光浦靖子の手芸作家としての歩みを知るには、著書を順番に見ていくと分かりやすい。
作品のテーマは、単にかわいいものを作ることではない。相手の反応を想像したり、自分が面白いと思うものを形にしたり、理想の暮らしを思い描いたりするところに特徴がある。
1. 『男子がもらって困るブローチ集』(2012年)光浦靖子の手芸作品を世に広く知らしめた最初の作品集。
タイトルからも分かるように、一般的なプレゼントの価値観を少しずらしたユーモアが特徴だ。
ブローチという、必ずしも実用性が高いとはいえないアクセサリーに、作り手の愛情や遊び心を込めている。
2012年には刊行を記念した作品展も開催され、クリエイターとしての活動が注目されるようになった。
2. 『子供がもらって、そうでもないブローチ集』(2014年)2014年に刊行された第2作。
第1作と同様、受け取る側の反応を想像したユーモラスなタイトルが目を引く。
光浦の作品は、相手に喜ばれることだけを目的にしていない。作ること自体の楽しさや、ちょっとした困惑まで含めて作品の魅力にしている。
2014年には表参道ヒルズで作品展が開かれ、ブローチ139点が展示された。光浦本人の作品販売も初めて行われたイベントであり、手芸作家としての活動を広げる節目となった。
3. 『靖子の夢』(2017年)2017年4月15日に発売された手芸本。
出版社のSWITCH PUBLISHINGは、前2作に続く手芸本の第3弾として紹介している。
この本の大きなテーマは、理想の暮らしだ。
舞台は沖縄。「男」「子供」をテーマにしてきた前2作から方向を変え、今度は自分自身の夢に向き合う構成になっている。
光浦が思い描くのは、年を重ねたら沖縄で自分のブローチを売りながら暮らすという生活だ。
ここには、作品を作ることだけでなく、手芸を中心にした人生そのものを楽しみたいという思いが表れている。
また、『靖子の夢』に掲載された作品を再現できるブローチキットも販売された。ゴーヤ、三枚肉そば、魚など、沖縄を連想させるモチーフが取り入れられている。
キットには作り方説明書や羊毛、フェルトなどが用意され、作品の世界を実際に体験できるようになっていた。
4. 『私が作って私がときめく自家発電ブローチ集』(2021年)2021年5月29日発売。文藝春秋から刊行された120ページの手芸作品集だ。
タイトルにある「自家発電」という言葉が、この本の核心を表している。
それまでの光浦の手芸は、友人や知人を思い浮かべ、誰かにプレゼントすることが大きな楽しみだった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって人と会う機会が減ったことで、初めて自分のために作品を作るようになった。
収録されているのは、合計73点のブローチ。
作品は大きく2つに分けられる。
- 似顔ブローチ:友人、芸人、俳優、文化人などの顔を再現したもの
- 動物ブローチ:犬、ウサギ、ハムスター、リスなどを立体的に表現したもの
特に注目したいのが、相方の大久保佳代子をモチーフにしたブローチだ。
書籍には大久保のブローチの作り方も掲載されている。加えて、目つきの悪い猫や純情乙女なブタの作り方も収録されており、作品集でありながら実用的な手芸本としても楽しめる。
CREAの刊行記念記事では、光浦自身が外国の女性政治家や法律家をモチーフにした作品についても紹介している。
誰かのために作る手芸から、自分自身がときめくために作る手芸へ。この変化こそが、本書の最も大きな見どころだ。
ブッス!手芸部とは?光浦靖子が部長を務める手芸仲間光浦靖子の手芸活動を語るうえで、もう一つ欠かせないのが「ブッス!手芸部」だ。
これは、光浦を中心に手芸好きの女性たちが集まって結成したグループである。
2012年のマイナビニュースのインタビューによると、結成のきっかけは、海外の美術館での展示でも知られる「押忍!手芸部」への憧れだった。
また、2014年の森ビルによる作品展の資料では、初期メンバーとして次の名前が紹介されている。
- 光浦靖子
- とみこはん
- quimcho(キムチョ)
- モリ夫
- bucco(ブッコ)
手芸が好きな仲間たちが集まり、会話を楽しみながら作品を作る活動である。
興味深いのは、光浦が自分一人の技術を磨くだけでなく、仲間を集めて手芸の楽しさを共有してきたことだ。
この活動は、後のカナダでのワークショップにもつながる。作品を作ることと、人が集まる場所を作ること。その両方が光浦の手芸活動の柱になっている。
【手芸作家としての歩み】芸人からカナダのワークショップ講師へ

光浦靖子は1971年生まれ、愛知県出身。幼なじみの大久保佳代子とお笑いコンビ「オアシズ」を結成し、テレビやラジオで活動してきた。
『めちゃ×2イケてるッ!』などのバラエティー番組で知られる一方、手芸作家、文筆家としても作品を発表している。
手芸は芸能活動を始めてから身につけた新しい趣味ではない。子どものころから生活の一部として続けてきたものだ。
手芸活動の主な転換点- 小学3年生:手芸クラブに入ったことをきっかけにフェルトマスコット作りを始める。
- 2012年:『男子がもらって困るブローチ集』を刊行。初の手芸作品展も開催。
- 2014年:『子供がもらって、そうでもないブローチ集』を刊行。表参道ヒルズで139点の作品を展示。
- 2017年:『靖子の夢』を発売。沖縄で手芸をしながら暮らす夢を作品にする。
- 2021年5月:『私が作って私がときめく自家発電ブローチ集』を刊行。
- 2021年7月:カナダ・バンクーバーへの留学を開始。
- 2022年8月:公立カレッジのシェフ養成コースに進む。
- 2024年:2年間のカレッジ課程を修了。
- 2025年:カナダで手芸ワークショップやトークショーを行い、現地での活動を継続。
- 2026年:羊毛フェルト作品の発表とワークショップを継続。現地イベントでの作品販売も行う。
2021年7月、光浦は50歳でカナダ・バンクーバーへの留学を決断した。
2026年1月のマイナビニュースのインタビューでは、長年の芸能活動で精神的な負担を感じており、一度休む必要があったと振り返っている。
留学前は、仕事での失敗を引きずったり、周囲の評価を気にしたりすることが多かったという。
カナダでは、まず約1年間語学学校に通い、その後、2022年8月から2年間の公立カレッジのシェフ養成コースに進んだ。
料理を学んだ理由は、将来的に飲食の仕事にも挑戦したかったからだ。カレッジの2年コースを修了したことで、3年間の労働許可証を取得することにもつながった。
2025年の婦人公論.jpのインタビューでは、現地で手芸ワークショップを始めた経緯も紹介されている。
異国の地で収入を得る方法を考えた際、自分が長年続けてきた手芸を生かせると考えたのだ。
実際に募集を始めると参加希望者が集まり、カナダ在住の日本人だけでなく、アメリカから参加する人もいたという。
この経験は、光浦にとって手芸が単なる個人的な楽しみではなく、人との関係を作り、仕事にもつながる技術であることを再認識する機会になった。
【2026年最新活動】カナダでのワークショップと新作が話題に
2026年の光浦靖子は、カナダを拠点に手芸作家としての活動を続けている。
2026年1月のインタビューでは、カナダで手芸のワークショップを開催していること、日本でも定期的に教室を開きたいことを語っていた。
また、カフェを開くことにも関心を示している。
その後も作品発表やワークショップに関するニュースが続いた。
2026年の主な手芸関連トピック
2026年5月:文豪モチーフの羊毛フェルト作品
芥川龍之介やローワン・アトキンソンをモチーフにした作品を公開。夏目漱石を作るつもりが、ローワン・アトキンソンに似てしまったという制作エピソードも話題になった。
モデルプレス・2026年5月11日
2026年1月:『僕のヒーローアカデミア』の緑谷出久
好きな作品の主人公・緑谷出久を羊毛フェルトで制作。立体的な再現度と細かな作り込みが注目された。
ORICON NEWS・2026年1月26日
2026年9月:ナマケモノのワークショップ
2時間のワークショップで、初心者を含む参加者がペンにしがみつくナマケモノを制作。それぞれの個性が表れた作品が紹介された。
モデルプレス・2026年9月2日
2026年10月:ハロウィンのガイコツ作品
10月10日に、黒い帽子をかぶりカボチャを抱えたガイコツの羊毛フェルト人形を公開。ワークショップの開催告知も行った。
モデルプレス・2026年10月11日
2026年6月には、ブリティッシュコロンビア州スティーブストンのサーモンフェスティバルで、自身の羊毛フェルト作品を販売することも紹介された。
手芸作品を作るだけでなく、地域イベントに出店するという活動にも広がっている。
これは、かつて『靖子の夢』で思い描いていた、手芸作品を売りながら暮らすという夢にも重なる動きだ。
もちろん、2017年の本に描かれた沖縄での暮らしと、現在のカナダ生活は同じものではない。しかし、自分の作ったものを誰かに届け、それを仕事や人との交流につなげるという点では共通している。
日本への帰国や今後の活動はどうなる?2026年1月のマイナビニュースのインタビューで、光浦は日本でも手芸ワークショップを定期的に開催したいと話している。
加えて、いつかカフェを開きたいという希望も語った。
帰国については、2027年以降になる可能性に触れたものの、具体的な日程は決まっていないという。
一方、2026年に掲載されたELLEの二階堂ふみとの対談では、カナダでの生活について、精神的な気楽さを感じる一方、日本には人脈や新しい挑戦の機会があると語っている。
日本に戻った後は、以前と同じ芸能活動だけではなく、手芸を教えたり、文章を書いたり、人と話したりする活動を考えている。
つまり、今後の中心になるのは、芸能人としてテレビに出演することだけではない。これまでの経験を生かして、自分の好きなことを仕事にしていく生き方だ。
【作品の評判を検証】光浦靖子の手芸はなぜ多くの人を惹きつけるのか
光浦靖子の手芸作品に対する反応を見ると、単純な「器用」「かわいい」という評価だけではない。
特に評価されているのは、作品の再現力、独特の発想、そして細部まで作り込む姿勢だ。
作品に寄せられる主な評価2026年5月の文豪シリーズでは、芥川龍之介の顔を羊毛フェルトで再現した作品などが紹介され、「一目で誰かわかるくらいそっくり」「センスの塊」といった反応が伝えられた。
2026年9月のナマケモノ作品では、ペンにしがみつくという実用性とユーモアを組み合わせた発想が好評だった。
10月のガイコツ作品についても、帽子やネクタイ、カボチャなどの細部へのこだわりと色使いが評価されている。
こうした反応から分かるのは、光浦の作品が単に技術的に精巧なだけではなく、見る人が思わず笑ったり、作ってみたくなったりする魅力を持っていることだ。
光浦靖子が手芸を勧める理由光浦は、2021年に刊行したエッセイ『50歳になりまして』でも手芸の魅力について書いている。
文春オンラインに掲載された本人のエッセイでは、手芸のよさとして、作業に没頭する時間や、女性たちが集まって会話をしながら何かを作ることの楽しさが紹介されている。
また、リアルサウンドのインタビューでは、反復作業を続けることで嫌なことを忘れられ、初心者の不完全な作品にも独特のかわいさがあると説明している。
ここに光浦の手芸観がよく表れている。
上手に作ることだけが目的ではない。作っている時間そのものが楽しく、完成した作品を見て自分がときめくことにも価値がある。
この考え方は『自家発電ブローチ集』というタイトルにも通じる。
誰かに認められるためではなく、自分の中にある楽しさを自分で生み出す。それが光浦の手芸の根本にある。
光浦靖子の手芸が向いている人・向いていない人光浦の作品や制作姿勢を参考にするなら、次のような基準で考えるとよい。
おすすめできる人
- 手を動かす細かな作業が好きな人
- 完成までの試行錯誤を楽しめる人
- 既製品にはないオリジナルの作品を作りたい人
- 人物や動物の特徴を観察するのが好きな人
- 趣味を通じて人との交流を楽しみたい人
最初は難しく感じる可能性がある人
- 短時間で完成品を作りたい人
- 写真と寸分違わない造形を最初から求める人
- 細かな作業や繰り返しの工程が苦手な人
- 作品の完成度だけを重視する人
特に初心者に伝えたいのは、光浦の作品を最初の目標にしすぎないことだ。
人物の似顔ブローチは、観察力と経験が必要な高度な表現である。まずは簡単な動物や丸いモチーフから始め、少しずつ自分の好きな表情や形を作る方が長続きしやすい。
光浦の作品から学ぶべきなのは、技術だけではない。自分が面白いと思ったものを、遠慮せずに形にする姿勢そのものだ。
【光浦靖子の手芸】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:光浦靖子の手芸作品で代表的なものは何ですか?
A1:羊毛フェルトを使ったニードルフェルトのブローチが代表的です。特に人物の特徴をとらえた似顔ブローチや、動物を立体的に表現した作品が知られています。
Q2:光浦靖子のブローチの作り方が分かる本はありますか?
A2:『私が作って私がときめく自家発電ブローチ集』がおすすめです。基本の材料と道具、大久保佳代子の似顔ブローチ、猫やブタのブローチの作り方などが掲載されています。
Q3:光浦靖子は2026年現在もカナダに住んでいますか?
A3:2026年11月3日時点で、カナダを拠点に活動していることが報道されています。現地で手芸ワークショップを開催し、作品発表や販売にも取り組んでいます。
Q4:ブッス!手芸部とは何ですか?
A4:光浦靖子を中心に結成された手芸好きの女性たちのグループです。「押忍!手芸部」に憧れたことが結成のきっかけで、仲間と一緒に作品制作を楽しんできました。
Q5:光浦靖子のワークショップは日本でも開催されていますか?
A5:光浦本人は2026年1月のインタビューで、日本でも定期的に開催したいと希望を語っています。具体的な開催日程については、本人の公式Instagramなどで発表される情報を確認する必要があります。
Q6:光浦靖子はいつ日本に帰国する予定ですか?
A6:2026年1月のインタビューでは、2027年以降になる可能性に触れていますが、具体的な帰国日は決まっていません。
光浦靖子の手芸は、小学3年生のころに始まったフェルトマスコット作りから、ニードルフェルトのブローチ、似顔作品、作品集、そしてカナダでのワークショップへと発展してきた。
『男子がもらって困るブローチ集』『子供がもらって、そうでもないブローチ集』『靖子の夢』を経て、『私が作って私がときめく自家発電ブローチ集』では、自分自身のために作るという新しい創作の方向性も示した。
2026年には文豪やアニメキャラクター、ナマケモノ、ハロウィンのガイコツなど、モチーフの幅も広がっている。カナダでのワークショップも継続しており、手芸を通じた人とのつながりも育っている。
【プロの結論】光浦靖子の手芸から学べる3つのこと第一に、技術よりも観察と発想が作品の個性を生むこと。似顔ブローチの魅力は、対象人物の特徴を見つけ、それを自分なりの形に変換する力にある。
第二に、趣味は仕事やコミュニティへ発展させられること。長年続けてきた手芸が、作品集の出版、展示会、カナダでのワークショップという新しい活動につながった。
第三に、自分が楽しむことを創作の中心に置いてよいこと。人に喜ばれる作品を作るだけでなく、自分がときめくものを作る。その姿勢こそが「自家発電ブローチ」という発想の魅力だ。
2027年以降の日本での活動や、手芸教室・カフェという夢がどのような形になるのかも楽しみなところだ。光浦靖子の手芸は、単なる芸能人の趣味ではなく、長い時間をかけて育ててきた一つの表現活動として、これからも注目されそうだ。