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トロットとは何?2026年版・韓国演歌の起源と日本の演歌との違い、呼び名・特徴を徹底解説

星野 あかり 星野 あかり • 更新: • 公開: • 読了約 27 分
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トロットとは、韓国で発展した大衆音楽のジャンルで、日本では「韓国演歌」とも呼ばれています。哀愁を帯びたメロディー、独特のビブラート、2拍子を基調とするリズムなどが特徴で、韓国の歌謡文化を語るうえで欠かせない存在です。その起源は日本統治時代にさかのぼり、日本の演歌や西洋音楽の影響を受けながら、韓国独自の大衆音楽として形成されました。

一方、トロットには「成人歌謡(성인가요)」「伝統歌謡(전통가요)」「ポンチャック(뽕짝)」など複数の呼び名があります。また、日本統治時代の文化的影響をめぐる倭色批判や、1960年代の発禁・放送禁止問題など、音楽だけでは語りきれない歴史もあります。2026年現在の視点から、起源、歴史、音楽的特徴、日本の演歌との関係、呼び名の違いまで整理します。

【基本知識】トロットとは?韓国演歌と呼ばれる理由を解説

トロットとは

トロットは、韓国語で「트로트」または「트롯」と表記される韓国の大衆音楽ジャンルです。日本語では韓国演歌と紹介されることが多く、韓国の伝統的な歌謡文化と近代的なポピュラー音楽が交わるなかで形成されました。

日本の演歌と共通する哀愁のある旋律や感情表現を持つため、初めて聴く日本人にも親しみやすい音楽です。ただし、韓国のトロットと日本の演歌は同一ジャンルではありません。それぞれ異なる言語、社会背景、音楽産業のなかで発展してきました。

トロットは韓国の演歌・歌謡曲に相当する音楽

韓国の音楽ジャンルを大きく分類すると、K-POPやバラード、ロック、ヒップホップなどと並び、トロットも重要な位置を占めています。

日本の音楽ジャンルに置き換えるなら、演歌と昭和歌謡を合わせたようなイメージが近いでしょう。恋愛、別れ、故郷への思い、人生の苦労などを題材にした歌詞が多く、聴き手の感情に直接訴えかける表現が特徴です。

ただし、現代のトロットは昔ながらの演歌調だけではありません。明るいダンスビートや電子音、ラップ、ポップスの要素を取り入れた楽曲もあり、音楽性は幅広くなっています。

韓国演歌という呼び方は正確なのか

「韓国演歌」という名称は、日本人がトロットの音楽的な特徴を理解するための便宜的な呼び方です。

日本の演歌と韓国のトロットには、五音音階、哀愁を感じさせる旋律、情感豊かな歌唱などの共通点があります。また、両ジャンルの形成過程には西洋音楽の影響も見られます。

しかし、トロットには韓国語の歌詞に根差した情緒や、韓国社会の歴史を反映した独自の表現があります。特に韓国文化における「恨(ハン)」と「興(フン)」という感情は、トロットを理解するうえで重要です。

恨は、悲しみや悔しさ、満たされない思いなどが複雑に重なった感情を指します。一方、興は、喜びや高揚感、皆で盛り上がる楽しさを表す言葉です。

かつてのトロットには恨を表現する曲が多く見られましたが、時代が進むにつれて興を前面に出した明るい楽曲も増えていきました。

【起源と歴史】トロットはどこから生まれた?日本統治時代との関係

トロットの成立を理解するには、20世紀初頭の朝鮮半島と日本の大衆音楽の関係を知る必要があります。

韓国民族文化大百科事典によると、トロットは日本統治時代に日本の演歌などの影響を受けながら形成された大衆歌謡です。ただし、その音楽的背景は日本の演歌だけに限定されません。西洋音楽、アメリカのポピュラー音楽、韓国の既存の歌謡表現なども関係しています。

1920年代:日本の流行歌と西洋音楽の影響

1920年代には、日本で流行していた歌謡曲や演歌の翻訳・翻案作品が朝鮮半島でも広まりました。

当時の日本の大衆音楽も、西洋音楽を積極的に取り入れて形成されたものでした。つまり、韓国に伝わった音楽は、日本固有の伝統音楽だけで構成されていたわけではありません。

西洋のリズムや和声、日本の歌謡表現、朝鮮半島の音楽文化が交わることで、新しい大衆音楽の土台が作られていきました。

当時の朝鮮半島では、現在のように「トロット」というジャンル名が確立していたわけではなく、「流行歌」や「流行小曲」などの名称で呼ばれていました。

1928年〜1935年:韓国独自のトロットが定着

1928年には、文秀一作詞、金曙汀作曲の「세 동무」が登場し、韓国で制作された創作歌謡としてトロットの形成に関わりました。

1932年には李愛利秀(イ・エリス)の「황성의 적」、1934年には高福寿(コ・ボクス)の「타향살이」が登場します。そして1935年、李蘭英(イ・ナニョン)が歌った「목포의 눈물(木浦の涙)」が大ヒットし、初期トロットを代表する作品として定着しました。

特に「木浦の涙」は、失恋や故郷への郷愁を歌いながら、植民地支配下にあった人々の悲しみとも重ね合わせて受け止められた作品です。韓国国際交流財団の文化紹介記事でも、この楽曲は韓国大衆音楽史の重要な転換点として紹介されています。

李蘭英は1916年生まれで、1933年にオーケーレコードからデビューしました。1935年の「木浦の涙」によって広く知られ、韓国歌謡史を代表する女性歌手の一人となりました。

トロットという名前が定着したのはいつ?

トロットという呼び名は、英語の「Foxtrot(フォックストロット)」に由来します。フォックストロットは20世紀初頭のアメリカで広まった社交ダンスとその音楽です。

ただし、韓国のトロットとフォックストロットが同じ音楽という意味ではありません。韓国民族文化大百科事典は、両者の共通点は主に2拍子であることにとどまり、音楽様式としては別のものだと説明しています。

呼び名の定着時期には資料によって違いがあります。韓国国際交流財団の解説では1950年代にトロットという名称へ移ったと紹介されています。一方、韓国民族文化大百科事典では1960年代半ばに名称が定着したとされ、2024年の学術研究では1967年に主要メディアでトロットという言葉が使われ始めた点が指摘されています。

この違いは、名称が生まれた時期と、一般的な音楽ジャンルとして定着した時期を区別すると理解しやすくなります。

トロットの歴史を年代別に整理

成立から現在までの主な変化を

  • 1920年代:日本の流行歌や西洋音楽の影響を受けた歌謡曲が広まる。
  • 1928年:「세 동무」など韓国の創作歌謡が登場。
  • 1930年代:「他郷ぐらし」「木浦の涙」などが人気を集め、音楽様式が定着。
  • 1945年以降:解放と朝鮮戦争を経験し、分断や故郷への思いを歌う作品が広まる。
  • 1960年代:「トロット」というジャンル名が定着し、李美子などの歌手が活躍。
  • 1970年代:ロックやフォークとの融合が進み、趙容弼などが新しい音楽性を提示。
  • 1980年代:ポンチャック・メドレーや明るいトロットが人気を集める。
  • 1990年代:娯楽性やダンス性の強い楽曲が広がる。
  • 2000年代以降:K-POPや現代ポップスとの融合が進む。
  • 2019年以降:オーディション番組をきっかけに若い世代にも人気が広がる。

【音楽的特徴】トロットはなぜ独特の哀愁とリズムを持つのか

トロットを聴いて日本の演歌に似ていると感じる理由は、音階、リズム、歌唱法、歌詞のテーマに共通する部分があるためです。

特徴1:五音音階を使った独特のメロディー

初期のトロットには、5つの音を中心に構成される五音音階が多く使われました。

代表的なものは、韓国の音楽研究で説明される「ラ・シ・ド・ミ・ファ」を中心とした短調系の五音音階です。また、「ド・レ・ミ・ソ・ラ」を基本としながらラの音を重視する長調系の表現も見られました。

こうした音階は、日本の演歌で使われる音階とも共通する部分があり、聴き手に哀愁や懐かしさを感じさせます。

ただし、現代のトロットは必ずしも五音音階に限定されません。1990年代以降は音楽的な多様化が進み、従来の音階にとらわれない作品も増えています。

特徴2:2拍子を基調としたリズム

初期トロットの代表的な特徴が、2拍子を基調としたリズムです。

一定のリズムを刻む伴奏に、装飾的なメロディーや感情豊かな歌唱が重なることで、独特のグルーヴが生まれます。

一方、時代が進むと4拍子や3拍子、タンゴ、ロック、ダンスミュージックなどの要素も取り入れられるようになりました。

特徴3:ビブラートと装飾音を生かした歌唱

トロットの歌唱では、声を細かく揺らすビブラートや、音程を滑らかに変化させる装飾的な歌い方がよく使われます。

特に高音部分では、声の張りや音程の揺れを利用して感情を強調する表現が見られます。

ただし、すべてのトロット歌手が同じ歌唱法を使うわけではありません。1960年代の李美子のように落ち着いた歌唱を特徴とする歌手もいれば、現代の歌手のように力強く華やかな表現を取り入れる人もいます。

特徴4:恋愛・別れ・故郷・人生を歌う歌詞

トロットの歌詞には、失恋、片思い、離別、故郷への郷愁、人生の苦労など、人間の身近な感情が多く描かれています。

特に初期の楽曲では、個人の悲しみと社会全体の苦難が重なり合う表現が目立ちました。植民地支配や戦争、分断などの歴史を経験した韓国社会では、故郷を離れた人々の思いや家族との別れも重要なテーマになっています。

一方、現代のトロットでは、恋愛や人生を明るく歌い上げる作品も多く、悲しみだけがジャンルの本質ではありません。

【呼び名を比較】成人歌謡・伝統歌謡・ポンチャックは何が違う?

韓国のトロットを調べると、成人歌謡、伝統歌謡、ポンチャックという言葉が頻繁に登場します。

これらはすべて同じ意味ではありません。音楽ジャンルとしての位置づけ、世代や市場を意識した呼び方、音楽の雰囲気を表す俗称など、それぞれ異なる役割を持っています。

トロットと関連用語の関係一覧
名称 韓国語・由来 意味とトロットとの関係
トロット 트로트・트롯 韓国の大衆音楽ジャンル。日本の演歌に似た特徴を持つが、独自の発展を遂げた。
韓国演歌 日本語での呼称 日本人向けの説明的な表現。トロットの哀愁や歌唱法を理解するための比較名称。
成人歌謡 성인가요 成人層を意識した歌謡市場の呼称。トロットを含むが、トロットだけを指す言葉ではない。
伝統歌謡 전통가요 韓国の昔ながらの歌謡文化を強調する呼称。1980年代後半にトロットの別称として広まった。
ポンチャック 뽕짝 2拍子の伴奏を連想させる俗称。トロットと同じ意味で使われることもあるが、俗っぽさや娯楽性を表す場合もある。
フォックストロット Foxtrot アメリカ発祥の社交ダンス音楽。トロットという名称の語源だが、韓国のトロットとは別の音楽様式。
日本の演歌 演歌 日本の大衆音楽ジャンル。歴史的な影響関係や音楽的共通点はあるが、トロットとは別のジャンル。
成人歌謡(성인가요)とは?

成人歌謡は、韓国語で「성인가요」と表記される音楽カテゴリーです。

主に成人層を意識した歌謡市場で使われる呼称であり、トロットとの関係が深い言葉です。特に1980年代後半、韓国社会が娯楽や余暇を重視する方向へ変化するなかで、成人向けの歌謡としての位置づけが明確になりました。

ただし、成人歌謡はトロットと完全に同じ意味ではありません。バラードなどを含め、成人層に向けた幅広い音楽を指す場合があります。

伝統歌謡(전통가요)とは?

伝統歌謡は、韓国語で「전통가요」と表記されます。

トロットに対して「ポンチャック」という呼び名が使われ、俗っぽい音楽として扱われることへの反発もあり、1980年代後半には伝統歌謡という名称が広まりました。

この名称には、韓国で長く親しまれてきた歌謡文化としての価値を強調する意味があります。

ただし、伝統歌謡という名称が付いているからといって、トロットが古来の韓国伝統音楽そのものという意味ではありません。近代の大衆音楽として成立した歴史を持っています。

ポンチャック(뽕짝)とは?

ポンチャックは、韓国語で「뽕짝」と表記される呼び名です。

この言葉は、トロットの特徴的な2拍子の伴奏を擬音的に表現したものと説明されます。低音と打楽器が繰り返すリズムを連想させる言葉で、1960年代末から使われるようになりました。

当初はトロットをやや低く評価する意味合いを含んでいましたが、1970〜1980年代にはトロットとほぼ同じ意味で使われることもありました。

さらに1990年代には、複数の楽曲を電子楽器の伴奏でつなげる「ポンチャック・メドレー」が人気を集めました。その結果、ポンチャックは単なるトロットの別名だけでなく、特定の娯楽的な音楽スタイルを表す言葉としても使われるようになっています。

トロットとポンチャックの違いは?

両者の違いを理解する要点は、言葉が持つ範囲とニュアンスです。

トロットは韓国大衆音楽のジャンル名、ポンチャックはその音楽的な雰囲気や娯楽的なスタイルを表すこともある呼び名と考えると理解しやすくなります。

学術研究でも、1970〜1980年代には両者がほぼ同義で使われていた一方、1990年代以降はポンチャック・メドレーなどを通じて、ポンチャックが独自の音楽的な意味を持つようになったと指摘されています。

【歴史的論争】日本統治時代の影響と倭色批判・発禁処分の真相

トロットの歴史を語るうえで避けて通れないのが、韓国における「倭色(왜색)」批判です。

倭色とは、日本的な文化や趣味、表現などを意味する言葉です。日本統治時代の記憶が残る韓国では、日本の影響を受けた大衆音楽に対しても厳しい批判が向けられました。

なぜトロットは倭色音楽と批判されたのか

1945年の日本統治からの解放後、韓国では日本文化に対する警戒感が強く残りました。大衆音楽もその対象となり、日本の音楽を連想させる旋律や歌唱法は、韓国固有の文化を損なうものとして批判されることがありました。

1965年の日韓国交正常化をめぐる議論が高まると、音楽における日本的な要素も政治的・文化的な争点になりました。

当時の音楽審査では、歌詞だけでなく、旋律、リズム、歌唱法なども評価対象となりました。日本の演歌との共通点を持つトロットは、こうした議論のなかで倭色音楽の代表例として扱われることがありました。

ただし、音楽研究の観点では、共通する音階やリズムが存在することだけで、楽曲全体を日本の音楽と断定することには問題があります。西洋音楽を介した共通の影響や、韓国独自の発展も考慮する必要があります。

1964年の「椿娘」と1965年の放送禁止

倭色批判を象徴する代表的な事例が、李美子(イ・ミジャ)の「동백아가씨(椿娘)」です。

1964年に発表されたこの楽曲は、李美子の代表曲となり、トロット人気の復活にも大きく貢献しました。韓国国際交流財団の解説によると、当時の音楽シーンで人気を集めた一方、軍事政権から日本風の音楽と判断され、1965年に放送禁止の措置を受けています。

同曲の放送禁止は1987年まで解除されませんでした。長期間にわたって放送できない状態が続いたことは、韓国大衆音楽史における検閲問題を象徴する出来事です。

韓国民族文化大百科事典や韓国の公的な歴史資料でも、「椿娘」が倭色を理由とする禁止曲の一つとして記録されています。

トロットは本当に発禁になったのか

ここで注意したいのは、トロットというジャンル全体が一律に発禁になったわけではないという点です。

韓国における禁止曲には、レコードへの収録・発売が禁止された楽曲と、レコードとして流通していても放送が禁止された楽曲があります。韓国民族文化大百科事典も、この2つを区別しています。

「椿娘」の場合は、1965年に放送禁止となったことが確認できる代表例です。そのため、日本語で「発禁処分」と紹介される場合でも、レコードそのものの発売禁止と放送禁止を混同しないことが大切です。

また、1975年には大衆歌謡の大規模な再審査が行われ、政治的な理由や風俗上の理由などで多数の楽曲が禁止されました。韓国の国家記録院の資料には、当時の禁止理由として、倭色、退廃的表現、歌詞の内容、歌唱法などが記録されています。

1987年以降、音楽表現はどう変化したのか

1987年には、民主化の進展とともに文化的な表現の自由をめぐる状況も変わり始めました。

「椿娘」の放送禁止が解除されたのも同年です。長期間禁止されていた楽曲が再び公に流れるようになったことは、韓国の音楽文化にとって象徴的な出来事でした。

1996年にはレコードの事前審議制度が廃止され、音楽の創作や発表をめぐる制度も大きく変わりました。

この歴史から分かるのは、トロットが単に日本の演歌に似ていたから批判されたというだけではないことです。植民地支配の記憶、国家の文化政策、日韓関係、表現の自由といった複数の問題が交差していたのです。

【現代のトロット】K-POPとの融合と若い世代への広がり

トロットは、1930年代の音楽様式をそのまま保存してきたジャンルではありません。時代ごとにポップス、ロック、ダンスミュージックなどを取り入れながら変化してきました。

1960年代:李美子がトロットの人気を復活させる

1960年代には、アメリカのポピュラー音楽を取り入れたスタンダードポップが人気を集め、トロットは一時的に勢いを失いました。

しかし、1964年の「椿娘」のヒットによって状況が変わります。李美子は、深い情感と落ち着いた歌唱で支持を集め、「エレジーの女王」と呼ばれるようになりました。

この時期には、裵湖(ペ・ホ)、南珍(ナムジン)、羅勲児(ナ・フナ)なども活躍し、トロットの人気を支えました。

1970年代:ロックとトロットが融合

1970年代には、フォークやロックが若者文化の中心となり、トロットは再び変化を迫られました。

そのなかで登場したのが、ロックのサウンドとトロットの旋律を融合させた音楽です。

代表的な作品が、趙容弼(チョー・ヨンピル)の「돌아와요 부산항에(釜山港へ帰れ)」です。1976年のヒットを通じて、トロットの新しい可能性が示されました。

1980年代:ポンチャック・メドレーと明るい歌謡曲

1980年代には、電子楽器を使ったポンチャック・メドレーが人気を集めました。

過去のヒット曲を一定のテンポで次々につなぐ形式は、宴会や娯楽の場でも親しまれました。

また、周炫美(チュ・ヒョンミ)のように、明るく華やかな歌唱や装飾音を取り入れた歌手も登場しました。かつての悲哀を中心としたトロットとは異なる、軽快で親しみやすい音楽へと変化したのです。

2000年代:若い世代にも親しまれるトロットへ

2004年には、張允瀞(チャン・ユンジョン)の「어머나(オモナ)」が大ヒットしました。

この楽曲は、従来のトロットが持っていた親しみやすさを残しながら、明るく現代的なサウンドを取り入れた作品です。中高年だけでなく、幅広い世代に受け入れられました。

その後、朴玄彬(パク・ヒョンビン)や洪真英(ホン・ジニョン)など、テレビ番組でも活躍する若い世代のトロット歌手が登場しました。

2019年以降:オーディション番組が人気を再加速

2019年には、韓国のテレビ局TV朝鮮でオーディション番組「ミストロット」が始まりました。翌2020年には男性版の「ミスター・トロット」が放送され、トロット人気が大きく広がりました。

韓国文化体育観光部の文化紹介記事でも、これらの番組がトロットを再び幅広い世代に届けるきっかけになったことが紹介されています。

特に注目されたのは、従来の中高年中心の音楽というイメージが変わったことです。若い歌手が出演し、オーディション形式で競い合うことで、トロットは新しいファン層を獲得しました。

2026年の視点から歴史を振り返ると、トロットの魅力は、古い音楽様式を守ることだけではなく、時代ごとの流行を取り入れながら韓国の歌謡文化として受け継がれてきた点にあります。

【プロの結論】日本の演歌と韓国トロットを正しく理解するポイント

トロットを理解する際に最も重要なのは、日本の演歌との類似点だけでジャンルを判断しないことです。

確かに、トロットは日本統治時代に日本の演歌などから影響を受けて形成されました。しかし、その背景にある日本の流行歌自体も、西洋音楽と日本の音楽文化が交わって生まれたものです。

加えて、韓国では植民地支配、解放、朝鮮戦争、分断、経済成長、民主化という歴史を経ながら、トロット独自の音楽表現が発展しました。

したがって、トロットは「日本の演歌を韓国語にした音楽」と単純化できるものではありません。日本との歴史的な関係を持ちながら、韓国社会の感情や経験を反映して独自に変化してきた大衆音楽です。

トロットを聴くときに注目したい3つのポイント
  • 音楽の変化:1930年代の五音音階や2拍子を生かした作品と、現代のポップス融合型の作品を聴き比べる。
  • 歌詞の背景:恋愛や別れだけでなく、故郷、家族、戦争、人生など韓国社会の歴史を反映したテーマに注目する。
  • 呼び名の意味:トロット、成人歌謡、伝統歌謡、ポンチャックが必ずしも同義ではないことを理解する。

特に日本の演歌が好きな人には、初期の李蘭英や李美子の楽曲がおすすめです。一方、現代的な韓国の音楽が好きな人には、張允瀞や近年のオーディション番組から登場した歌手の楽曲が入り口になるでしょう。

【トロットとは】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:トロットとは簡単にいうと何ですか?
A1:トロットとは、韓国で発展した大衆音楽ジャンルです。日本の演歌に似た哀愁のある旋律やビブラート、2拍子を基調としたリズムなどが特徴で、日本では韓国演歌とも呼ばれます。

Q2:トロットの起源は日本の演歌ですか?
A2:日本の演歌などから影響を受けて形成されたことは事実です。ただし、日本の演歌だけが起源というわけではありません。西洋音楽やアメリカのポピュラー音楽、韓国の音楽文化も影響しており、1930年代には韓国独自の大衆音楽として定着しました。

Q3:トロットとポンチャックの違いは何ですか?
A3:トロットは韓国の大衆音楽ジャンルを指す名称です。ポンチャックは、そのリズムや音楽的な雰囲気を表す俗称として使われてきました。両者は同じ意味で使われる場合もありますが、ポンチャックには娯楽性やメドレー音楽を指すニュアンスもあります。

Q4:成人歌謡と伝統歌謡はトロットと同じですか?
A4:完全に同じではありません。成人歌謡は成人層を意識した幅広い音楽カテゴリーで、伝統歌謡は韓国の歌謡文化としての歴史や伝統を強調する呼称です。いずれもトロットと深い関係があります。

Q5:トロットはなぜ日本の音楽として批判されたのですか?
A5:日本統治時代の文化的影響が残っていたことに加え、1945年の解放後に反日感情が強まったためです。特に1965年前後には、旋律や歌唱法が日本風だと判断された楽曲が倭色音楽として批判され、放送禁止などの措置を受けました。

Q6:トロットは現在も韓国で人気がありますか?
A6:はい。特に2019年の「ミストロット」や2020年の「ミスター・トロット」などのオーディション番組を通じて、幅広い世代に知られるようになりました。現代ではK-POPやダンスミュージックなどを取り入れた新しいトロットも発展しています。

Q7:トロットという名前は何に由来していますか?
A7:アメリカ発祥の社交ダンス音楽「フォックストロット(Foxtrot)」に由来します。ただし、韓国のトロットとフォックストロットは同じジャンルではなく、名称の由来と音楽様式は区別する必要があります。

トロットとは、日本の演歌などの影響を受けながら1930年代に韓国で定着した大衆音楽ジャンルです。五音音階や2拍子、情感豊かな歌唱、恋愛や故郷を題材にした歌詞などが特徴で、日本では韓国演歌とも呼ばれています。

その歴史には、日本統治時代の文化交流、解放後の倭色批判、1965年の「椿娘」の放送禁止、1987年の禁止解除など、韓国社会の複雑な歴史が刻まれています。

また、成人歌謡、伝統歌謡、ポンチャックという呼び名も、それぞれ異なる時代背景や音楽文化を反映しています。

そして、現代のトロットはK-POPやポップスと融合し、かつての中高年中心の音楽という枠を超えて広がっています。

トロットを理解することは、単に韓国版の演歌を知ることではありません。日本と韓国の近代音楽史、植民地時代の記憶、そして韓国の人々が音楽に込めてきた悲しみや喜びを理解することにもつながります。

2026年現在も、トロットは韓国の大衆文化を理解するうえで欠かせない音楽ジャンルの一つです。

主な学術・公的資料

- 韓国学中央研究院『韓国民族文化大百科事典』
- 韓国国際交流財団『Koreana』
- 韓国国家記録院「大衆歌謡」
- 韓国文化体育観光部の文化紹介資料
- 韓国音楽学会掲載論文「軍事政権時期の禁止曲の旋律的特徴に関する研究」
- 2024年のトロットの歴史的用語と音楽的定義に関する学術研究

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星野 あかり

栄養情報は公的食品データベース、調理法はメーカー公式表記で裏取り。体験談は取材の了承を得た範囲でのみ引用します。

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