大谷翔平選手が目標達成シートを作成したのは、花巻東高校の1年生だった冬だ。
指導したのは、当時の野球部監督だった佐々木洋監督。同校では、選手の技術向上だけでなく、人間形成や自立心を育てる目的で、目標達成表を活用していた。
スポーツ専門メディアnippon.comの佐々木亨記者による取材記事では、佐々木監督が企業の人材育成システムやビジネス書を参考に、選手自身が具体的な目標を立てる仕組みを取り入れた経緯が紹介されている。
つまり、マンダラチャートそのものを佐々木監督が発明したわけではない。既存の9マス思考法を高校野球の育成に応用した点が特徴だ。
9×9の81マスはどう構成されている?大谷選手の目標達成シートは、9×9の81マスで構成される。
仕組みは次のとおりだ。
- 中央の1マス:最終的に実現したい大きな目標
- 周囲の8マス:目標達成に必要な8つの重要要素
- 外側の64マス:8つの要素を実現するための具体的な行動
最初に大きな目標を設定し、それを実現するための条件を8つに分解する。加えて、それぞれの条件を8つの行動に細分化することで、夢と日常生活を結び付ける構造になっている。
なお、外側の8ブロックには、それぞれの要素名が中央に再掲される。そのため、81マスのうち、実際に書き出す目標や行動は中央の1項目、8つの要素、64の行動という構成になる。
「夢ノート」と日誌は別物もう一つ押さえておきたいのが、目標達成シートと日誌の違いだ。
2023年9月1日付の埼玉県立幸手桜高校の校長講話では、大谷選手が高校時代に日誌も継続していたことが紹介されている。
日誌には、その日の目標、良かったこと、やり直したいこと、課題などを書き、失敗については原因と次の改善策まで整理していたという。
つまり、目標達成シートが将来への道筋を描く設計図なら、日誌は毎日の行動を振り返る記録だった。
この2つを組み合わせていた点に、大谷選手の取り組みの特徴がある。
【実際の記入内容を公開】大谷翔平の8つの目標と64の行動

大谷選手のシートで最も注目されるのは、8つの要素の組み合わせだ。
野球の技術や身体能力に関する項目だけでなく、「運」と「人間性」が同じ重要度で配置されている。
当時のシートを掲載したPRESIDENTの関連記事や、公開資料で確認できる記入内容を整理すると、次のようになる。
| 8つの要素 | 実際に記入された行動・目標の例 | 目指したこと |
|---|---|---|
| 体づくり | 体のケア、サプリメント、柔軟性、スタミナ、可動域、食事(夜7杯・朝3杯)、FSQ90kg、RSQ130kg | 強い体と故障しにくい身体能力 |
| コントロール | インステップ改善、リリースポイントの安定、下肢の強化、体を開かない、軸をぶらさない | 投球の正確性と安定性 |
| キレ | 角度をつける、上からボールをたたく、リストの強化、下半身主導、回転数アップ | 球の質と威力の向上 |
| スピード160km/h | 軸で回る、下肢の強化、体重増加、肩周りの強化、体幹強化、ピッチングを増やす | 160km/hの実現 |
| 変化球 | フォーク完成、スライダーのキレ、左打者への決め球、落差のあるカーブ、奥行きをイメージ | 投球の幅を広げる |
| メンタル | 一喜一憂しない、頭は冷静に心は熱く、ピンチに強い、雰囲気に流されない、勝利への執念 | 精神的な安定と勝負強さ |
| 人間性 | 感性、愛される人間、計画性、感謝、礼儀、思いやり、信頼される人間、継続力 | 周囲から信頼される人間になる |
| 運 | あいさつ、ゴミ拾い、部屋そうじ、道具を大切に扱う、審判さんへの態度、プラス思考、本を読む、応援される人間になる | 日常の行動と姿勢を整える |
出典:PRESIDENT 2018年7月30日号掲載の目標達成シート。公開資料に掲載された初版の記入内容をもとに整理。
特に注目したいのは「運」の8項目大谷選手の夢ノートが広く知られるきっかけになったのが、運を高めるために設定した行動だ。
具体的には次の8つ。
1. あいさつ
2. ゴミ拾い
3. 部屋そうじ
4. 審判さんへの態度
5. 本を読む
6. 応援される人間になる
7. プラス思考
8. 道具を大切に使う
一見すると、プロ野球選手になるための技術的な課題とは関係がないように感じる。
しかし、佐々木監督の指導の背景には、野球の実力だけでなく、周囲から信頼される人間になることを重視する考え方があった。
ゴミ拾いは、単にグラウンドをきれいにするためだけの行動ではない。誰も見ていない場面でも、自分が正しいと思うことを実践する習慣につながる。
あいさつや道具の扱い、審判への態度も同様だ。
大谷選手は、運を偶然の出来事として待つのではなく、自分の行動によって整えていくものとして目標に組み込んでいた。
この考え方は、スポーツ以外の日常生活にも応用できる。
「人間性」に書かれた8つの項目も重要もう一つ印象的なのが、人間性のマスだ。
大谷選手は、感謝や礼儀だけでなく、思いやり、継続力、計画性、信頼される人間になることなどを掲げていた。
これは、単に周囲から好かれることを目指したものではない。
野球は個人競技ではなく、チームメート、監督、コーチ、審判、スタッフなど、多くの人との関係の中で成り立つスポーツだ。
技術が高くても、周囲との信頼関係を築けなければ、長期的に成長する環境を維持することは難しい。
大谷選手のシートには、競技能力と人間としての振る舞いを切り離さない姿勢が表れている。
【8球団指名は実現した?】夢ノートと実際のドラフト結果を検証
「ドラフト1位・8球団指名」という言葉を見て、実際に大谷選手が8球団から指名されたと思う人もいるかもしれない。
しかし、これは高校時代に設定した目標であり、実際のドラフト結果とは異なる。
2010年から2012年までの主な経緯| 時期 | 出来事 | 内容・意味 |
|---|---|---|
| 2010年4月 | 花巻東高校に入学 | 3年先輩の菊池雄星選手を意識し、さらなる高みを目指す |
| 高校1年冬 | 目標達成シートを作成 | 「ドラ1・8球団」を中心目標に設定 |
| 2012年7月19日 | 岩手大会準決勝 | 一関学院戦で160km/hを記録 |
| 2012年10月25日 | プロ野球ドラフト会議 | 北海道日本ハムが単独1位指名 |
| 2012年12月 | 日本ハムへの入団を表明 | 国内プロ野球でのキャリアを選択 |
2012年10月25日のドラフト会議で、大谷選手を1位指名したのは北海道日本ハムファイターズだった。
日本野球機構の公式記録にも、同球団の1位指名選手として大谷翔平の名前が掲載されている。
つまり、実際には8球団が競合したわけではなく、日本ハムによる単独1位指名だった。
当時、大谷選手はメジャーリーグ挑戦の意向を表明していた。日本の球団が指名を見送る動きもある中、日本ハムが交渉権を獲得したという経緯がある。
もう一つの目標「160km/h」は高校時代に達成一方、目標達成シートに記載されていた160km/hは、実際に高校時代に実現した。
2012年7月19日、岩手県営野球場で行われた岩手大会準決勝の一関学院戦。
大谷選手は6回に投じた直球で、球場のスピードガンに160km/hを表示させた。
当時の高校生として前人未到の記録であり、本人が目標として掲げていた数字に到達した瞬間だった。
ここで興味深いのは、すべての目標が同じ形で達成されたわけではないことだ。
8球団からの指名という結果は実現しなかったが、160km/hという具体的な技術目標は達成した。
大きな夢を設定することと、その過程で実現できる目標を一つずつ積み重ねることは、別々に考える必要がある。
【大谷翔平の夢ノートの作り方】目標達成シートを自分で書く5ステップ
大谷選手の目標設定シートは、野球選手だけが使えるものではない。
勉強、仕事、資格取得、健康管理、スポーツ、将来設計など、さまざまな分野に応用できる。
ここでは、初めて作成する人でも取り組める方法を紹介する。
STEP1:中央に達成したい大きな目標を書くまず81マスの中央に、自分が実現したい目標を書く。
例えば、次のようなものだ。
- 半年後に英検準1級に合格する
- 1年以内に希望する職種へ転職する
- 3か月で資格試験に合格する
- 1年後にフルマラソンを完走する
要点は、目標をできるだけ具体的にすること。
「勉強を頑張る」ではなく、「半年後の試験で合格する」のように、達成したかどうか判断できる形にする。
STEP2:目標達成に必要な8つの要素を決める続いて、中央の目標を実現するために必要な8つの要素を考える。
例えば、資格取得なら以下のような分類が考えられる。
1. 基礎知識
2. 専門知識
3. 問題演習
4. 時間管理
5. 集中力
6. 健康管理
7. 学習環境
8. 継続力
大谷選手が野球の技術だけでなく、人間性や運も含めたように、自分の目標を複数の角度から考えることが大切だ。
STEP3:8つの要素を具体的な行動に分解するそれぞれの要素について、実際に何をするのかを8つずつ書き込む。
例えば「基礎知識」であれば、次のような行動が考えられる。
- 毎日30分テキストを読む
- 重要用語を10個覚える
- 前日の内容を復習する
- 苦手分野を記録する
- 週末に小テストを受ける
- 間違えた問題を解き直す
- 月ごとに理解度を確認する
- 模擬試験で進捗を測る
ここでは、抽象的な言葉よりも、実際に行動できる内容を優先する。
STEP4:毎日の行動と結び付けるシートを完成させただけでは、目標達成には近づかない。
重要なのは、64の行動の中から、毎日または毎週実践するものを決めることだ。
例えば、毎朝30分の学習、週末の模擬試験、月末の進捗確認など、実行するタイミングを決める。
「いつかやる」を「毎朝7時に実行する」に変えるだけでも、行動に移しやすくなる。
STEP5:日誌で振り返り、必要に応じて修正する最後に、実践した結果を記録する。
- 今日できたこと
- できなかったこと
- うまくいかなかった原因
- 次回の改善策
- 翌日の行動目標
大谷選手も高校時代に日誌を使い、目標達成シートに書いた項目を実践できたか確認していたと紹介されている。
目標は一度決めたら絶対に変更してはいけないものではない。環境や実力の変化に合わせて見直すことも必要だ。
目標達成シートのテンプレートPDFは入手できる?マンダラチャート協会の公式サイトでは、基本テンプレートを無料で提供している。
公開されている形式は次のとおり。
- PDF形式
- Word形式
- Excel形式
登録不要で利用できるテンプレートもあるため、印刷して手書きしたい人にも、パソコンで編集したい人にも便利だ。
ただし、これはマンダラチャートの基本テンプレートであり、大谷選手の直筆シートそのものではない。自分の目標に合わせて内容を書き換えて使うものだ。
【マンダラチャートの効果と実態】大谷翔平の成功を再現できるのか?
大谷選手の活躍を見て、同じ目標達成シートを作れば自分も成功できるのではないかと考える人は多い。
しかし、マンダラチャートを作成することと、目標を達成することは同じではない。
効果が期待できる3つの理由1. 大きな目標を具体的な行動に変えられる
漠然とした夢を掲げているだけでは、今日何をすればいいのかが分かりにくい。
マンダラチャートでは、目標を複数の要素に分け、さらに行動に落とし込む。
そのため、目の前の課題が明確になりやすい。
2. 目標の抜け漏れを発見できる
大谷選手のシートで特徴的なのは、野球の技術だけでなく、生活習慣や人間性まで視野に入れていたことだ。
自分の目標についても、知識や技術だけでなく、時間、環境、健康、周囲との関係などを整理するきっかけになる。
3. 振り返りによって改善しやすくなる
毎日の記録と組み合わせれば、できたこととできなかったことを客観的に見直せる。
失敗を単なる挫折で終わらせず、次の行動に結び付けられる点が強みだ。
目標設定の研究から見える実際の効果目標設定の効果については、スポーツ心理学の研究でも検証されている。
2022年に公表されたスポーツ分野のシステマティックレビュー・メタ分析では、27研究を対象に目標設定とパフォーマンスなどの関係が分析された。
その結果、目標の種類によって効果に違いが見られた。
- プロセス目標:効果量 d=1.36
- パフォーマンス目標:効果量 d=0.44
- 結果目標:効果量 d=0.09
プロセス目標とは、最終結果ではなく、そこに到達するための具体的な行動を重視する目標だ。
例えば「試験に合格する」という結果目標に対して、「毎日問題を20問解く」というのがプロセス目標に当たる。
研究では、こうした行動に焦点を当てた目標設定が、パフォーマンスの向上に役立つ可能性が示された。
ただし、この研究はマンダラチャートそのものの効果を測定したものではない。目標設定全般についての研究結果であり、シートを書けば必ず成功するという意味ではない。
また、心理学者ピーター・ゴルヴィツァーらによる2006年のメタ分析では、「もし特定の状況になったら、この行動をする」という実行意図の形成が、目標達成を促すことが示されている。
これは、大谷選手のシートにある具体的な行動目標とも相性のよい考え方だ。
夢を掲げるだけでなく、行動する場面まで決めておくことが、継続につながる。
マンダラチャートを過大評価しないための注意点一方で、81マスを埋めること自体が目的になると、本来の意味を失ってしまう。
特に注意したいのは次の3点だ。
- 実行できないほど多くの行動を設定しない
- 自分の能力や環境に合わない目標を無理に掲げない
- 達成できなかったときに、シートの内容を見直さず放置しない
大谷選手の事例でも、目標達成シートを作成しただけで160km/hを投げられるようになったわけではない。
花巻東での指導、身体づくり、日々の練習、故障への対応など、多くの要素が重なっている。
マンダラチャートは成功を保証する魔法の用紙ではなく、努力の方向を整理するための道具だ。
【プロの結論】大谷翔平の夢ノートから学ぶ、本当に成果につながる目標設定
大谷翔平選手の目標達成シートから学べる最も大きな要点は、夢の大きさではなく、夢を日々の行動にまで分解していたことだ。
高校1年生の時点で「ドラフト1位・8球団」という大きな目標を掲げ、そこに到達するために必要な技術、身体能力、精神面、人間性、運を整理した。
そして、160km/hという具体的な数字を実際の高校野球の試合で記録した。
その過程には、佐々木洋監督の指導や花巻東高校の教育環境、本人の努力と継続があった。
どんな人におすすめできる?- 学生・受験生:勉強の目標や日々の学習計画を整理したい人
- 社会人:資格取得やキャリアアップを目指している人
- スポーツ選手:技術、体力、メンタルを総合的に改善したい人
- 習慣化が苦手な人:やりたいことを具体的な行動に変えたい人
反対に、細かな計画を立てること自体が負担になる人や、状況の変化に応じて柔軟に行動したい人は、最初から81マスを完璧に埋める必要はない。
まずは中央の目標と周囲の8項目だけでも十分だ。
【大谷翔平の夢ノート】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:大谷翔平の夢ノートは何歳のときに作った?
高校1年生の冬に作成した。花巻東高校で佐々木洋監督の指導を受け、将来の目標と具体的な行動を81マスに整理した。
Q2:大谷翔平のマンダラチャートの中心には何と書いてある?
「ドラフト1位・8球団」を意味する「ドラ1・8球団」と記載されている。プロ野球8球団から1位指名を受ける選手になるという目標だった。
Q3:大谷翔平は本当に8球団からドラフト指名された?
実際には違う。2012年のドラフト会議では北海道日本ハムファイターズが単独で1位指名した。8球団という数字は高校時代の目標だ。
Q4:ゴミ拾いはなぜ運を高める行動なの?
花巻東高校の指導では、あいさつや掃除、道具を大切にすることなど、日常の良い行動を重視していた。大谷選手のシートでも、こうした行動が「運」の項目に記載されている。
Q5:マンダラチャートは9×9の81マスすべて埋める必要がある?
基本形は81マスだが、最初からすべてを完成させる必要はない。中央の目標と8つの要素から始め、具体的な行動を少しずつ追加してもよい。
Q6:大谷翔平の夢ノートと同じテンプレートPDFはある?
マンダラチャート協会がPDF・Word・Excel形式の基本テンプレートを無料提供している。大谷選手の直筆シートの複製ではないが、同じ9×9の構造を使って自分の目標を設定できる。
Q7:2026年現在、大谷翔平の新しい夢ノートは公開されている?
広く紹介されている代表的な資料は、花巻東高校1年生の冬に作成した目標達成シートだ。2026年版として新たに公開された別の81マスシートと混同しないようにしたい。
大谷翔平選手の夢ノートは、花巻東高校時代に作成した9×9の目標達成シートだ。
中央には「ドラフト1位・8球団」という大きな目標を置き、周囲には体づくり、コントロール、キレ、160km/h、変化球、メンタル、人間性、運という8つの要素を配置した。
特に注目すべきなのは、ゴミ拾いやあいさつ、感謝、礼儀といった日常の行動も、目標達成に必要な要素として考えていたことだ。
2026年にこのシートを活用するなら、見た目だけをまねるのではなく、次の3つを意識したい。
1. 自分が本当に達成したい目標を決める。
2. 目標を実現するための具体的な行動を設定する。
3. 毎日振り返り、できたことと改善点を記録する。
大きな夢を掲げるだけでは、現実は変わらない。しかし、夢を小さな行動に分解し、一つずつ実践していけば、目指す場所までの道筋は見えてくる。
大谷翔平選手の夢ノートが今も多くの人に参考にされる理由は、まさにそのシンプルで実践的な考え方にある。