棒針編みのような、縦に並ぶV字の編み目をかぎ針で作りたい。そんなときに覚えておきたい技法が「メリヤス細編み」です。通常の細編みと同じように編み進めながら、針を入れる位置を変えることで、メリヤス編みに似た表情の編地を作れます。
手芸のオリムパスはメリヤス細編みの動画とバッグの作品例を公開しており、かぎ針編み作家Ronique(ロニーク)も、2025年12月に「メリヤスこま編み」の編み方を解説しています。両者の解説に共通する要点は、針を入れる位置と編地の密度です。この記事では、初心者が迷いやすい針の入れ方、輪編みの進め方、通常の細編みとの違い、斜行を防ぐコツまで、実際の作品作りに役立つ形で整理します。
【基本を理解】メリヤス細編みとは?通常の細編みとの違い

メリヤス細編みとは、かぎ針を使いながら、棒針編みのメリヤス編みに似た編地を作る方法です。「メリヤスこま編み」と呼ばれることもあり、英語では「Center Single Crochet(センター・シングル・クロッシェ)」という名称で知られる技法に近いものです。
一般的な細編みは、前段の目の頭にあるV字状の糸を拾って編みます。一方、メリヤス細編みでは、前段の細編みの中央、縦に伸びる目の足の間に針を入れるのが大きな違いです。この位置から編み進めることで、表面に縦方向のV字が並ぶような模様が生まれます。
なお、メーカーや作家によって「メリヤス細編み」「メリヤスこま編み」など呼び方が異なります。編み図や解説を参照するときは、名称だけで判断せず、実際の針の入れ方を確認すると混乱を防げます。
棒針編みのメリヤス編みと同じもの?見た目は似ていますが、編み方の構造は異なります。日本ヴォーグ社の「手づくりタウン」が紹介する棒針編みの基本では、メリヤス編みは表から編む段を表目、裏から編む段を裏目で編み、1段ごとに交互に繰り返す方法です。これに対して、メリヤス細編みは、かぎ針で前段の目の中央付近を拾い、細編みの要領で仕上げます。
そのため、メリヤス細編みを選ぶ理由は、棒針編みの手順をそのまま再現することではなく、かぎ針の扱いやすさを生かしながら、ニットらしい表情と比較的しっかりした編地を得られることにあります。
【初心者向け】かぎ針でメリヤス細編みを編む手順と針を入れる位置
メリヤス細編みで最初につまずきやすいのは、編み方そのものよりも、針をどこに差し込むかという点です。通常の細編みのように目の頭だけを拾おうとすると、狙った編地になりません。
メリヤス細編みの基本手順- 土台となる細編みを編む。くさり編みで作り目をし、通常の細編みを1段編みます。輪編みの場合も、まず土台となる段を用意し、編み図の指定に従って進めます。
- 前段の目の中央を確認する。細編みの頭にあるV字だけでなく、その下に伸びる縦の糸を観察します。
- 目の中央付近に針を入れる。前段の細編みの足の間を通すように針先を差し込みます。Roniqueの解説では、細編みの右側の足につながる糸を意識して針を入れ、糸を拾う方法が写真付きで示されています。
- 糸をかけて引き出す。針に糸をかけ、差し込んだ位置から糸を引き出します。
- 通常の細編みと同じ要領で完成させる。もう一度糸をかけ、針にかかっている2つのループを引き抜きます。
- 次の目も同じ位置に針を入れる。中央を拾う位置と糸の引き加減をそろえながら、最後まで繰り返します。
最初は針が入りにくく感じる可能性があります。無理に押し込むと糸が割れたり、編み目がきつくなったりするため、編地を少し広げながら針先を通すのがコツです。
針を入れる位置を見分ける3つのポイント- 目の頭だけを拾わない:通常の細編みで拾うV字の2本だけを対象にせず、その下に続く目の中央を確認します。
- 前段の目の足を目印にする:縦方向に伸びる糸を探し、その間に針を通す意識を持ちます。
- 編み地の表側を確認する:数目編んだら、表面にV字が縦に並んでいるかを確認します。横方向の筋ばかり目立つ場合は、針を入れる位置を見直しましょう。
「メリヤス細編みの針を入れる位置」が分かりにくいときは、明るい色で目の見やすい糸を使うのが効果的です。黒や濃紺、毛足の長い糸は目の構造を判別しにくいため、最初の練習にはあまり向きません。
【編み方を比較】メリヤス細編み・通常の細編み・棒針編みの仕上がり
どの編み方を選ぶべきかは、見た目だけでなく、作品に求める伸縮性や厚み、編みやすさによって変わります。メリヤス細編みは、ニットらしい外観と、かぎ針編みらしい扱いやすさを両立したい場合に候補となる技法です。
| 比較項目 | 通常の細編み | メリヤス細編み | 棒針のメリヤス編み |
|---|---|---|---|
| 基本の編み方 | 前段の目の頭を拾う | 前段の目の中央付近を拾う | 表目と裏目を段ごとに使い分ける |
| 表面の見た目 | 横方向の筋が目立ちやすい | 縦に並ぶV字模様が特徴 | 表側にV字模様が並ぶ |
| 編地の傾向 | 比較的しっかりしている | 目が詰まりやすく、厚みが出やすい | 比較的しなやかで伸縮性がある |
| 編みやすさ | 基本技法で覚えやすい | 針を入れる位置に慣れが必要 | 表目・裏目の習得が必要 |
| バッグとの相性 | 幅広い作品に使える | 形を保ちたいバッグや小物に向く | 柔らかなバッグなどに向くが、設計次第で補強が必要 |
| 初心者へのおすすめ度 | 最初の練習に最適 | 細編みを覚えた後のステップアップに適する | 棒針編みを学びたい人に適する |
この比較で押さえたいのは、メリヤス細編みが棒針のメリヤス編みと完全に同じ編地になるわけではないということです。糸の種類、かぎ針の号数、手加減によって、厚みや柔らかさは変化します。
通常の細編みと比べると、メリヤス細編みは針を中央に入れるため、編み進める際に抵抗を感じやすい傾向があります。その一方、縦方向のV字がはっきり現れやすく、目の詰まった質感を生かした作品に適しています。
【輪編みのやり方】立ち上がり目と編み図の読み方
バッグや筒状の小物を作る場合は、輪編みを使うと便利です。ただし、輪編みには段の終わりを引き抜き編みで閉じる方法と、段を閉じずにらせん状に編み進める方法があります。どちらを採用するかによって、段の境目や立ち上がりの処理が変わります。
輪編みで編み進める基本の流れ- 作り目を輪にする。くさり編みを輪にする方法や、編み図で指定された方法で土台を作ります。
- 土台の段を編む。最初の段は通常の細編みなどで編み、次の段からメリヤス細編みを始める構成が一般的な練習方法です。
- 段の開始位置にマーカーを付ける。段の始まりを見失わないようにし、段ごとの目数を数えます。
- 前段の目の中央を拾って編む。同じ位置に針を入れ、糸を引き出して細編みを完成させます。
- 指定された方法で次の段へ進む。らせん状に編む場合はそのまま進み、段を閉じる場合は編み図に従って引き抜き編みなどを行います。
輪編みで重要なのは、立ち上がり目を毎回必ず編むと決めつけないことです。らせん状に編む方法では、一般に立ち上がりのくさり編みを挟まずに続けます。一方、段ごとに閉じる方法では、立ち上がり目や引き抜き編みが指定される場合があります。作品の編み図を優先してください。
メリヤス細編みの編み図はどこを確認する?メリヤス細編みの編み図を探すときは、編み目記号だけでなく、記号の説明や編み方の注記も確認しましょう。通常の細編みと針を入れる位置が異なるため、一般的な細編みの記号だけでは、メリヤス細編みを表現しているか判断できない場合があります。
編み図に「メリヤス細編み」「メリヤスこま編み」などの記載があれば、その作品独自の説明や図解を確認します。目数、増し目の位置、段の終わり方も合わせて把握すると、途中で形が崩れるリスクを減らせます。
また、平らな往復編みと輪編みでは、目の見え方や作業のしやすさが異なります。初めて挑戦する場合は、輪編みの小さな試作品から始め、中央に針を入れる感覚をつかむとよいでしょう。
【斜行を防ぐ】メリヤス細編みがきれいに編めない原因と対策
メリヤス細編みは、通常の細編みで起こりやすい右方向への斜行を抑えやすい技法として紹介されています。Roniqueの解説でも、目の中央に針を入れることで斜行しにくくなる点が特徴として挙げられています。ただし、斜行が完全になくなるわけではありません。
編み目が斜行する主な理由- 針を入れる位置がずれている:中央から外れた位置を繰り返し拾うと、V字模様の並びが不均一になりやすくなります。
- 編む力が強すぎる:針が入りにくいからと糸を強く締めると、編地が硬くなり、目の高さや幅が不ぞろいになることがあります。
- 目数や増し目の位置が違う:輪編みで目を飛ばしたり、同じ場所に余分に編んだりすると、円形や筒状の形が崩れます。
- 段の始まりが分からなくなる:らせん状の輪編みでは段の境界が見えにくいため、マーカーを付けないと目数のずれに気付きにくくなります。
- 糸や針の組み合わせが合っていない:糸が割れやすい場合や、針の号数が小さすぎる場合は、中央に針を入れる作業が難しくなります。
- 最初は滑りのよい糸を選ぶ。表面が比較的なめらかで、糸割れしにくい糸なら、目の中央を確認しやすくなります。
- 針の号数を見直す。指定号数で針が通りにくい場合は、試し編みをしたうえで少し大きな号数を試します。完成サイズや編地の密度も変わるため、変更後のゲージを確認してください。
- 糸を強く締めすぎない。針を通すときに必要以上に力を入れず、糸を一定のテンションで引き出します。
- 数段ごとに表面を確認する。V字模様の高さや向きがそろっているか、目数が合っているかをチェックします。
- 本番前に試し編みをする。10目程度から始め、数段編んで厚みや硬さ、目の見え方を確かめます。輪編みの作品なら、実際の編み方で小さな筒を作ると判断しやすくなります。
特に初心者は、針を通しにくいことを理由に編み目を強く締めがちです。きれいな仕上がりを目指すなら、力を入れて編むより、針を入れる位置を正確にすることを優先してください。
【バッグ作りに最適?】メリヤス細編みのメリットと注意点
メリヤス細編みがバッグ作りに向いている理由は、表面のV字模様だけではありません。編地が詰まりやすく、比較的伸びにくい性質を生かすことで、形を保ちたい袋物や小物を作りやすくなります。
手芸のオリムパスは、公式の手づくりレッスンでメリヤス細編みの動画を公開し、作品例として「メリヤス細編みのバッグ」を紹介しています。動画では編み方を確認でき、実際の作品写真からは、縦に並ぶ編み目の表情も把握できます。仕上がりを具体的にイメージしたい人にとって、参考になる資料です。
メリヤス細編みでバッグを編む手順- 用途とサイズを決める。小さなポーチ、ミニバッグ、トートバッグなど、必要な容量と形を先に決めます。
- 糸と針を選ぶ。初心者は、目が見やすく糸割れしにくい糸から始めます。バッグの自立性を重視するなら、試し編みで硬さと厚みを確認します。
- ゲージを取る。一定の目数と段数を編み、10cm当たりの目数・段数を確認します。メリヤス細編みは密度が高くなりやすいため、通常の細編みと同じ寸法になるとは限りません。
- 本体を編む。編み図に沿って作り目を作り、輪編みまたは往復編みで本体を編み進めます。段数や増減目を記録しておくと安心です。
- 持ち手と口部分を仕上げる。持ち手には荷重が集中するため、編地だけに頼らず、必要に応じて裏地や補強材を取り入れます。
向いている人:ニットらしいV字模様が好きな人、目の詰まった小物を作りたい人、かぎ針編みでバッグの形を比較的しっかり保ちたい人に適しています。通常の細編みを習得した後のステップアップにもおすすめです。
向いていない場合:短時間で簡単に編み上げたい人、柔らかく軽い編地を最優先したい人、針の入れにくさが負担になる人は、通常の細編みや長編みなども比較してみてください。メリヤス細編みは編地が詰まりやすいぶん、同じサイズの作品でも糸の消費量や重さが変わる可能性があります。
また、伸びにくい編地であっても、重い荷物を入れれば持ち手や接合部分には負荷がかかります。実用的なバッグにするなら、持ち手の付け方、底の補強、裏地の有無まで含めて設計することが大切です。
動画で確認するならどこを見る?動画を選ぶ際は、完成した編地を見せる場面だけでなく、針を入れる瞬間と糸を引き出す瞬間が映っているかを確認しましょう。
- 手芸のオリムパス:「メリヤス細編みの編み方」の公式動画。メリヤス細編みの基本とバッグの作品例を確認できます。
- Ronique(ロニーク):「メリヤスこま編み」の動画と写真付き解説。前段の目の足や、針がどの糸を拾っているかを詳しく確認できます。
両方の解説を見比べると、完成した編地の見た目だけでなく、針の入れ方を理解しやすくなります。動画の再生速度を落とし、針先が目の中央を通っているかを確認しながら練習すると、自己流のずれを防ぎやすくなります。
【メリヤス編みかぎ針】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:メリヤス細編みは、かぎ針編み初心者でもできますか?
A1:できます。ただし、通常の細編みより針を入れる位置が分かりにくく、針も通りにくい傾向があります。まず通常の細編みを練習し、明るい色の糸で小さな試し編みをすると習得しやすくなります。
Q2:メリヤス細編みと通常の細編みは、何が一番違いますか?
A2:最も大きな違いは針を入れる位置です。通常の細編みは前段の目の頭を拾いますが、メリヤス細編みは前段の細編みの中央付近を拾います。そのため、表面に縦方向のV字模様が現れやすく、目の詰まった編地になります。
Q3:メリヤス細編みで編んだバッグは、型崩れしませんか?
A3:メリヤス細編みは伸びにくく、形を保ちたいバッグに適した編み方ですが、型崩れを完全に防げるわけではありません。糸の素材や太さ、かぎ針の号数、持ち手の構造、荷物の重さによって仕上がりは変わります。試し編みで硬さを確かめ、必要に応じて裏地や底の補強を取り入れましょう。
かぎ針でメリヤス編みのような編地を作るなら、まず覚えたいのがメリヤス細編みです。前段の細編みの中央付近に針を入れ、通常の細編みと同じ要領で編むことで、縦に並ぶV字模様と、目の詰まった質感を作れます。
初心者が意識したいのは、針を入れる位置を一定にすること、糸を締めすぎないこと、そして輪編みでは段の始まりと目数を管理することです。メリヤス細編みの動画や写真付き解説を活用すれば、針先が拾う糸を具体的に理解できます。
バッグ作りでは、見た目の美しさに加え、編地の硬さ、重量、持ち手の補強まで考えて素材を選ぶと、長く使いやすい作品に仕上がります。まずは小さな試し編みで通常の細編みとの違いを確かめ、自分の手加減に合った針と糸を見つけることから始めてみてください。