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『かぐや姫の物語』帝のあごはなぜ長い?高畑勲の提案と原作との違いを徹底解説

黒田 慎平 黒田 慎平 • 更新: • 公開: • 読了約 19 分
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スタジオジブリの映画『かぐや姫の物語』を見た人の多くが、一度は目を奪われるのが、かぐや姫に求婚する御門(帝)の極端に長く、とがったあごです。端正な顔立ちをしているにもかかわらず、あごだけが突出した独特のデザインは、公開後もインターネット上で話題になり、「なぜこんな顔にしたのか」「高畑勲監督にはどんな狙いがあったのか」と疑問を集めてきました。

実は、この特徴的なあごには明確な制作上の経緯があります。人物造形・作画設計を担当した田辺修氏が美術資料集『THE ART OF かぐや姫の物語』で明かしたところによると、当初は美男子として描く構想があり、高畑勲監督の「一箇所だけバランスを崩す」という提案から現在のデザインが生まれました。加えて、原作『竹取物語』と映画では帝の行動の描き方にも違いがあります。

【結論】かぐや姫の物語で帝のあごが長い理由は高畑勲監督の提案だった

かぐや姫あご

御門のあごが長い最大の理由は、キャラクターデザインを決める段階で、高畑勲監督が意図的に顔のバランスを崩すアイデアを出したことです。

この制作秘話は、徳間書店から刊行された美術資料集『THE ART OF かぐや姫の物語』に掲載された、人物造形を担当した田辺修氏のコメントから明らかになっています。

当初は石作皇子として考えられていた美男子

田辺修氏によると、御門のキャラクターは最初から現在のような特徴的な顔だったわけではありません。

当初は、五人の貴公子の一人である石作皇子として描いたキャラクターを、御門に起用する案も検討されていました。目指していたのは、作品の中でも特に美しい顔立ちです。

しかし、デザインを決めかねていた際、高畑監督から次のような提案がありました。

「美男だけど一箇所バランスを崩してみたらどうか。たとえばアゴとか」

この助言をきっかけに、整った顔立ちと極端に長いあごを組み合わせた、現在の御門のデザインが完成しました。

つまり、あごの長さは作画ミスでも偶然の産物でもありません。キャラクターの顔に意図的な違和感を生み出すためのデザイン上の選択だったのです。

金曜ロードショー公式も紹介した御門誕生の秘密

この制作エピソードは、2018年5月18日に金曜ロードショーの公式Xアカウントでも紹介されました。

公式投稿では、御門を最もきれいな顔にしたいというキャラクター設定上の考えと、高畑監督のあごに関する提案が紹介されています。

そのため、ネット上で広まっている「なぜ帝だけあごが異様に長いのか」という疑問には、制作資料に裏付けられた答えがあります。

ただし、高畑監督が「御門を気持ち悪く見せるため」と直接説明したわけではありません。確認できるのは、美男子の顔に一箇所だけ不均衡を作るというデザイン上の指示です。その結果として、見る人に強烈な印象を与える顔立ちが生まれました。

【制作秘話】御門のキャラクターデザインを担当した田辺修と声優・中村七之助

御門の顔を理解するには、デザインを担当した田辺修氏と、声を担当した中村七之助氏の関係も押さえておきたいところです。

人物造形・作画設計を担当した田辺修

田辺修氏は、『かぐや姫の物語』で人物造形・作画設計を担当したアニメーターです。

本作では、高畑監督の演出意図をキャラクターの表情や身体の動き、線の表現に落とし込む役割を担いました。

スタジオジブリの作品情報でも、人物造形・作画設計として田辺氏の名前が記載されています。御門の特徴的な顔立ちは、監督のアイデアだけでなく、それを具体的なキャラクターとして成立させた田辺氏の仕事によって完成したものです。

中村七之助の若々しい声が造形にも影響

御門の声を担当したのは、歌舞伎俳優の二代目中村七之助氏です。

田辺氏は美術資料集のコメントで、中村七之助氏の声についても言及しています。若々しい声だったことから、キャラクターの造形は、より高貴で清潔感のある方向に仕上がったと説明しています。

ここで注目したいのは、御門のデザインが単に奇抜な顔を作る作業ではなかったことです。声の印象に合わせて人物全体の品格を整えながら、あごという一点だけを大きく崩す。その対比によって、独特の存在感が生まれています。

なお、中村七之助氏があごの長さを提案したという話ではありません。あごのデザインを決定づけたのは高畑監督の提案であり、声の若々しさは、そのほかの造形を考えるうえで影響した要素です。

【関係者・制作経緯一覧】かぐや姫の物語の帝をめぐる人物と事実

御門の長いあごをめぐる情報は、監督、作画担当者、声優、原作という複数の要素に分けて考えると理解しやすくなります。

人物・作品 関係・担当 確認できる事実
高畑勲 原案・脚本・監督 美男子の顔の一箇所を崩すデザインを提案
田辺修 人物造形・作画設計 御門のキャラクターデザインを具体化
中村七之助 御門の声 若々しい声が高貴で清潔感のある造形に影響
御門(帝) 映画の登場人物 かぐや姫に宮仕えを求め、強引に連れ去ろうとする
『竹取物語』 原作 帝が狩りを装ってかぐや姫を訪ね、連れ帰ろうとする
花園天皇像 高畑監督が関心を寄せた肖像画 人物の顔を線で捉えることについて考えるきっかけとなった作品

この関係を整理すると、あごの長さを直接決めた人物と、完成したキャラクターの印象に影響した人物を区別できます。

特に重要なのは、高畑監督の提案を田辺氏が造形として実現し、中村七之助氏の声の印象も加わって御門という人物が完成した点です。

【なぜ抱きついた?】帝がかぐや姫に強引に迫る理由と気持ち悪いと感じる背景

御門の長いあごと並んで、映画を見た人が疑問を抱くのが、かぐや姫に背後から抱きつく場面です。

このシーンは物語の大きな転換点です。単なる恋愛描写ではなく、かぐや姫が自分の意思を無視されることへの恐怖を強く感じる場面として描かれています。

御門はなぜかぐや姫に執着したのか

御門は、かぐや姫の美しさについての評判を耳にし、彼女を宮廷に出仕させようとします。

しかし、かぐや姫は宮仕えを望んでいません。本人の意思に反して宮廷に出仕させようとすることに、彼女は強く抵抗します。

それでも御門は諦めず、直接かぐや姫のもとへ出向きます。映画では、彼女の気持ちを確かめることなく背後から抱きしめる行動に出ます。

御門にとっては、自分が望む相手を手に入れようとする行動だったとしても、かぐや姫にとっては、自分の意思と尊厳を踏みにじられる出来事でした。

抱きつく場面が物語の転換点になった理由

かぐや姫は、都での暮らしや厳しいしきたり、望まない結婚の圧力など、さまざまな苦しみを抱えていました。

それでも、それまでの彼女は地上での生活を完全に捨てようとはしていませんでした。

ところが、御門に背後から抱きしめられたことで、彼女の心は大きく揺さぶられます。自分の意思が尊重されない状況に追い詰められ、月へ帰りたいという気持ちが強まっていくのです。

この場面で重要なのは、御門がかぐや姫に好意を持っているかどうかではありません。相手の意思を無視して、自分の望みを押し通そうとする権力者の姿が描かれていることです。

御門の異様に長いあごも、この場面と組み合わさることで、単なる珍しい顔立ちを超えた印象を与えます。整った顔と不自然な輪郭のアンバランスさが、彼の行動に対する視覚的な違和感を強めているのです。

帝が気持ち悪いと言われるのはなぜ?

御門に対する「気持ち悪い」という感想には、大きく分けて二つの理由があります。

一つは、極端に長いあごという視覚的なインパクトです。一般的な美男子の造形から大きく外れた特徴が、見る人に不気味さや違和感を与えています。

もう一つは、かぐや姫に対する振る舞いです。美しい容姿を持つ権力者が、相手の拒絶を十分に受け止めず、強引に接触する。その行動が、現代の視点では非常に不快に映ります。

2018年のCINEMAS+の記事でも、地上波放送時に御門の長いあごがSNS上で話題になったことが紹介されています。

ただし、すべての視聴者が御門を嫌っているわけではありません。印象的なデザインを面白がる人もいれば、物語上の演出として評価する人もいます。

見た目のインパクトと人物の行動が重なっているからこそ、御門は本作の中でも特に記憶に残るキャラクターになっています。

【原作との違い】竹取物語の帝も強引だった?映画で変更された重要な描写

映画の御門を理解するうえで欠かせないのが、原作である『竹取物語』との比較です。

実は、原作の帝も、かぐや姫に対して一方的に行動する人物として描かれています。ただし、映画とは具体的な場面の表現に違いがあります。

原作でも帝はかぐや姫を連れ帰ろうとした

『竹取物語』では、かぐや姫の美しさを知った帝が、まず内侍を遣わして彼女の姿を確認しようとします。

しかし、かぐや姫は対面を拒否します。帝はさらに竹取の翁に働きかけ、宮仕えさせようとしますが、かぐや姫の意思は変わりません。

そこで帝は、御狩の行幸を装って翁の家を訪れます。そして、かぐや姫の袖をつかみ、連れ帰ろうとします。

ところが、かぐや姫は姿を消してしまいます。帝は彼女が普通の人間ではないことを知り、その場で連れ帰ることを諦めます。

映画と原作の違いを比較

両者の違いを整理すると、次のようになります。

比較項目 原作『竹取物語』 映画『かぐや姫の物語』
帝の求婚 かぐや姫の評判を聞いて求める かぐや姫の美しさに関心を持ち、宮仕えを求める
宮仕えの拒否 かぐや姫が拒絶する かぐや姫が自分の意思で拒絶する
帝の訪問 御狩の行幸を装って訪問する かぐや姫のもとへ直接出向く
身体的な接触 袖をつかんで連れ帰ろうとする 背後から抱きしめる
かぐや姫の反応 姿を消して連れ去られることを拒む 強い拒絶と精神的な動揺が描かれる
物語上の役割 帝の求婚と姫の超自然的な存在を示す かぐや姫の苦悩と月へ帰りたい気持ちを際立たせる

注目したいのは、原作にも帝がかぐや姫の意思を無視して連れ帰ろうとする場面が存在することです。

映画だけが帝を強引な人物として描いたわけではありません。原作にある行動を、映像表現によってより直接的で感情的に伝わる場面へと再構成しています。

高畑勲監督が原作に加えた心理描写

原作『竹取物語』は、五人の貴公子の求婚と失敗談、帝の求婚、かぐや姫の昇天を中心に展開します。

一方、映画では、かぐや姫がどのような気持ちで地上を生き、なぜ苦しみ、何を失いたくなかったのかという内面が丁寧に描かれています。

例えば、五人の貴公子に対する難題も、映画では単純に相手を困らせるための要求ではなく、かぐや姫が望まない結婚を避けようとする心情と結びついています。

このように、高畑監督は原作の筋立てを残しながら、かぐや姫を一人の感情を持つ女性として描き直しました。御門の強引な行動も、その再解釈の中で重要な意味を持っています。

【作画考察】高畑勲監督のキャラクター造形と御門の長いあごに込められた意味

御門のデザインは、単独で考えるよりも、『かぐや姫の物語』全体の作画方針と合わせて見ると、さらに興味深いものになります。

花園天皇像に衝撃を受けた高畑勲

御門の顔について考える際に紹介されることがあるのが、花園天皇像という歴史的な肖像画です。

この肖像画は、鎌倉時代末期から室町時代にかけて生きた花園天皇を、画家の藤原豪信が描いたものです。

高畑監督は学生時代にこの肖像画を見て大きな衝撃を受けたとされ、自著『一枚の絵から 日本編』でも作品について取り上げています。

同書で高畑監督が注目したのは、天皇という高い地位にある人物が、必ずしも理想化された美男子として描かれていないことでした。

そこには、実際の顔立ちを捉えようとした画家の真摯な姿勢があり、風刺画とは異なる品格が感じられます。

ただし、この肖像画が御門の長いあごの直接的なモデルだったと確定しているわけではありません。高畑監督の人物表現や肖像画への関心を理解するための参考資料として捉えるのが適切です。

均整の取れた美しさよりも印象に残る人物造形

一般的なアニメーションでは、キャラクターの顔を整え、目や鼻、口の配置を一定のバランスに保つことが多くあります。

しかし、『かぐや姫の物語』では、人物を均一な美しさに整えることだけが目標ではありませんでした。

御門の場合、顔全体には高貴さや端正さを残しながら、あごだけを大きく突出させています。この一点の不均衡によって、ほかの登場人物とは異なる強烈な個性が生まれました。

加えて、御門がかぐや姫に接近する場面では、その特徴的な輪郭が人物同士の距離感や画面の構図にも関わります。

つまり、あごは単なる外見上の特徴ではなく、見る人が御門という人物をどう受け取るかに影響する視覚的な要素なのです。

水彩画のような作画と線の表情

本作の作画を語るうえで欠かせないのが、鉛筆の線や水彩画のような淡い色彩を生かした映像表現です。

高畑監督は、人物を写実的に再現するだけではなく、描線の向こう側にある人間の実感を観客に想像させることを目指していました。

制作デスクを務めた吉川俊夫氏のWEBアニメスタイルでのインタビューによると、本作では通常のアニメーションとは異なり、カットごとに線の太さや濃さを細かく調整していました。

田辺氏が線の表情を確認し、背景との色の組み合わせや余白の取り方までチェックするなど、完成画面に至るまで多くの工程が必要でした。

また、背景美術を担当した男鹿和雄氏による透明水彩の薄塗りも、本作独特の画面を形作っています。

西村義明プロデューサーのインタビューでは、高畑監督が『ホーホケキョ となりの山田くん』の制作後から、スケッチ風の淡彩表現に取り組みたいという意志を持っていたことも紹介されています。

『かぐや姫の物語』の作画は、単に古風な絵柄を再現したものではありません。線の揺らぎや省略、余白を使い、人物の感情や生命感を伝えるための表現です。

御門の長いあごも、そうした人物造形へのこだわりの中で生まれた特徴的なデザインとして見ることができます。

【2026年版】かぐや姫の物語の帝に関するよくある質問(FAQ)

Q1:かぐや姫の物語で帝のあごが長いのはなぜですか?
A1:高畑勲監督が、美男子として描く御門の顔について、一箇所だけバランスを崩すことを提案したためです。人物造形を担当した田辺修氏が、そのアイデアをもとに現在の長いあごのデザインを完成させました。

Q2:帝のあごをデザインしたのは誰ですか?
A2:人物造形・作画設計を担当した田辺修氏です。デザインの方向性には高畑勲監督の提案がありました。

Q3:帝の声優は中村七之助ですか?
A3:はい。御門の声を担当したのは歌舞伎俳優の二代目中村七之助氏です。若々しい声の印象が、キャラクターの高貴で清潔感のある造形にも影響したと田辺氏が説明しています。

Q4:帝がかぐや姫に抱きついたのはなぜですか?
A4:かぐや姫を自分の望む相手として手に入れようとし、彼女の拒絶や意思を尊重しなかったためです。この場面は、かぐや姫が精神的に追い詰められ、月へ帰りたいという気持ちを強める重要な転換点になっています。

Q5:原作の竹取物語でも帝のあごは長いのですか?
A5:いいえ。原作には帝の長いあごという設定はありません。長いあごは映画独自のキャラクターデザインです。

Q6:原作の帝もかぐや姫に強引に接触したのですか?
A6:はい。原作でも帝は御狩の行幸を装ってかぐや姫の家を訪れ、彼女の袖をつかんで連れ帰ろうとします。映画では、この行動が背後から抱きしめる場面として描かれています。

Q7:御門の長いあごは高畑勲監督の悪意によるものですか?
A7:制作資料で確認できるのは、美男子の顔に一箇所だけ不均衡を作るという提案です。御門を意図的に気持ち悪くするためだったと監督自身が明言したわけではありません。ただし、特徴的な顔立ちが作品内で強い違和感を生む効果を持っていることは確かです。

『かぐや姫の物語』に登場する御門の長いあごは、高畑勲監督の提案から生まれた、意図的なキャラクターデザインです。

当初は美男子として構想されていたキャラクターに対し、監督が一箇所だけバランスを崩すアイデアを提示。人物造形・作画設計を担当した田辺修氏がそれを具体化し、中村七之助氏の若々しい声の印象も加わって、現在の御門が完成しました。

加えて、映画の中で御門がかぐや姫に背後から抱きつく場面は、単なる求愛ではありません。原作『竹取物語』にも存在する帝の強引な行動を、かぐや姫の感情に寄り添う形で再構成した重要な場面です。

御門の長いあごを理解するための要点は、次の3つです。

  • デザインの直接的なきっかけは、高畑勲監督による顔のバランスを崩す提案。
  • 田辺修氏の人物造形と中村七之助氏の声の印象が、完成したキャラクターの個性を形作った。
  • 長いあごと強引な行動の組み合わせが、かぐや姫の拒絶や恐怖を際立たせる演出につながっている。

2026年に改めて作品を見返すなら、御門のあごだけでなく、彼がかぐや姫と向き合うときの表情や距離感、動きにも注目してみてください。高畑監督が追求した人物造形の意図と、原作を現代的な感情表現へと再構築した作品の魅力が、より深く見えてくるはずです。

主な参照資料

- スタジオジブリ公式作品情報・キャスト情報
- 徳間書店『THE ART OF かぐや姫の物語』に関するBuzzFeed Japanの取材記事
- WEBアニメスタイル掲載・吉川俊夫氏、西村義明氏の制作インタビュー
- 古典ライブラリー掲載『竹取物語』原文・現代語訳
- CINEMAS+掲載の御門のキャラクターデザインに関する考察記事

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黒田 慎平
デジタルマーケター 黒田 慎平
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リーグ公式記録と大会発表を出典に、選手コメントは会見の逐語録から引用。数値は試合後に公式記録で確認します。

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