ベーブ・ルース賞は、MLBのポストシーズンで際立った活躍を見せた選手を表彰する賞です。1949年の初受賞から長い歴史を持ち、2007年には評価対象がワールドシリーズからポストシーズン全体へと変更されました。全米野球記者協会(BBWAA)のニューヨーク支部が選出する賞として知られています。
2025年の受賞者は、ロサンゼルス・ドジャースの山本由伸投手です。山本はワールドシリーズMVPにも選ばれ、ポストシーズンを通じた投球が高く評価されました。2026年10月28日時点では、今季のワールドシリーズが進行中で、2026年のベーブ・ルース賞受賞者はまだ確定していません。歴代受賞者、選考の考え方、ワールドシリーズMVPとの違いを整理します。
【ベーブ・ルース賞とは】MLBのポストシーズンで輝いた選手を称える賞

ベーブ・ルース賞(Babe Ruth Award)は、MLBのプレーオフで優れたパフォーマンスを披露した選手に贈られる賞です。選出を担うのは、全米野球記者協会(BBWAA)のニューヨーク支部。ニューヨーク支部の公式ウェブサイトでは「Postseason MVP」と位置づけられています。
賞の名前は、ニューヨーク・ヤンキースなどで活躍し、野球史に大きな足跡を残したベーブ・ルースに由来します。レギュラーシーズンの成績を評価するMVPとは異なり、主な舞台はシーズン終盤のポストシーズンです。短期決戦でチームにどれほど大きな影響を与えたかが、賞の趣旨を理解するうえで重要になります。
ポストシーズンでは、レギュラーシーズンの通算成績が優れている選手でも、必ずしも本来の力を発揮できるとは限りません。一方、限られた試合で圧倒的な存在感を示し、チームの勝ち上がりを支える選手もいます。ベーブ・ルース賞は、そうした短期決戦ならではの活躍に光を当てる賞です。
もう一つの特徴は、ワールドシリーズで優勝したチームの選手だけに受賞資格が限定されていないことです。敗退したチームの選手であっても、ポストシーズン全体で特筆すべき成績を残せば評価の対象になり得ます。
【1949年の初受賞から2007年の制度変更まで】賞の歴史を整理
ベーブ・ルース賞の歴史を理解するには、制度が成立した時期と、最初の受賞者が決まった年を分けて考える必要があります。野球史資料のBaseball-Referenceでは制度の成立を1948年と説明しており、ニューヨーク支部の受賞者一覧では1949年が最初の受賞年になっています。
当初はワールドシリーズでの活躍が受賞者選びの中心でした。その後、2007年からは評価対象がポストシーズン全体へと広がります。リーグ優勝決定シリーズや地区シリーズなども含め、シーズン終了までの貢献を評価する仕組みになった点が大きな転換です。
| 年・時期 | 出来事 | 意味・注目点 |
|---|---|---|
| 1948年 | 制度が成立 | ベーブ・ルースの名を冠した賞として設けられる |
| 1949年 | 初受賞者はジョー・ペイジ | ニューヨーク・ヤンキースの投手が初代受賞者に |
| 2007年 | 評価対象を変更 | ワールドシリーズ中心からポストシーズン全体へ拡大 |
| 2024年 | ムーキー・ベッツが受賞 | ドジャースの野手がポストシーズンで評価される |
| 2025年 | 山本由伸が受賞 | ワールドシリーズMVPとの同時受賞も達成 |
| 2026年10月28日時点 | 今季のポストシーズンが進行中 | 2026年の受賞者は未発表 |
2007年の制度変更は、ベーブ・ルース賞とワールドシリーズMVPの違いを考えるうえでも重要です。ワールドシリーズMVPが最終シリーズに焦点を当てるのに対し、ベーブ・ルース賞はポストシーズンを通じた働きを評価する賞へと明確化されました。
この違いは、両賞の受賞者が必ずしも一致しない理由にもつながります。2024年はベーブ・ルース賞がムーキー・ベッツ、ワールドシリーズMVPがフレディ・フリーマンでした。2025年には山本由伸が両方を受賞しており、同じ選手が選ばれる年もあります。
【ベーブ・ルース賞の歴代受賞者一覧】1949年から2025年まで
歴代受賞者を見ると、投手と野手の双方が選ばれており、特定のポジションに偏った賞ではないことが分かります。以下は、ニューヨーク支部の公式受賞者一覧を基礎に、2024年と2025年の受賞記録を加えた一覧です。1994年はストライキの影響でワールドシリーズが開催されず、受賞者も選出されていません。
1949~1959年:1949年ジョー・ペイジ、1950年ジェリー・コールマン、1951年フィル・リズート、1952年ジョニー・マイズ、1953年ビリー・マーチン、1954年ダスティ・ローズ、1955年ジョニー・ポドレス、1956年ドン・ラーセン、1957年ルー・バーデット、1958年エルストン・ハワード、1959年ラリー・シェリー。
1960~1969年:1960年ビル・マゼロスキー、1961年ホワイティ・フォード、1962年ラルフ・テリー、1963年サンディー・コーファックス、1964年ボブ・ギブソン、1965年サンディー・コーファックス、1966年フランク・ロビンソン、1967年ルー・ブロック、1968年ミッキー・ロリッチ、1969年アル・ワイス。
1970~1979年:1970年ブルックス・ロビンソン、1971年ロベルト・クレメンテ、1972年ジーン・テナス、1973年バート・キャンパネリス、1974年ディック・グリーン、1975年ルイス・ティアント、1976年ジョニー・ベンチ、1977年レジー・ジャクソン、1978年バッキー・デント、1979年ウィリー・スタージェル。
1980~1989年:1980年タグ・マグロー、1981年ロン・セイ、1982年ブルース・スーター、1983年リック・デンプシー、1984年ジャック・モリス、1985年ブレット・セイバーヘイゲン、1986年レイ・ナイト、1987年フランク・ビオラ、1988年オーレル・ハーシュハイザー、1989年デーブ・スチュワート。
1990~1999年:1990年ビリー・ハッチャー、1991年ジャック・モリス、1992年デーブ・ウィンフィールド、1993年ポール・モリター、1994年選出なし、1995年トム・グラビン、1996年セシル・フィルダー、1997年モイゼス・アルー、1998年スコット・ブロシアス、1999年マリアノ・リベラ。
2000~2009年:2000年デレク・ジーター、2001年ランディ・ジョンソン、2002年トロイ・グロース、2003年ジョシュ・ベケット、2004年キース・フォーク、2005年ジェルマイン・ダイ、2006年デビッド・エクスタイン、2007年ジョナサン・パペルボン、2008年コール・ハメルズ、2009年アレックス・ロドリゲス。
2010~2019年:2010年ティム・リンスカム、2011年デビッド・フリース、2012年パブロ・サンドバル、2013年デビッド・オルティス、2014年マディソン・バムガーナー、2015年ウェイド・デービス、2016年ジョン・レスター、2017年ホセ・アルトゥーベとジャスティン・バーランダー、2018年デビッド・プライス、2019年フアン・ソトとスティーブン・ストラスバーグ。
2020~2025年:2020年ランディ・アロザレーナ、2021年フレディ・フリーマン、2022年ジェレミー・ペーニャ、2023年アドリス・ガルシア、2024年ムーキー・ベッツ、2025年山本由伸。
2017年と2019年のように、複数の選手が同時に受賞した年もあります。この点からも、ベーブ・ルース賞は必ずしも単純な個人成績ランキングの首位を選ぶものではなく、ポストシーズンにおける総合的な貢献を評価する賞だと理解できます。
【2025年は山本由伸が受賞】数字で振り返る圧巻のポストシーズン
2025年のベーブ・ルース賞受賞者は、ロサンゼルス・ドジャースの山本由伸です。ニューヨーク支部の2025年受賞者発表では、山本が「Postseason MVP」に相当するベーブ・ルース賞の受賞者として掲載されています。MLB公式の選手記録でも、山本の2025年のワールドシリーズMVP受賞が確認できます。
Baseball-Referenceなどに掲載された2025年ポストシーズンの投手成績を見ると、山本は5勝1敗、防御率1.45、37回1/3を投げて33奪三振を記録しています。短期決戦で複数の試合に登板しながら失点を抑え、チームの勝ち上がりを支えたことが、受賞を理解するうえで要点です。
防御率1.45は、投球内容の安定性を示す代表的な指標です。さらに37回1/3という投球回数は、ポストシーズンのように試合ごとの重要度が高い舞台で、長いイニングを任されたことを示しています。奪三振数だけでなく、失点を抑えながら試合を作った点にも注目すべきでしょう。
山本はワールドシリーズMVPにも選ばれました。つまり2025年は、ワールドシリーズという最終シリーズでの活躍と、ポストシーズン全体を通した働きの双方が評価されたシーズンです。両賞の性格が異なることを踏まえると、同時受賞は山本の貢献が異なる評価軸でも高く評価されたことを示しています。
ただし、山本の受賞を「日本人選手だから特別に選ばれた」と理解するのは適切ではありません。賞の選考対象はMLBのポストシーズンで活躍した選手全体です。受賞の根拠を考える際は、国籍や知名度ではなく、登板内容、投球回数、失点、勝利への貢献といった実際のパフォーマンスを見る必要があります。
【選考基準と受賞条件】何を満たせばベーブ・ルース賞を受賞できるのか
ベーブ・ルース賞には、レギュラーシーズンのMVPのような公式の数値基準や、打率・本塁打・勝利数に設定された固定配点が公表されているわけではありません。ニューヨーク支部の公式説明が示しているのは、ポストシーズンで最も優れた活躍を見せた選手を表彰するという基本方針です。
そのため、受賞条件を理解するには、形式的な資格と実際の評価ポイントを分けて考える必要があります。最初に、評価の中心はMLBのポストシーズンでの活躍です。2007年以降はワールドシリーズだけでなく、ポストシーズン全体が対象となっています。
実際のパフォーマンスを読み解く際には、次のような指標が参考になります。ただし、これらは成績を分析するための観点であり、公式に定められた必須条件や採点表ではありません。
- 投手:防御率、勝利数、投球回数、奪三振、重要な試合での登板内容。
- 野手:打率、出塁率、長打率、本塁打、打点、得点機での貢献。
- チームへの影響:勝ち上がりを左右する場面での働き、複数のシリーズを通じた安定性。
投手と野手では、活躍を示す指標が異なります。投手なら大量失点を防ぎながら長いイニングを投げる能力が重要な分析材料になります。一方、野手なら長打力に加え、出塁や得点機での打撃が評価を考える材料になります。
また、ワールドシリーズに進出したチームの選手だけが候補になるわけではありません。2020年のランディ・アロザレーナはタンパベイ・レイズの選手として受賞しましたが、レイズはその年のワールドシリーズで敗れています。この事例は、チームが優勝したかどうかだけで受賞者が決まるわけではないことを示しています。
受賞者の発表時期にも、毎年必ず同じ日に発表されるという固定日程はありません。ポストシーズン終了後に受賞者が公表され、ニューヨーク支部の年間表彰行事で顕彰される流れが一般的です。2026年の受賞者については、今季のポストシーズンが終了した後の公式発表が確認の基準になります。
【ワールドシリーズMVPとの違い】同じ選手が受賞しても賞の意味は異なる
ベーブ・ルース賞とワールドシリーズMVPは、どちらもMLBのポストシーズンにおける優れた活躍を評価しますが、同一の賞ではありません。大きな違いは、選出する組織と評価対象となる試合の範囲です。
ベーブ・ルース賞は全米野球記者協会(BBWAA)のニューヨーク支部が選出し、2007年以降はポストシーズン全体での活躍を対象としています。一方、ワールドシリーズMVPはMLBのワールドシリーズ終了時に選ばれ、評価対象は最終シリーズの試合に限られます。現在はウィリー・メイズ・ワールドシリーズMVPの名称でも知られています。
ワールドシリーズMVPは、最後のシリーズで決定的な働きをした選手を評価する賞です。ベーブ・ルース賞では、それ以前のシリーズを含めた働きも評価の対象になります。たとえば、地区シリーズやリーグ優勝決定シリーズで圧倒的な成績を残した選手は、ワールドシリーズでの成績だけを対象にする賞とは異なる評価を受ける可能性があります。
実際の受賞記録を比較すると、2024年はベーブ・ルース賞がムーキー・ベッツ、ワールドシリーズMVPがフレディ・フリーマンでした。2023年も、ベーブ・ルース賞はアドリス・ガルシア、ワールドシリーズMVPはコーリー・シーガーです。これらの年は、二つの賞が異なる評価軸を持つことを分かりやすく示しています。
一方、2025年の山本由伸は両賞を受賞しました。ワールドシリーズでの活躍がポストシーズン全体の評価にもつながった結果と考えられます。両賞が一致する年があるからといって、選考範囲や賞の意味まで同じになるわけではありません。
野球ニュースを読む際は、見出しに「MVP」と書かれているだけで、どの賞を指しているかを判断しないことが大切です。ワールドシリーズMVPなのか、ベーブ・ルース賞なのか、あるいはレギュラーシーズンのリーグMVPなのかによって、評価されている期間も意味も変わります。
【ベーブ・ルース賞】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ベーブ・ルース賞は誰が選ぶのですか?
A1:全米野球記者協会(BBWAA)のニューヨーク支部が選出します。ポストシーズンで最も優れた活躍を見せた選手を称える賞で、2007年以降はワールドシリーズだけでなくポストシーズン全体が評価対象です。
Q2:2026年のベーブ・ルース賞受賞者は誰ですか?
A2:2026年10月28日時点では、受賞者はまだ発表されていません。今季のポストシーズンが終了した後、ニューヨーク支部の公式発表で確認する必要があります。2025年の受賞者はドジャースの山本由伸です。
Q3:ベーブ・ルース賞とワールドシリーズMVPは同じ賞ですか?
A3:別の賞です。ベーブ・ルース賞は2007年以降、ポストシーズン全体を評価します。ワールドシリーズMVPはワールドシリーズの試合での活躍を評価します。2025年は山本由伸が両方を受賞しましたが、2024年や2023年はそれぞれ異なる選手が選ばれています。
ベーブ・ルース賞は、1948年に制度が成立し、1949年に初めて受賞者が選ばれた歴史ある賞です。2007年には評価対象がポストシーズン全体へと広がり、ワールドシリーズMVPとは異なる役割が明確になりました。
2025年の山本由伸の受賞は、この賞の性格を理解するうえで象徴的な事例です。山本はポストシーズンで5勝1敗、防御率1.45、37回1/3、33奪三振を記録し、ベーブ・ルース賞とワールドシリーズMVPの両方に選ばれました。最終シリーズだけでなく、ポストシーズンを通じた投球が高く評価された点に注目する必要があります。
ベーブ・ルース賞を正確に理解するための判断基準は三つあります。第一に、レギュラーシーズンではなくポストシーズンの活躍を評価する賞だということ。第二に、2007年以降はワールドシリーズ以外の試合も評価対象に含まれること。第三に、ワールドシリーズMVPとは選出主体も評価範囲も異なることです。
2026年の受賞者を見極める際も、知名度や優勝チームという結果だけに注目するのではなく、各シリーズの成績、重要な場面での働き、ポストシーズン全体への貢献を確認することが大切です。受賞者の発表後には、公式記録と照らし合わせることで、その年の評価がどのような活躍に支えられていたのかが、より明確になります。