2025年12月31日、茨城県水戸市加倉井町のアパートで、ネイリストの小松本遥さん(当時31歳)が殺害された。事件の捜査で明らかになったのは、元交際相手による執拗なストーカー行為と、紛失防止タグを悪用した位置情報の追跡だった。
殺人とストーカー規制法違反の罪に問われた大内拓実被告は、2026年1月21日に逮捕され、同年9月30日、水戸地方裁判所から拘禁刑20年の判決を受けた。加えて、検察・被告の双方が控訴しなかったため、10月15日付で判決が確定している。
事件を理解するうえで見逃せないのが、発生直前の警察への相談だ。小松本さんは事件の4日前、水戸警察署に元交際相手のストーカー行為について電話で問い合わせていた。相談はどのように扱われ、その後の警察対応はどう変わったのか。事件発覚から逮捕、裁判、判決確定までを時系列で整理する。
【事件の概要】水戸市加倉井町で何が起きた?小松本遥さんと大内拓実被告の関係

事件が起きたのは、茨城県水戸市加倉井町にあるアパートだった。被害者はネイリストの小松本遥さん。元交際相手の大内拓実被告による殺人事件として、茨城県警が捜査を進めた。
被害者・小松本遥さんは念願のネイルサロンを開業小松本さんは、洋服の販売員として働いた後、ネイルの技術を学び、茨城県内のネイルサロンで経験を積んだ。2025年5月には念願だった自身のネイルサロンを開業している。
同年7月7日には結婚。事件当時は妊娠中で、新しい生活を築いていた時期だった。
仕事を軌道に乗せ、家庭を築こうとしていた小松本さんの人生は、2025年の大みそかに突然断ち切られた。
大内拓実被告は元交際相手大内被告と小松本さんは2024年ごろに交際を始めたが、交際期間は1年に満たず、小松本さんから別れを告げて関係を解消した。
その後、小松本さんは別の相手と交際し、結婚生活を始めていた。一方、大内被告は関係の解消を受け入れられず、再び連絡を取ろうとするようになった。
テレビ朝日系ABEMAの公判関連報道によると、小松本さんはSNSをブロックし、電話の着信も拒否していた。それでも大内被告は、以前の勤務先や共通の知人などを通じて接触を試みていた。
このように、事件の背景には、単なる交際相手同士のトラブルではなく、別れた後も続いた一方的な接触と執着があった。
【事件の時系列】2025年12月31日の発覚から2026年10月15日の判決確定まで
水戸市加倉井町殺人事件の経過を理解するには、交際解消後のストーカー行為、紛失防止タグによる追跡、警察への相談、殺害、逮捕、裁判という複数の段階を整理する必要がある。
特に重要なのは、事件直前の12月26日から31日までの動きだ。公判で明らかになった内容を中心に、主要な出来事をまとめた。
| 時期・日時 | 関係者 | 出来事・関係 | 意味・結果 |
|---|---|---|---|
| 2024年 | 小松本さん・大内被告 | 交際開始後、関係を解消 | 元交際相手となる |
| 2025年5月 | 小松本さん | ネイルサロンを開業 | 自身の店舗で営業を始める |
| 2025年7月7日 | 小松本さん | 結婚 | 事件当時は妊娠中 |
| 2025年6~7月ごろ | 大内被告 | 連絡を試み、以前の勤務先や知人にも接触 | ストーカー行為につながる経過 |
| 2025年12月26日 | 大内被告 | 紛失防止タグを仕込んだぬいぐるみを被害者の実家に届ける | 居住場所の特定につながる |
| 2025年12月27日 | 小松本さん・水戸署 | 元交際相手のストーカー行為について電話で問い合わせ | 匿名の問い合わせとして処理 |
| 2025年12月31日 | 大内被告・小松本さん | 車への紛失防止タグの取り付け、殺害事件の発生 | 同日夜に夫が発見 |
| 2026年1月21日 | 茨城県警・大内被告 | 殺人容疑で逮捕 | 当初、被告は容疑を否認 |
| 2026年9月14日 | 水戸地裁 | 裁判員裁判の初公判 | 被告が起訴内容を認める |
| 2026年9月24日 | 検察・弁護側 | 検察側が拘禁刑21年を求刑 | 裁判が結審 |
| 2026年9月30日 | 水戸地裁 | 拘禁刑20年の判決 | 検察側の求刑を下回る実刑判決 |
| 2026年10月15日 | 検察・被告双方 | 控訴せず判決確定 | 拘禁刑20年が確定 |
この経過から見えてくるのは、殺害当日だけを切り取っても事件の全体像は把握できないということだ。位置情報の追跡や居住場所の特定、警察への相談など、事件前から複数の出来事が積み重なっていた。
【紛失防止タグの悪用】元交際相手によるストーカー行為の実態
本事件で特に注目されたのが、一般家庭でも利用される紛失防止タグを、本人の同意なく位置情報の追跡に悪用した点だ。
ぬいぐるみを利用した居住場所の特定2026年9月の公判で明らかになった経緯によると、大内被告は小松本さんの居住場所を突き止めるため、紛失防止タグを仕込んだぬいぐるみを用意した。
ぬいぐるみは段ボールに入れられ、小松本さんの実家に届けられた。小松本さんがそれを受け取って自宅に持ち帰ったことで、大内被告は位置情報を手掛かりに居住場所を把握したと報じられている。
その後、被告は自宅周辺を訪れるなどし、事件当日の12月31日未明には、小松本さんの車にも別の紛失防止タグを取り付けていた。
紛失防止タグはなぜストーカー行為に使われたのか紛失防止タグは、本来、鍵や財布、荷物などの紛失を防ぐための機器だ。スマートフォンと連携することで、対象物の位置を確認できる。
しかし、本人の承諾なく他人の持ち物や車両に取り付け、行動や居場所を追跡する目的で使用すれば、プライバシーと安全を脅かす手段になる。
本事件では、ぬいぐるみを利用した追跡と、車への取り付けという二つの段階が明らかになった。日常生活で使われる小型機器が、悪意ある人物の手に渡ると深刻な危険を生むことを示した事件でもある。
2025年12月30日に施行されたストーカー規制法の改正この事件を理解するうえで、法律の施行日も重要だ。
警察庁によると、改正ストーカー規制法は2025年12月10日に公布され、同年12月30日から施行された。この改正によって、紛失防止タグを使い、相手の承諾なく位置情報を取得する行為や、タグを取り付ける行為などが新たな規制対象に加わった。
今回の事件では、ぬいぐるみを利用した追跡に関する行為が改正法の施行前に行われ、車へのタグの取り付けは施行後だった。この時間的な違いは、法律の適用を考えるうえで要点となる。
つまり、紛失防止タグがすべて違法なのではない。問題になるのは、本人の承諾がない状態で位置情報を取得したり、追跡目的で取り付けたりする行為だ。
【警察への相談と対応】事件4日前の電話で何が起きていたのか
この事件で社会的な検証が求められたのが、殺害直前に小松本さんが水戸警察署へ電話していた事実だ。
事件の4日前にあたる2025年12月27日、小松本さんは元交際相手によるストーカー行為について、どの部署に相談すればよいのかを問い合わせていた。
12月27日の水戸警察署への電話テレビ朝日系ABEMAの2026年10月5日の報道によると、小松本さんは午後4時18分ごろ、車の中から水戸警察署に電話をかけた。
電話では、元交際相手からのストーカーのような行為について相談したい場合、どの部署に行けばよいかを尋ねたという。
警察官は生活安全課への来署を案内し、夜間でも相談できると説明した。さらに氏名と連絡先を尋ねたが、小松本さんは名乗らず、後で行くと伝えた。
この通話は約2分間で、匿名の問い合わせとして処理された。警察側に相談者の氏名や連絡先が伝わらず、来署も確認されなかったため、折り返しの連絡は行われなかった。
茨城県警が説明した当時の判断2026年1月21日の容疑者逮捕後、茨城県警はこの電話への対応について説明した。
県警側は、電話口で小松本さんが取り乱した様子を見せず、氏名や連絡先も伝えなかったことなどから、切迫性は感じられなかったと説明した。また、当日中に警察署へ来ると考えていたという。
県警は、当時の判断について、合理性を欠いていたとは考えていないとの認識を示した。一方で、小松本さんが実際には来署しなかったことについて、警察から折り返しの電話は行われていなかった。
この点は、単に警察官が適切だったかどうかという問題にとどまらない。相談者が匿名で問い合わせた場合、どのように危険性を判断し、次の相談につなげるのかという運用上の課題を浮き彫りにした。
県警は1月28日に匿名相談への対応方針を変更2026年1月28日、茨城県警はストーカーなどの相談窓口に匿名の問い合わせがあった場合、氏名や連絡先を教えてもらうよう促し、速やかな来署につなげる対応を徹底する方針を示した。
これは、小松本さんの電話相談をめぐる問題が明らかになった後の対応だ。
県警は当初の判断に合理性がなかったとは認めなかったものの、匿名相談に対する対応を見直した。相談者の身元が分からない場合でも、危険性を考慮し、具体的な相談へ進めるための働きかけを強化する方向に動いたことになる。
過去の警察相談との関係は?事件後の2026年1月5日には、小松本さんが2015年と2017年にも、人間関係のトラブルについて合計3回警察に相談していたことが報じられた。
茨城県警は、当時の相談について必要な対応を行い、終結していたと説明している。ただし、これらの相談内容と今回の事件との具体的な関係は明らかになっていない。
過去の相談と2025年12月27日の電話を一つの連続した案件として扱うことはできない。それぞれの相談時期、内容、警察側の対応を区別して理解する必要がある。
一方、今回の事件を受けて問われているのは、被害を訴える人が正式な相談に進むまでのハードルをどう下げるかという点だ。相談者が匿名であっても、危険性を見落とさない仕組みが求められている。
【水戸地方裁判所の判決】拘禁刑20年となった理由と裁判の争点
事件から約8か月半後の2026年9月14日、水戸地方裁判所で裁判員裁判の初公判が開かれた。
殺人とストーカー規制法違反の罪に問われた大内拓実被告は、初公判で起訴内容を認めた。逮捕時には容疑を否認していたが、公判では認否が変わり、主な争点は刑の重さとなった。
被告が語った犯行動機2026年9月17日の被告人質問では、大内被告が小松本さんとの関係を解消したことに納得できず、被害者の存在を消して、交際前の状態に戻りたいという趣旨の説明をしていたことが報じられた。
テレビ報道によれば、被告は自分の気持ちを楽にしたい、人生をリセットしたいという考えを動機として説明していた。
しかし、自分自身の感情を整理するために相手の命を奪うという行為は、決して正当化できない。裁判では、こうした身勝手な動機に加え、位置情報を追跡する行為や犯行に向けた準備なども検討された。
検察側は拘禁刑21年を求刑2026年9月24日の論告求刑で、検察側は拘禁刑21年を求刑した。
検察側は、小松本さんが新婚で妊娠中だったこと、被告によるストーカー行為が続いていたこと、犯行に計画性が認められることなどを挙げ、極めて悪質な事件だと主張した。
一方、弁護側は、被告が自身の精神状態に問題を感じ、臨床心理士などへの相談や医療機関への受診を試みていた点を取り上げた。精神的な問題を抱えていたことや、更生の可能性などを考慮した判断を求めた。
双方の主張は、犯行の重大性をどのように評価し、どの程度の刑罰が相当なのかという量刑判断に向けて対立した。
9月30日、水戸地裁が拘禁刑20年を言い渡す2026年9月30日、水戸地裁は大内被告に拘禁刑20年の判決を言い渡した。求刑の21年に対し、判決は1年短い刑期となった。
テレビ朝日系の報道によると、裁判所は人生をリセットしたいという動機について、身勝手というほかないと指摘した。また、非常に強固な殺意に基づく執拗で凄惨な犯行だったと評価した。
判決では、身体に40カ所を超える傷があったことも犯行の悪質性を示す事情として取り上げられた。紛失防止タグを使った追跡や犯行に向けた準備なども、計画性を判断するうえで重要な要素となった。
事件の重大性と被害者・遺族の苦痛を踏まえ、裁判所は拘禁刑20年という実刑判決を選択した。
2026年10月15日に判決が確定判決後、検察側と被告側の双方に控訴の機会があった。しかし、控訴期限の10月14日までに、いずれからも控訴はなかった。
その結果、翌10月15日付で水戸地裁の拘禁刑20年の判決が確定した。
10月16日にはLuckyFM茨城放送も判決確定を報道している。2026年11月3日現在、この事件の裁判については、双方が控訴せず判決が確定したという状況にある。
【プロの結論】水戸市殺人事件が社会に突きつけた3つの課題
水戸市加倉井町殺人事件は、元交際相手による殺人という結果だけでなく、ストーカー行為の早期発見、デジタル機器の悪用、警察相談の実効性という3つの課題を社会に突きつけた。
1. 別れた後の執拗な接触を軽視しない交際関係が終了した後も、相手が連絡を拒否しているのに接触を続ける行為は、単なる未練や恋愛感情の問題ではない。
本事件では、SNSのブロックや着信拒否の後も、以前の勤務先や共通の知人を通じた接触が続いていた。加えて、位置情報を利用して居場所を特定する行為へと発展した。
連絡を拒否している相手への繰り返しの接触、勤務先への訪問、第三者を通じた居場所の確認などが重なった場合には、危険性を慎重に判断する必要がある。
2. デジタル機器による追跡にも注意する紛失防止タグは、日常生活の利便性を高める製品だ。しかし、本人の同意なく取り付けられ、位置情報の追跡に使われれば、ストーカー行為の手段になり得る。
今回の事件では、ぬいぐるみや自動車を利用した位置情報の取得が問題となった。スマートフォンや通信機器だけでなく、身近な小型機器も安全上の確認対象になることを示している。
身に覚えのない追跡通知や不審な機器の存在に気づいた場合は、記録を保存し、警察や専門機関に相談することが重要だ。
3. 警察相談を具体的な安全確保につなげる本事件の重要な検証点は、被害者が事件前に警察へ電話していたことだ。
小松本さんは生活安全課への相談方法を確認していたが、匿名の問い合わせとして処理され、正式な相談には至らなかった。茨城県警は当時の判断に合理性がなかったとは認めなかった一方、その後、匿名相談への対応方針を見直した。
相談者が氏名を明かせない事情を抱えていたり、警察署に足を運ぶことをためらったりするケースは考えられる。相談を受ける側には、来署を案内するだけでなく、危険性を確認し、必要な支援につなげる対応が求められる。
差し迫った危険がある場合は110番、緊急性の判断を含めた警察への相談は全国共通の相談電話「#9110」などを利用できる。ストーカー被害については、早い段階で相談し、連絡記録や不審な行動の記録を残すことも大切だ。
【水戸市殺人事件】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:水戸市加倉井町殺人事件はいつ発生しましたか?
A1:2025年12月31日です。水戸市加倉井町のアパートで、ネイリストの小松本遥さん(当時31歳)が殺害されました。同日夜、帰宅した夫が発見しました。
Q2:小松本遥さんを殺害した大内拓実被告はいつ逮捕されましたか?
A2:2026年1月21日です。茨城県警が殺人容疑で逮捕しました。逮捕当初は容疑を否認していましたが、9月14日の初公判では起訴内容を認めています。
Q3:紛失防止タグはどのように悪用されたのですか?
A3:公判で明らかになった経緯によると、被告はタグを仕込んだぬいぐるみを小松本さんの実家に届け、居住場所の特定につなげました。さらに車にもタグを取り付け、位置情報を追跡していました。
Q4:大内拓実被告の判決は何年ですか?
A4:2026年9月30日、水戸地方裁判所は拘禁刑20年を言い渡しました。検察側の求刑は拘禁刑21年でした。
Q5:判決は確定していますか?
A5:はい。検察側・被告側の双方が控訴期限の2026年10月14日までに控訴しなかったため、10月15日付で拘禁刑20年の判決が確定しました。
Q6:小松本さんは事件前に警察へ相談していたのですか?
A6:はい。2025年12月27日に水戸警察署へ電話し、元交際相手のストーカー行為について、どの部署に相談すればよいか問い合わせていました。氏名や連絡先を伝えず、後で行くと話したため、匿名の問い合わせとして処理されました。
水戸市加倉井町殺人事件は、2025年12月31日の発覚から、2026年1月21日の大内拓実被告の逮捕、9月30日の拘禁刑20年判決、10月15日の判決確定へと至った。
事件の背景には、元交際相手による執拗なストーカー行為と、紛失防止タグを利用した位置情報の追跡があった。加えて、被害者が事件の4日前に水戸警察署へ電話していた事実は、ストーカー相談をどのように受け止め、危険を防ぐ仕組みにつなげるのかという課題を明らかにした。
拘禁刑20年という判決は確定した。しかし、刑事裁判の終了によって、事件が社会に残した問題まで解決するわけではない。
ストーカー行為の早期発見、紛失防止タグなどの技術の悪用防止、匿名相談への柔軟な対応、被害者を孤立させない支援体制。これらを具体的な制度と運用に反映できるかが、今後の重要な課題となる。
この事件から受け止めるべきなのは、殺害という最終的な結果だけではない。その前に続いていた接触や追跡、そして助けを求めようとした被害者の行動を、社会全体でどう受け止めるかという問題である。
主要な事実確認に使用した資料- 警察庁「ストーカー規制法が改正されました!」(2025年12月30日の改正法施行)
- テレビ朝日系ABEMA(事件の詳細、紛失防止タグ、警察への電話、公判で明らかになった経緯)
- TBS NEWS DIG(2026年9月30日の判決)
- 共同通信配信記事(判決理由・量刑判断)
- LuckyFM茨城放送(2026年10月15日の判決確定)