2026年の現行法では、判事補10号の報酬月額は28万5,500円。これに初任給調整手当7万5,100円を加えると、月額36万600円となります。
判事になると給料はどれくらい上がる?判事補から判事へ任命されると、給与体系も変わります。判事の報酬は8段階に分かれ、現行法では最も低い8号でも月額54万6,000円です。
判事補1号の45万9,000円と比較しても、判事の報酬水準は高く設定されています。ただし、単純に判事補の経験年数だけで昇格が決まるわけではありません。
裁判官の報酬等に関する法律第3条では、判事・判事補・簡易裁判所判事の号や報酬月額を最高裁判所が定めるとしています。昇進や任命に関しても、裁判官会議などを通じた手続が設けられています。
簡易裁判所判事は判事補とは別の給与体系簡易裁判所判事は、簡易裁判所で民事・刑事事件を担当する裁判官です。判事補と同じ裁判官という立場ですが、報酬表は別に設けられています。
簡易裁判所判事には1号から17号までの区分があり、現行法の月額は27万6,300円から85万2,000円です。また、特別な場合には第15条に基づく100万6,000円の報酬月額が認められる制度もあります。
なお、判事を兼ねる簡易裁判所判事については、法律第13条により、判事の報酬月額が適用されます。所属する裁判所の名称だけで給与が決まるわけではありません。
判事補から判事への任命手続や司法修習生から判事補への任命の流れについては、最高裁判所の公表資料にも整理されています。
【歴代比較・検察官との違い】裁判官の給料はどう変わった?

裁判官の報酬は、国家公務員の給与改定などを背景に、法律改正によって見直されてきました。
最高裁判所長官の報酬月額を見ると、2024年から2026年にかけて段階的な引き上げが確認できます。
- 2024年4月適用:203万8,000円
- 2025年4月適用:209万5,000円
- 2026年11月2日時点の現行法:209万5,000円
- 2026年改正案:215万8,000円
2024年12月25日公布の法律第76号によって、報酬月額は203万8,000円に改定されました。続いて2025年12月24日公布の法律第93号で209万5,000円に引き上げられています。
2026年の改正案が成立すれば、最高裁判所長官の月額はさらに6万3,000円増加します。年額換算では75万6,000円の増加に相当します。ただし、これは基本報酬の12か月換算であり、賞与や手当の変動は含みません。
裁判官と検察官の給料はどちらが高い?裁判官と検察官は、司法制度を支える重要な法律専門職です。両者の給与体系には共通点が多く、実際に月額報酬・俸給を比較すると、対応する号で同じ金額が設定されています。
2026年の現行法では、最高裁判所判事と検事総長は、いずれも月額152万8,000円です。また、判事1号から8号までの報酬額は、検事1号から8号までの俸給額と一致しています。
判事補についても、1号から12号までの報酬額は、検事9号から20号までの俸給額と同じです。
裁判官と検察官の給与体系の関係| 比較項目 | 裁判官 | 検察官 |
|---|---|---|
| 最上位 | 最高裁判所長官 | 検事総長 |
| 最上位の月額 | 209万5,000円 | 152万8,000円 |
| 最高裁判所判事・検事総長 | 152万8,000円 | 152万8,000円 |
| 上位の号別体系 | 判事1~8号 | 検事1~8号 |
| 若手の号別体系 | 判事補1~12号 | 検事9~20号 |
| 給与の根拠法 | 裁判官報酬法 | 検察官俸給法 |
検事総長と最高裁判所長官を比較すると、最高裁判所長官の報酬が高くなっています。一方、最高裁判所判事と検事総長は同額です。
また、判事と検事の対応する号の金額が同じだからといって、職務内容や昇進経路まで同一というわけではありません。裁判官は中立的な立場から裁判を行い、検察官は犯罪の捜査や公訴の提起・維持などを担います。
このように、給与の数字だけでは両職種の仕事の違いや責任の性質までは判断できません。
【プロの結論】裁判官の給料を見るときに知っておきたい本質
裁判官の給与を評価する際、単に「高給かどうか」という視点だけでは、制度の意味を十分に理解できません。
裁判官の報酬には、一般の公務員とは異なる憲法上の保障が設けられています。日本国憲法第79条と第80条は、最高裁判所と下級裁判所の裁判官について、在任中に報酬を減額できないと定めています。
この規定は、裁判官が政府や行政機関の意向を気にして判決を変えることがないよう、司法の独立を経済面から支える仕組みの一つです。
給与制度から読み取れる重要な判断基準第一に、裁判官の報酬は職位と号によって決まる。
一般企業のように、売上や個人業績に連動して給与が大きく変動する仕組みとは異なります。判事・判事補・簡易裁判所判事という職位と、最高裁判所が定める号が基本的な判断材料です。
第二に、月額報酬と年収を混同しない。
月額報酬を12倍しただけでは、実際の年間給与は算出できません。賞与、初任給調整手当、対象となるその他の給与を確認する必要があります。
第三に、法律の改正日と適用日を区別する。
2025年12月24日に公布された改正法は、2025年4月1日に遡って適用されました。2026年の改正案も同様に4月1日からの適用を予定しています。公布日と給与の適用開始日は必ずしも一致しません。
第四に、司法の独立という制度的な目的を理解する。
裁判官の報酬を在任中に減額できないという憲法上の仕組みは、単なる待遇改善ではありません。裁判官が政治的・行政的な圧力から独立して職務を行うための制度的保障です。
給与水準を評価するなら、報酬月額、賞与、手当、任命制度、憲法上の保障を合わせて見ることが、最も適切な判断方法です。
【裁判官の給料】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:裁判官の初任給はいくらですか?
判事補として任官する場合、初任給の例として紹介される判事補10号の基本報酬は、2026年の現行法で月額28万5,500円です。初任給調整手当7万5,100円を加えると月額36万600円になります。
Q2:裁判官にはボーナスや残業代が支給されますか?
賞与に相当する期末手当などは、給与区分に応じた制度に準じて支給されます。一方、裁判官の報酬等に関する法律第9条では、超過勤務手当や休日給、夜勤手当、宿日直手当などは支給しないと定めています。
Q3:最高裁判所長官の年収はいくらですか?
2026年11月2日時点の現行法では、報酬月額209万5,000円です。12か月分に換算すると2,514万円となります。実際の年間給与は賞与や手当を加味するため、この金額とは異なります。
Q4:裁判官と検察官では、どちらの給料が高いですか?
最高裁判所長官と検事総長では最高裁判所長官の報酬が高くなっています。一方、最高裁判所判事と検事総長は月額152万8,000円で同額です。判事と検事の対応する号も基本的に同額に設定されています。
Q5:2026年の裁判官の給料はすでに引き上げられましたか?
2026年11月2日時点では、10月30日に衆議院を通過した改正案が参議院での審議待ちとなっています。現行法と改正案の金額を区別する必要があります。法案が成立すれば、報酬月額の改定は2026年4月1日に遡って適用される予定です。
2026年の裁判官の給料は、最高裁判所長官の209万5,000円から、判事補12号・簡易裁判所判事17号の27万6,300円まで、役職や号によって大きな違いがあります。
判事は月額54万6,000円から122万4,000円、判事補は27万6,300円から45万9,000円です。簡易裁判所判事には17段階の給与体系が設けられています。
さらに2026年10月には報酬引き上げ法案が提出され、衆議院を通過しました。成立すれば、最高裁判所長官は月額215万8,000円、最高裁判所判事は157万4,000円となる予定です。
裁判官の年収を正確に理解するには、報酬月額だけでなく、賞与、初任給調整手当などの諸手当、そして適用される法律の時点を確認することが欠かせません。
裁判官の給与は、単なる職業上の待遇ではなく、司法の独立を支える制度の一部です。今後は2026年の改正法案の成立と、2027年度以降の給与・手当制度の変更が注目されます。