「平たい顔族」とは、漫画『テルマエ・ロマエ』で、古代ローマの浴場設計技師ルシウス・モデストゥスが現代日本人を指して使う作中の呼称です。彫りの深い顔立ちを持つローマ人と、比較的凹凸が控えめに描かれた日本人との対比から生まれた、作品を象徴するユーモラスな表現として知られています。
この言葉を生み出した作品の作者は漫画家のヤマザキマリです。ただし、現実の人類学で日本人を分類する正式な名称ではありません。2026年現在も続編『続テルマエ・ロマエ』が連載されており、作品をきっかけにした言葉として親しまれています。加えて、2025年の日本人の顔貌に関する研究や、2026年1月に発表された弥生人の古代ゲノム研究を踏まえると、縄文顔・弥生顔という単純な分類だけでは説明できない日本人の多様性も見えてきます。
【意味と元ネタ】平たい顔族とは?誰が名付けた言葉なのか

平たい顔族は、ヤマザキマリによる漫画『テルマエ・ロマエ』に登場する言葉です。主人公のルシウスが、タイムスリップ先の現代日本で出会う人々を、古代ローマ人とは異なる顔立ちの集団として認識し、そう呼びます。
言葉の意味を簡単に整理すると、次のようになります。
- 平たい顔:目鼻立ちの凹凸が比較的控えめな顔立ちを表す作中の描写。
- 顔族:似た特徴を持つ人々をひとまとまりの集団として表現する言い回し。
- 平たい顔族:ルシウスから見た現代日本人の呼び名。
映画版の公式ストーリーでも、ローマ人とは異なる「平たい顔」の人々が登場し、平たい顔族とは今の日本人を指すと説明されています。
誰が名付けた?作者と作中の命名者を区別するこの言葉を生み出した作品の作者は、漫画家のヤマザキマリです。一方、物語の中で日本人を平たい顔族として認識し、呼ぶ役割を担うのは主人公のルシウスです。
つまり、作者と作中の呼び手は別の立場にあります。ヤマザキマリが作品の設定や表現を作り、ルシウスが物語の中でその言葉を使うという関係です。
なお、「平たい顔族」という言葉が生まれた具体的な命名エピソードや、作者がこの表現を考案した瞬間について、独立した公式の説明が確認できるわけではありません。作品上の設定として理解するのが適切です。
なぜ「平たい」という表現になったのか要点は、顔を正面から見たときの印象だけでなく、横顔や斜めから見たときの立体感です。
目の周囲のくぼみ、眉骨の突出、鼻根部の高さ、鼻筋、頬骨や口元の前後関係などは、顔の立体感を左右する要素です。
作品では、こうした特徴をローマ人と日本人の対照的なイメージとして強調しています。ルシウスにとって見慣れない日本の浴場設備と同じように、日本人の顔立ちも驚きの対象になったわけです。
この表現の面白さは、現代日本人を見慣れた存在として描くのではなく、古代ローマ人の視点から異文化として再発見している点にあります。
【誕生の経緯】テルマエ・ロマエとルシウスが作った独特の世界観
物語の舞台は紀元2世紀の古代ローマ『テルマエ・ロマエ』は、古代ローマと現代日本の風呂文化を題材にしたタイムスリップコメディです。
主人公のルシウス・モデストゥスは、浴場の設計を専門とする古代ローマの職人。新しい建築様式が求められる時代に、昔ながらの浴場を大切にしようとする人物として描かれています。
仕事で悩んでいたルシウスは、友人に連れられて公衆浴場を訪れます。そこで浴槽に潜ったことをきっかけに、現代日本の風呂へと移動してしまいます。
目の前に広がるのは、ローマとは異なる浴場設備と、彼が平たい顔族と呼ぶ日本人たち。最初は戸惑うものの、日本の風呂にある設備や利用方法に驚き、その発想を古代ローマの浴場建築に取り入れていきます。
平たい顔族という呼称が作品に欠かせない理由この作品では、ローマ人が日本文化を一方的に評価するだけではありません。ルシウスは日本の風呂文化から多くを学び、日本人側も古代ローマの技術や文化に触れることになります。
特に興味深いのは、ルシウスが日本の浴場を訪れるたびに、そこにある設備を古代ローマの価値観に照らして解釈するところです。
現代の日本人にとって当たり前の銭湯の設備が、彼にとっては驚くべき技術に映ります。反対に、ローマ人の建築技術や浴場文化も、日本の読者に新鮮な発見を与えます。
平たい顔族という表現は、その異文化の出会いを象徴する言葉です。顔立ちの違いを笑いに変えながら、文化の違いを超えて理解し合う物語の入り口にもなっています。
ヤマザキマリの経歴と作品の評価作者のヤマザキマリは1967年東京都生まれ。1984年にイタリアへ渡り、フィレンツェの国立アカデミア美術学院で油絵と美術史を学びました。1997年から漫画家として活動しています。
海外生活や美術史への関心を背景に、古代ローマと日本を結びつけた作品を生み出しました。
『テルマエ・ロマエ』は2010年にマンガ大賞を受賞し、第14回手塚治虫文化賞では短編賞に選ばれています。娯楽作品でありながら、古代ローマの文化や歴史に読者の関心を向けた点も評価されました。
加えて、2024年2月6日には続編『続テルマエ・ロマエ』が少年ジャンプ+で連載を開始。2026年11月現在も公式サイトで連載情報が更新されています。
【関係性を一覧で整理】ヤマザキマリ・ルシウス・平たい顔族の関係
平たい顔族という言葉を正しく理解するには、作者、主人公、作品の舞台、現代日本人という要素を分けて考える必要があります。
それぞれの関係を整理すると、次のとおりです。
| 人物・作品・概念 | 関係性・役割 | 確認できる事実 |
|---|---|---|
| ヤマザキマリ | 作品の作者 | 『テルマエ・ロマエ』の漫画家。2024年から続編も連載。 |
| ルシウス・モデストゥス | 主人公・作中の呼び手 | 古代ローマの浴場設計技師。現代日本人を平たい顔族と認識する。 |
| 平たい顔族 | 作中の呼称 | ルシウスが出会う現代日本人を指す表現。 |
| 彫りの深い顔立ち | 対比される特徴 | 眉骨や鼻筋などの立体感を強調する作品上のイメージ。 |
| 現代日本人 | 物語の舞台となる人々 | 銭湯や温泉などの文化を通してルシウスと交流する。 |
| 『テルマエ・ロマエ』 | 原作漫画 | 古代ローマと現代日本の風呂文化を結ぶ作品。 |
| 『続テルマエ・ロマエ』 | 続編 | 2024年2月6日に少年ジャンプ+で連載開始。 |
この関係から分かるように、平たい顔族は実在する民族や歴史上の集団ではありません。あくまで漫画の世界における呼称であり、ルシウスの視点を通して成立した表現です。
【顔立ちを科学的に比較】日本人と古代ローマ人の違いは何か
平たい顔と彫りの深い顔の違い一般的に、平たい顔という表現では、顔面の凹凸が比較的目立ちにくい状態をイメージします。一方、彫りの深い顔では、眉骨の突出、目のくぼみ、鼻筋の高さ、頬や顎の立体感などが印象を左右します。
ただし、顔の立体感は単一の特徴だけで決まるものではありません。顔面の骨格、軟部組織、脂肪の分布、年齢、性別など、複数の要因が関係します。
また、日本人にも彫りの深い顔立ちの人はいますし、イタリアを含むヨーロッパにも比較的凹凸が控えめな顔立ちの人がいます。国籍だけで顔の特徴を決めつけることはできません。
縄文顔と弥生顔の違いとは日本人の顔立ちを語るときによく登場するのが、縄文顔と弥生顔という分類です。
これは、日本列島に暮らしていた縄文時代の人々と、弥生時代以降に大陸から移住してきた人々の形態的な特徴を、比較するために用いられてきた考え方です。
伝統的な説明では、縄文人は比較的立体的な顔立ち、弥生人は比較的平坦な顔立ちというイメージで紹介されることがあります。
しかし、この分類は現代人を二つのタイプに完全に分けるものではありません。実際には、地域や時代による違い、個人差、集団間の交流が存在します。
国立科学博物館の人類学研究に関わってきた馬場悠男氏による2025年6月の論文「日本人の顔の変遷—古代人の顔の復元から」では、日本人の顔の変化について、縄文時代以来の集団と弥生時代以降に大陸から移住してきた集団の混血に加え、食生活の近代化による顔面構造の変化も指摘されています。
つまり、現在の日本人の顔立ちは、古代の集団形成だけでなく、その後の生活環境の変化も関係しているのです。
2026年の古代ゲノム研究が示した新事実さらに注目したいのが、2026年1月14日に東京大学大学院理学系研究科が公表した研究成果です。
研究グループは、長崎県の正村遺跡と根獅子遺跡から出土した、約2,300〜2,500年前の西北九州弥生人4個体の核ゲノムを解析しました。
その結果、4個体のうち2個体は縄文人とほぼ同一のゲノム成分を保持し、残る2個体は縄文人由来と渡来人由来の双方の遺伝的成分を持っていたことが分かりました。
この結果は、弥生時代の人々を一つの均質な集団として捉えることが難しいことを示しています。地域によって人々の移動や交流の進み方が異なっていたことも分かります。
従来の縄文顔・弥生顔という二分法だけでは、日本列島の人々の成り立ちを十分に説明できないという点で、重要な研究成果です。
【古代ローマ人との比較】なぜルシウスには日本人が平たく見えたのか
古代ローマ人にも顔立ちの多様性があった作品の中では、古代ローマ人を彫りの深い顔立ち、日本人を比較的平坦な顔立ちとして対照的に描いています。
しかし、歴史上の古代ローマ人が全員同じ顔立ちだったわけではありません。
ローマ帝国はヨーロッパ、地中海沿岸、北アフリカ、中東などに広がった巨大な帝国でした。人や物が移動する広域社会であり、住民の出自も多様でした。
2019年に科学誌『Science』で発表された古代ローマ周辺のゲノム研究では、29か所の遺跡から得られた127人分のゲノムが分析されています。
研究では、帝政期のローマに近東方面からの移住が見られ、その後はヨーロッパ方面からの遺伝的な影響も確認されました。地中海、ヨーロッパ、北アフリカなどに由来する多様な人々がローマに暮らしていたことが示されています。
したがって、ローマ人と日本人を顔立ちだけで明確に二分することは、歴史的にも科学的にも正確ではありません。
彫刻や肖像画が作るローマ人のイメージ私たちが古代ローマ人について抱くイメージには、彫刻や肖像画の影響もあります。
古代ローマの人物像には、皇帝や政治家、軍人などを表現した彫像が数多く残されています。こうした作品を通して、整った鼻筋や立体的な顔立ちがローマ人の象徴として認識されることがあります。
ただし、彫刻は実際の住民全員を無作為に記録した資料ではありません。肖像としての表現、制作目的、時代の美意識などが反映されています。
つまり、作品のローマ人像は歴史的な雰囲気を伝える演出として楽しみながら、現実の人口構成とは分けて考える必要があります。
ルシウスの驚きは顔だけではなく文化の違いにも向けられているルシウスが日本人を平たい顔族と呼ぶ背景には、単純な外見の違いだけでなく、文化的な価値観の違いがあります。
彼にとって日本の銭湯は、未知の設備と習慣が集まった驚きの空間です。日本人の顔立ちも、その異文化体験の一部として描かれています。
ここに『テルマエ・ロマエ』ならではの笑いがあります。日本人が普段は意識しない文化や設備を、外国人の視点から眺め直すことで、身近なものの価値を再発見させてくれるのです。
【2026年の現在】平たい顔族という言葉の使われ方と本当の注意点
作品を知らない人にも伝わる表現になった平たい顔族という言葉は、現在では『テルマエ・ロマエ』を象徴する表現の一つとして知られています。
作品の話題や漫画・映画の感想、顔立ちを比較する雑談などで、作品を知っている人同士が引用的に使うことがあります。
特に、彫りの深い顔立ちと比較的凹凸の控えめな顔立ちを対照的に表現したいとき、作品のユーモアを踏まえた言い回しとして登場します。
自虐的な表現として使われることもある自分の顔立ちを冗談交じりに表現する場面でも使われることがあります。
ただし、相手の顔を平たいと評価する言葉として使うと、外見を否定されたと受け取られる可能性があります。
漫画の中では笑いを生む表現でも、現実の会話では受け手の感じ方が異なります。親しい間柄で作品のネタとして使う場合と、相手の容姿を評価する場合では意味合いが変わる点に注意が必要です。
人類学の正式な分類として使うのは間違い平たい顔族は、人類学や医学で使用される正式な分類名ではありません。
顔面形態を研究する場合には、頭蓋骨や顔面の計測値、鼻骨、頬骨、眼窩、顎などの構造を分析します。単純に平たいか彫りが深いかという印象だけで人間集団を分類するわけではありません。
また、縄文顔・弥生顔も、現代人を厳密に二つの民族に分類するための言葉ではありません。歴史的な集団形成を理解するための一つの説明枠組みとして捉えることが大切です。
2026年の古代ゲノム研究まで踏まえると、顔立ちをめぐる話題では、作品上の比喩と科学的な集団研究を混同しないことが重要になります。
【よくある質問】平たい顔族に関するFAQ
Q1:平たい顔族とはどういう意味ですか?
A1:漫画『テルマエ・ロマエ』で、古代ローマの主人公ルシウスが現代日本人を指して使う呼び名です。日本人の顔立ちを比較的平坦なものとして捉えた、作品上のユーモラスな表現です。
Q2:平たい顔族という言葉を名付けたのは誰ですか?
A2:言葉が登場する作品の作者は漫画家のヤマザキマリです。作中では主人公のルシウスが現代日本人をそう呼びます。実在の民族名や人類学上の分類名ではありません。
Q3:平たい顔族の元ネタは何ですか?
A3:ヤマザキマリの漫画『テルマエ・ロマエ』です。古代ローマの浴場設計技師ルシウスが現代日本へタイムスリップし、日本の風呂文化や人々に驚く物語が元になっています。
Q4:縄文顔と弥生顔では、どちらが彫りの深い顔ですか?
A4:伝統的な形態比較では、縄文人は比較的立体的な顔立ち、弥生人は比較的平坦な顔立ちとして説明されることがあります。ただし、これは集団の平均的な特徴を説明するための整理であり、個人の顔立ちを決めるものではありません。
Q5:日本人は本当に平たい顔立ちが多いのでしょうか?
A5:日本人の顔立ちは一様ではありません。顔面の凹凸や鼻の形、眉骨、頬骨などには個人差や地域差があります。日本人全員を平たい顔とする科学的根拠はありません。
Q6:2026年現在も平たい顔族という言葉は使われていますか?
A6:作品由来の表現として、漫画や映画の話題、顔立ちをめぐる雑談などで使われています。ただし、学術用語ではなく、相手の容姿をからかうような使い方には注意が必要です。
平たい顔族とは、『テルマエ・ロマエ』の主人公ルシウスが現代日本人を指して使う作中の呼称です。作者はヤマザキマリで、古代ローマと現代日本の風呂文化を比較する物語の中から生まれた印象的な表現です。
この言葉が面白い理由は、日本人にとって見慣れた顔立ちや生活文化を、古代ローマ人の視点から新鮮なものとして描いていることにあります。彫りの深い顔族と平たい顔族という対比は、作品のユーモアを支える重要な仕掛けです。
一方、人類学の観点からは、日本人の顔立ちを一つの特徴だけで説明することはできません。縄文人と弥生人の交流、地域ごとの集団形成、食生活の変化など、複数の要因が関係しています。
特に2026年1月に公表された東京大学などの古代ゲノム研究は、弥生時代の人々にも遺伝的な多様性が存在していたことを示しました。従来の縄文顔・弥生顔という単純なイメージを見直すきっかけにもなっています。
作品の言葉として楽しむなら、平たい顔族は今も魅力的な表現です。しかし、現実の人間の顔立ちを理解する際には、作品上の比喩と科学的な事実を区別する必要があります。
『テルマエ・ロマエ』が伝えている面白さは、顔の違いを競うことではなく、異なる文化の中に共通点や新しい発見を見つけることにあるのです。
主な根拠資料(編集確認用)
- 映画『テルマエ・ロマエ』公式ストーリー:平たい顔族の意味とルシウスの設定。
- 集英社『続テルマエ・ロマエ』公式サイト:2026年の連載状況、作者プロフィール。
- 医学書院『生体の科学』2025年6月号:馬場悠男氏による日本人の顔の変遷に関する研究。
- 東京大学大学院理学系研究科・2026年1月14日発表:西北九州弥生人4個体の古代ゲノム解析。
- 2019年『Science』掲載「Ancient Rome: A genetic crossroads of Europe and the Mediterranean」:古代ローマの遺伝的多様性に関する研究。
- 朝日新聞社・手塚治虫文化賞受賞作一覧:2010年の『テルマエ・ロマエ』短編賞受賞記録。