ドラマ『ノーサイド・ゲーム』の主題歌は、シンガーソングライター・米津玄師が書き下ろした「馬と鹿」です。2019年7月7日の第1話放送でサプライズ発表され、同年9月11日にCDシングルとして発売されました。大泉洋演じる君嶋隼人と、弱小ラグビーチーム・アストロズが逆境から再起する物語に寄り添う、力強さと繊細さを兼ね備えた楽曲です。
米津玄師は、ラグビーを題材にしたドラマのために試合映像を見ながら楽曲を制作し、スタジアムでも響く音楽を意識したと語っています。歌詞に描かれる痛み、愛情、仲間との結びつきとは何なのか。2026年現在も作品を象徴する一曲として記憶される「馬と鹿」について、発表経緯、制作背景、歌詞の解釈、CDの収録内容、ミュージックビデオまで詳しく整理します。
【主題歌の正体】ノーサイド・ゲームは米津玄師の「馬と鹿」!発表日は2019年7月7日

『ノーサイド・ゲーム』の主題歌は、米津玄師の楽曲「馬と鹿」です。
2019年7月7日、TBS系日曜劇場として放送された第1話の終盤で初めて楽曲が流れ、主題歌として正式に発表されました。それまで番組側は主題歌について明らかにしておらず、放送中のサプライズ発表という演出が話題を呼びました。
TBSの公式発表によると、楽曲はドラマのために米津玄師が書き下ろした新曲です。放送終了後には米津本人もSNSで主題歌を担当することを報告し、制作の背景を説明しました。
「大泉洋さん演じる君嶋が、逆境の中をひとつひとつ進んでいく様をどうにか音楽にできないかと探っていった末にこの曲ができました。」
このコメントから分かるのは、「馬と鹿」が単にラグビーの試合を盛り上げるための応援歌として作られたわけではないということです。
楽曲の中心に置かれているのは、主人公・君嶋隼人が理不尽な状況に直面しながらも、仲間とともに一歩ずつ前へ進む姿です。企業社会での挫折とスポーツチームの再建という二つの物語を、一つの音楽で結びつけています。
ドラマ『ノーサイド・ゲーム』のあらすじと主題歌の関係『ノーサイド・ゲーム』は、池井戸潤の同名小説を原作とする2019年放送のTBS日曜劇場です。主演は大泉洋。松たか子、上川隆也、大谷亮平、高橋光臣、眞栄田郷敦、廣瀬俊朗らが出演しました。
主人公の君嶋隼人は、大手自動車メーカー・トキワ自動車のエリート社員です。しかし、上司が進める企業買収に反対したことで府中工場へ左遷され、さらに経営不振に陥ったラグビー部「アストロズ」のゼネラルマネージャーを兼任することになります。
ラグビーの経験も十分な知識もない君嶋は、赤字を抱えるチームの再建に取り組みます。選手たちとの衝突、会社の経営問題、チームの存続危機など、数々の壁を乗り越えながら、アストロズの再起を目指す物語です。
このストーリーと「馬と鹿」の親和性は非常に高いものがあります。勝利だけでなく、敗北や葛藤、仲間を信じて努力する過程まで楽曲が包み込んでいるからです。
【制作秘話】米津玄師はなぜ「馬と鹿」を作った?主題歌の起用背景
「馬と鹿」の制作には、米津玄師自身がラグビーやスポーツに向き合った経験が深く関係しています。
2019年9月に公開されたインタビューでは、米津はスポーツを題材にした楽曲制作について、これまでとは異なる難しさがあったと明かしています。
スポーツを深く知らなかった米津玄師が試合映像を研究ぴあ音楽が紹介した2019年9月のインタビューによると、米津はそれまでスポーツを特別に注視してきたわけではありませんでした。
そこで、ラグビーを題材にしたドラマの主題歌を制作するにあたり、夜な夜な配信されている試合を視聴。選手たちが真剣に戦う姿を、どのように音楽に落とし込めるかを考え続けたといいます。
興味深いのは、単純に試合の激しさや勝利の高揚感だけを表現しようとしたわけではない点です。
試合に向けた地道な練習、厳しいトレーニング、仲間との信頼関係、そして試合後に分かち合う喜び。そうしたスポーツに関わる人々の姿そのものに、米津は美しさを見いだしていきました。
スタジアムで響く音楽を意識した制作米津玄師は第102回ザテレビジョンドラマアカデミー賞のドラマソング賞受賞インタビューでも、制作時の意識を説明しています。
「ラグビーを題材にしたドラマなので、楽曲はスタジアムで流れても耐え得るように、という意識はありました。」
加えて、ストイックなリズムを持たせながら、情緒的にも響く音楽に仕上げるため苦心したと振り返っています。
この発言は「馬と鹿」のサウンドを理解するうえで重要です。
リズムには試合前の緊張感や選手たちの力強い足取りを思わせる推進力があります。一方、歌声や旋律には、戦う人々の内面にある不安、愛情、悲しみを受け止めるような情緒があります。
激しさと優しさを同時に成立させること。それが、ドラマの主題歌として米津が目指した音楽的な方向性でした。
主題歌の起用理由はドラマの主人公と物語にあったTBSのプロデューサー・伊與田英徳は、主題歌発表時に、米津が作った楽曲について繊細さと力強さを兼ね備えていると評価しました。
また、何度聴いても感動し、パワーをもらえる楽曲だとコメントしています。
米津自身が君嶋の逆境を音楽にしようと考えたことと、制作側が感じた楽曲の力強さは、ドラマと主題歌の関係をよく表しています。
主人公だけでなく、アストロズの選手たちにも共通するのは、順風満帆ではない人生を生きながら、それでも前進しようとする姿勢です。「馬と鹿」は、その共通する感情を表現する楽曲として作品に組み込まれました。
【歌詞の意味を考察】馬と鹿に込められた愛情・痛み・愚直な強さ
「馬と鹿」の歌詞を理解するうえで重要なのは、困難に直面した人間の弱さを否定していないことです。
一般的なスポーツ応援歌では、勝利や成功、前向きな気持ちが中心に描かれることがあります。しかし、この楽曲では傷つくことや、思いどおりに進めないことも含めて、人間の生き方が描かれています。
「馬と鹿」というタイトルが連想させるものまず注目したいのが、「馬と鹿」というタイトルです。
二つの動物を並べたシンプルな言葉ですが、日本語では「馬」と「鹿」を続けると「馬鹿」という言葉を連想します。
馬鹿には、愚かさや不器用さといった意味があります。しかし、この曲をドラマの物語と重ねて聴くと、その印象は少し変わります。
周囲から無謀だと思われても、自分が信じるものを諦めない。効率が悪くても、仲間のために努力を続ける。そんな愚直な姿勢を肯定するようなタイトルとしても受け取れます。
君嶋はラグビーの専門家ではありません。アストロズも経営的には厳しい状況にあり、周囲からは存続を疑問視されています。それでも、彼らは目標に向かって進み続けます。
この不器用な前進こそ、ドラマと楽曲を結びつける重要な共通点です。
「痛みは消えないままでいい」という表現の意味歌詞の中でも印象的なのが、傷ついた経験や痛みを無理に消そうとしない姿勢です。
人は失敗したとき、できるだけ早く立ち直りたいと考えます。しかし、経験した苦しみをなかったことにはできません。大切なものを失った悲しみや、努力が報われなかった悔しさは、簡単には消えないものです。
「馬と鹿」は、そうした痛みを抱えたままでも前進できることを表現していると解釈できます。
アストロズの選手たちも、試合に負ければ悔しさを味わい、仲間との衝突や将来への不安を経験します。それでも次の試合に向けて努力を続ける姿が描かれています。
痛みを消すことよりも、痛みを抱えながら何を守り、何のために進むのか。その問いが楽曲の根底にあるように感じられます。
愛情は恋愛だけではない?仲間との絆という解釈もう一つの重要なテーマが愛情です。
この楽曲に登場する愛情は、必ずしも恋愛関係だけを意味するものではありません。大切な人を守りたいという気持ちや、仲間と一緒に目標を達成したいという思いにも重ねられます。
ラグビーでは、選手一人の力だけで試合に勝つことはできません。仲間を信頼し、互いの役割を理解し、チーム全体で戦う必要があります。
君嶋がアストロズの再建に取り組む過程でも、選手たちへの理解や信頼が重要な意味を持ちます。
そのため、「馬と鹿」の愛情表現は、ドラマの中に登場する家族愛、チームへの愛情、仲間を思う気持ちなど、さまざまな関係性に当てはめて聴くことができます。
歌詞の解釈で押さえたい3つの視点- 逆境:傷ついた経験を否定せず、その先へ進む人間の強さ。
- 愛情:自分にとって本当に大切な存在を守ろうとする気持ち。
- 愚直さ:周囲に理解されなくても、信じる道を歩み続ける姿勢。
なお、歌詞の意味を一つに限定する必要はありません。米津玄師の楽曲には、聴く人が自分の経験や感情を重ねられる余白があります。
仕事で挫折した人、仲間と何かに挑戦している人、大切な人のために頑張っている人。それぞれの立場によって、心に響く部分が異なるのも、この曲の魅力です。
【発売日・CD収録曲】馬と鹿は2019年9月11日発売!3形態の違いも紹介
米津玄師の10thシングル「馬と鹿」は、2019年9月11日(水)に発売されました。
発売日は同年9月3日に公式サイトで発表され、ノーサイド盤、映像盤、通常盤という3形態で展開されました。
CDの収録曲は全3曲公式ディスコグラフィーおよびソニーミュージックの作品情報によると、CDの収録内容は全形態共通で次の3曲です。
- 馬と鹿
- 海の幽霊
- でしょましょ
「海の幽霊」はアニメーション映画『海獣の子供』の主題歌として制作された楽曲です。「でしょましょ」は同シングルに収録された新曲で、社会に対する危機感などを背景に制作されたことを米津本人がインタビューで明かしています。
ノーサイド盤・映像盤・通常盤の違い3形態の特徴は、付属品と映像特典の有無にあります。
- ノーサイド盤:ホイッスル型ペンダントが付属する初回限定仕様。レザージャケットを採用。
- 映像盤:ライブ映像のティザーと「海の幽霊」のミュージックビデオを収録したDVD付き。紙ジャケット仕様。
- 通常盤:CDのみのシンプルな仕様。
特にノーサイド盤に付属するホイッスル型ペンダントは、ラグビーを題材にしたドラマとのつながりを感じさせるアイテムです。
また、ジャケットイラストは米津玄師自身が描き下ろしています。音楽だけでなく、パッケージのビジュアルにも本人のクリエイティブな個性が反映されています。
なお、映像盤のDVDに収録されているミュージックビデオは「海の幽霊」です。「馬と鹿」のMVがDVDに収録されていると勘違いしやすい部分なので、購入時には注意してください。
【MV・サウンドトラック】馬と鹿の映像表現と服部隆之の劇伴を比較
馬と鹿のミュージックビデオは2019年9月3日公開「馬と鹿」のミュージックビデオは、2019年9月3日に公開されました。
監督を務めたのは、米津玄師の「Lemon」や「Flamingo」のMVも手がけた山田智和です。
公開時の音楽ニュースによると、MVには約120人のキャストが参加。生き抜くために必要な衝動や情熱を、大人数の出演者とともに力強く表現した映像作品となっています。
ドラマ本編がラグビーチームの再建を描くのに対し、MVは楽曲が持つ感情やエネルギーを視覚的に表現しています。
特に注目したいのは、個人の感情だけに閉じない映像表現です。大勢の人間が同じ空間で動き、ぶつかり合いながら一つの方向へ向かう構成は、チームスポーツの精神とも重なります。
服部隆之のサウンドトラックは主題歌とは別作品『ノーサイド・ゲーム』の音楽を調べる際に、混同しやすいのが服部隆之のオリジナル・サウンドトラックです。
ドラマの劇伴音楽を担当したのは作曲家の服部隆之です。2019年9月4日にオリジナル・サウンドトラックが発売されました。
服部隆之は『半沢直樹』『ルーズヴェルト・ゲーム』『下町ロケット』『陸王』など、池井戸潤原作ドラマの音楽でも知られています。
つまり、ドラマの音楽には二つの異なる役割があります。
- 米津玄師「馬と鹿」:ドラマの主題歌として、登場人物の感情や作品全体のテーマを歌で表現する。
- 服部隆之の劇伴:試合、対立、家族、仲間との絆など、各場面の感情や展開をインストゥルメンタルで支える。
両者を区別すると、作品の音楽的な構造が理解しやすくなります。
【人物・作品の関係性】米津玄師・大泉洋・アストロズ・ラグビーのつながり
「馬と鹿」の魅力を深く理解するには、楽曲に関わる人物や作品の役割を整理しておくことも大切です。
主題歌を担当した米津玄師、物語の主人公を演じた大泉洋、チームの再建に取り組むアストロズ、そして劇伴を担当した服部隆之。それぞれの関係性は次のとおりです。
| 人物・作品 | 役割・関係 | 注目ポイント |
|---|---|---|
| 米津玄師 | 主題歌「馬と鹿」の作詞・作曲・歌唱 | ドラマのために書き下ろした楽曲を担当 |
| 大泉洋 | 主人公・君嶋隼人役 | 左遷を機にラグビーチームの再建に挑む |
| アストロズ | トキワ自動車のラグビーチーム | チームの再起と仲間の絆が物語の中心 |
| 松たか子 | 君嶋真希役 | 主人公を支える妻を演じる |
| 廣瀬俊朗 | 浜畑譲役 | 元ラグビー日本代表キャプテンとしても知られる |
| 服部隆之 | ドラマの劇伴音楽担当 | 主題歌とは別にオリジナルサウンドトラックを制作 |
| ラグビーワールドカップ2019 | 同年に日本で開催された国際大会 | ドラマと楽曲がラグビーへの関心の高まりと重なった |
2019年9月15日に放送された最終回では、主題歌だけでなく、米津玄師が描いた「馬と鹿」のジャケットイラストも登場しました。
TBSの公式発表によると、これまで楽曲は君嶋やアストロズが窮地に陥った際、力を集結して立ち上がる場面を彩ってきました。
最終回では、君嶋が再び訪れたラグビー部廃止の危機に立ち向かい、アストロズは宿敵サイクロンズとのプラチナリーグ優勝を懸けた決戦に臨みます。
作品のクライマックスに合わせて、主題歌のジャケットまで登場させた演出は、楽曲とドラマの結びつきを象徴する出来事でした。
ラグビーワールドカップ2019との関係「馬と鹿」が広く知られるようになった背景には、2019年のラグビーワールドカップ日本大会もあります。
『ノーサイド・ゲーム』が放送された2019年は、日本でラグビーワールドカップが開催された年です。ドラマが描くラグビーへの情熱と、実際の国際大会で盛り上がるラグビーへの関心が重なりました。
レコチョクの2019年インタビューでは、ラグビーワールドカップの会場やスポーツ番組でも「馬と鹿」が流れたことに触れられています。
これに対して米津は、スタジアムで流れても耐えられる楽曲を意識して制作したことを説明しました。
ただし、ここで押さえておきたいのは、「馬と鹿」はラグビーワールドカップ2019の公式大会テーマソングとして発表された曲ではないという点です。正式なタイアップ先はTBS日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』です。
ドラマから生まれた楽曲が、ラグビーというスポーツそのものへの関心と結びつき、作品の枠を超えて受け止められたことに、この曲の広がりがあります。
【よくある誤解を解消】ノーサイド・ゲーム主題歌に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ノーサイド・ゲームの主題歌を歌っているのは誰ですか?
A1:米津玄師です。ドラマのために書き下ろした新曲「馬と鹿」が主題歌に採用されました。2019年7月7日の第1話でサプライズ発表されています。
Q2:馬と鹿の発売日はいつですか?
A2:2019年9月11日(水)です。ノーサイド盤、映像盤、通常盤の3形態で発売されました。
Q3:馬と鹿のCDには何が収録されていますか?
A3:全形態共通で「馬と鹿」「海の幽霊」「でしょましょ」の3曲が収録されています。映像盤にはライブ映像のティザーと「海の幽霊」のMVを収録したDVDが付属します。
Q4:馬と鹿のミュージックビデオはいつ公開されましたか?
A4:2019年9月3日です。山田智和が監督し、約120人のキャストが出演する映像作品として公開されました。
Q5:馬と鹿の歌詞にはどのような意味がありますか?
A5:逆境の中でも前進する強さ、大切な人や仲間への愛情、傷ついても諦めない姿勢などが読み取れます。ドラマの君嶋やアストロズの姿と重ねると、より深く理解できます。
Q6:ノーサイド・ゲームのサウンドトラックも米津玄師が担当していますか?
A6:いいえ。主題歌「馬と鹿」は米津玄師、ドラマの劇伴音楽は服部隆之が担当しています。2019年9月4日発売のオリジナル・サウンドトラックも服部隆之による作品です。
Q7:馬と鹿はラグビーワールドカップ2019の公式テーマソングですか?
A7:いいえ。正式にはTBS日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』の主題歌です。ただし、ラグビーワールドカップの会場やスポーツ番組でも流れたことがインタビューで語られています。
『ノーサイド・ゲーム』の主題歌「馬と鹿」は、米津玄師がドラマのために書き下ろした2019年の楽曲です。2019年7月7日に第1話でサプライズ発表され、9月11日にシングルとして発売されました。
この曲の魅力は、ラグビーの激しさだけでなく、困難に直面する人間の弱さや、仲間を思う気持ちまで音楽に落とし込んでいることです。
米津玄師が試合映像を研究し、スタジアムで響くことを意識して制作した背景を知ると、ストイックなリズムと情緒的な旋律の意味も見えてきます。
また、歌詞を読み解くと、君嶋やアストロズの姿だけでなく、仕事や人生で壁にぶつかった人の心にも通じるテーマが浮かび上がります。
主題歌と劇伴の違い、CDの3形態、MVの制作背景、ラグビーワールドカップ2019との関係まで知っておけば、ドラマを改めて視聴したときにも新しい発見があるはずです。
「馬と鹿」は、単に勝利を祝うための応援歌ではありません。傷ついても、大切なものを守るために前へ進む人々を肯定する楽曲です。それこそが、2026年に聴き直しても心に響く理由と考えられます。
参照した公式発表・取材資料