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【1980年フジテレビ退社の理由】短銃不法所持事件と映画界からの再出発

雨宮 理沙 雨宮 理沙 • 更新: • 公開: • 読了約 16 分
目次

五社英雄の生涯を語るうえで避けて通れないのが、1980年のフジテレビ退社だ。

当時の五社は、すでにテレビ業界で確固たる地位を築いていた。『三匹の侍』をはじめとする時代劇の演出に加え、『御用金』『人斬り』などの映画でも実績を残しており、人気演出家として活動していた。

ところが1980年、短銃不法所持事件に関わったことで状況が一変する。

武蔵野美術大学の映像作品データベースやKINENOTEの略歴には、この事件を理由とするフジテレビの依願退職が記録されている。京都ヒストリカ国際映画祭の監督紹介でも、銃刀法違反による逮捕と、その後の映画界からの離脱が紹介されている。

つまり、単純に映画監督として独立するために退社したわけではない。事件によって、それまでのテレビ局でのキャリアに大きな区切りがついたのである。

退社後の苦境と1982年の復活

フジテレビを離れた後、五社は映画監督としての再起を目指すことになる。

その転機となったのが、1982年公開の『鬼龍院花子の生涯』だった。

原作は宮尾登美子の小説。主演は夏目雅子、共演は仲代達矢、岩下志麻ら。

それまでの男性を主人公にしたアクション中心の作風から、女性たちの生きざまや愛憎を物語の中心に据えた作品へと方向性を広げた。

この作品は大ヒットを記録し、五社は映画監督として再び第一線に戻る。

注目すべきなのは、単に以前の作風へ戻ったわけではない点だ。女性を物語の中心に置き、男社会の権力構造や家族のしがらみのなかで生きる人々を描くようになった。

その後の『陽暉楼』『櫂』にもつながる重要な転換だった。

【五社英雄の代表作・映画一覧】『鬼龍院花子の生涯』から『吉原炎上』まで

五社英雄

五社英雄の監督作品は、時代劇、任侠映画、現代アクション、女性を主人公とする文芸映画まで幅広い。

映画.comが2022年に報じた没後30年プロジェクトでは、監督作全24作品のパッケージ化が紹介された。

ここでは、代表的な劇場公開作品を公開年順に整理する。

五社英雄の主要監督作品24本
公開年 作品名 作品の特徴
1964年 三匹の侍 映画監督デビュー作
1965年 獣の剣 時代劇アクション
1966年 丹下左膳 飛燕居合斬り 剣戟時代劇
1966年 五匹の紳士 現代アクション
1966年 牙狼之介 時代劇アクション
1967年 牙狼之介 地獄斬り 時代劇アクション
1969年 御用金 大型時代劇
1969年 人斬り 歴史・剣戟映画
1971年 出所祝い 現代アクション
1974年 暴力街 任侠・アクション
1978年 雲霧仁左衛門 時代劇
1979年 闇の狩人 時代劇・犯罪劇
1982年 鬼龍院花子の生涯 女性群像・任侠ドラマ
1983年 陽暉楼 花街を舞台にした人間ドラマ
1984年 北の螢 歴史ドラマ
1985年 薄化粧 犯罪・人間ドラマ
1985年 櫂 女性と家族の人間ドラマ
1986年 十手舞 異色の時代劇
1986年 極道の妻たち 女性視点の任侠映画
1987年 吉原炎上 遊郭を舞台にした女性群像劇
1988年 肉体の門 戦後社会を描く人間ドラマ
1989年 226 二・二六事件を題材にした大作
1991年 陽炎 アクション・女性ドラマ
1992年 女殺油地獄 最後の監督作品

代表作1:『鬼龍院花子の生涯』(1982年)


監督復帰を飾った大ヒット作

- 原作:宮尾登美子
- 主演:夏目雅子
- 主な出演:仲代達矢、岩下志麻
- 製作・配給:東映

鬼龍院家を中心に、権力、家族、愛憎が交錯する物語。女性たちの激しい感情を豪華な映像で描いた作品だ。

特に知られているのが、夏目雅子の「なめたらいかんぜよ!」という台詞だ。

ただし、作品の本質は有名な台詞だけではない。男社会のなかで生きる女性たちの誇りや苦悩を、強烈な演技と映像で描いた点にある。

京都ヒストリカ国際映画祭の作品紹介でも、仲代達矢、夏目雅子、岩下志麻らの競演と、五社のダイナミックな演出が評価されている。

代表作2:『陽暉楼』(1983年)


監督としての評価を確立した作品

- 原作:宮尾登美子
- 主な出演:緒形拳、池上季実子、浅野温子
- 公開:1983年

花街を舞台に、男女の愛憎や女性たちの運命を描く。

この作品は、1984年の第7回日本アカデミー賞で五社英雄が最優秀監督賞を受賞した作品でもある。

単なる興行的成功にとどまらず、監督としての演出力が映画賞でも認められた重要作だ。

代表作3:『極道の妻たち』(1986年)


女性を主役にした任侠映画の代表作

- 原作:家田荘子
- 主演:岩下志麻
- 共演:かたせ梨乃、世良公則
- 公開:1986年11月15日

暴力団社会の権力争いを、組長の妻など女性たちの視点から描く。

従来の任侠映画では、男性の組長や組員が物語の中心になることが多かった。

しかし五社は、男性社会の内部で組織を支える女性たちに焦点を当てた。

岩下志麻の強烈な存在感も作品の魅力となり、東映を代表するシリーズの出発点となった。

なお、シリーズ全作品を五社が監督したわけではない。五社が監督したのは1986年公開の第1作であり、その後は別の監督たちが作品を引き継いでいる。

代表作4:『吉原炎上』(1987年)


女性群像劇の到達点の一つ

- 原作:斎藤真一
- 主な出演:名取裕子、二宮さよ子、藤真利子、かたせ梨乃
- 公開:1987年6月13日
- 上映時間:133分

明治時代の吉原を舞台に、遊女たちがそれぞれの事情を抱えながら生きる姿を描く。

華やかな衣装や豪華な美術セットの裏側に、貧困、境遇、男女関係、女性同士の葛藤がある。

国立映画アーカイブのフィルム情報にも、五社英雄が監督した1987年の東映作品として記録されている。

代表作5:『女殺油地獄』(1992年)


五社英雄の遺作

- 原作:近松門左衛門の人形浄瑠璃
- 主な出演:樋口可南子、堤真一、藤谷美和子
- 公開:1992年

近松門左衛門の古典を映画化した作品で、男女の欲望や嫉妬、人間の弱さを描いた。

五社は病と闘いながら本作を完成させた。公開は1992年5月で、同年8月30日に亡くなる前に完成していた最後の監督作品となった。

【演出スタイルの特徴と作品評価】なぜ五社英雄の映画は強烈なのか

五社英雄の映画を見れば、ほかの監督作品とは違う独特の熱量に気づく。

それは単に暴力的だからでも、豪華な女優陣を起用しているからでもない。映像、音、役者の身体表現を組み合わせ、観客の感情を揺さぶる演出に特徴がある。

1. 殺陣にリアリティーを持ち込んだ

『三匹の侍』で確立した特徴の一つが、リアルな殺陣だ。

整った動きや美しい刀さばきだけを見せるのではなく、泥にまみれ、必死に逃げ、傷つきながら戦う姿を描く。

音響も重要な要素だった。刀の衝突音や斬り合いの効果音によって、視覚だけでは伝わらない緊迫感を作り出した。

2. 豪華絢爛な映像と強烈な色彩

五社作品では、衣装、美術、照明、カメラワークが物語の感情を支えている。

特に『鬼龍院花子の生涯』『陽暉楼』『吉原炎上』では、豪華な世界と、その裏側にある悲劇的な人生の対比が印象的だ。

美しさを描く一方で、そこに隠された残酷さも見せる。この落差が作品に独特の迫力を与えている。

3. 女性の情念を物語の中心に置いた

1982年の『鬼龍院花子の生涯』以降、五社の作品では女性の存在感が一段と強くなった。

『極道の妻たち』では任侠社会を生きる妻たち、『吉原炎上』では遊郭で生きる女性たちが主人公となる。

女性を単に男性主人公の脇役として扱うのではなく、欲望や誇り、嫉妬、悲しみを持つ独立した人物として描いた。

この変化は、五社の映画監督としての後半生を特徴づけるものだ。

4. 娯楽性を最優先する大胆な演出

五社の演出は、映画評論の世界で必ずしも一様に評価されてきたわけではない。

光文社の映画評論連載では、作品テーマよりもアクションや残酷描写、エロティシズムを重視する娯楽志向が、当時の映画評論家から批判を受けることもあったと指摘されている。

一方で、観客やプロデューサーからの支持は強く、娯楽大作を継続的に制作した実績がある。

つまり、芸術映画としての均整や抑制を求める評価軸と、観客を圧倒する娯楽映画としての評価軸では、五社作品の見え方が異なるのだ。

五社英雄作品の評価と鑑賞ポイント
評価するポイント 五社作品の特徴 向いている鑑賞者
アクション 激しい殺陣、肉体的な迫力 時代劇・アクション好き
映像美 極彩色、豪華な美術、衣装 映像表現を楽しみたい人
人間ドラマ 欲望、権力、愛憎 重厚な人間ドラマ好き
女性描写 女性の誇りや葛藤を描く 女性群像劇に関心がある人
娯楽性 大胆な見せ場、強い演出 昭和の娯楽映画を楽しみたい人

五社作品は、静かな演出や控えめな感情表現を好む人には、刺激が強すぎる場合もある。

反対に、役者の熱演、強烈な映像、激しい人間関係を楽しみたい人には、今でも十分に鑑賞する価値がある。

【晩年と死因】食道がんとの闘病、1992年8月30日の死去

五社英雄は、映画監督として円熟期を迎えた時期に大きな病と向き合うことになった。

1989年公開の『226』の時期に食道がんが見つかり、手術を受けたことがKINENOTEの略歴に記録されている。

その後も映画制作への意欲は衰えなかった。

1991年には『陽炎』を監督。加えて、古典文学を映画化した『女殺油地獄』の制作にも取り組んだ。

体調が悪化するなかでも作品を完成させたことは、晩年の五社を象徴するエピソードだ。

1992年8月30日、五社英雄は63歳で死去した。

1929年2月26日生まれで、1992年8月30日没。2026年11月現在、没後34年となる。

遺作『女殺油地獄』に込められた最後の仕事

『女殺油地獄』は、五社が最後まで監督としての仕事を続けたことを示す作品だ。

原作は近松門左衛門の人形浄瑠璃。主人公の欲望や人間関係の破綻を描く物語で、五社が得意とした人間の情念というテーマにも通じている。

病気を抱えながらも完成を目指した作品であり、五社の監督人生を締めくくる一本となった。

娘・五社巴が語り継ぐ父の仕事

五社英雄には娘の五社巴がいる。

五社巴は2008年から五社プロダクションの代表取締役社長を務め、父の仕事や映像制作に関わる活動を続けてきた。

2022年の没後30年プロジェクトでは、五社巴が父の作品を次の世代へ伝えたいという思いを語っている。

「父の作品を次の世代につなぎたい」

五社巴氏の発言。映画.comによる2022年6月14日の没後30年プロジェクト報道。

また、2024年1月の『婦人公論』では、五社巴が映画監督・深作欣二の息子である深作健太と対談し、父親としての五社英雄についても語っている。

映画の中で見せる強烈な人物像とは異なる、家庭での父親の姿を知ることができる貴重な証言だ。

五社巴は、父の映画監督としての仕事を引き継ぐだけでなく、作品の保存や継承にも関わっている。

2026年現在も作品が再評価される理由

五社英雄は故人だが、作品は映画史の中に残っている。

2022年には没後30年プロジェクトが始動し、24作品のパッケージ化やCS・BS放送、名画座での特集上映などが企画された。

さらに2025年には没後33年の特集記事が公開され、晩年の作品を含めた再評価が続いている。

この動きが示すのは、五社作品が単なる昭和の懐かしい映画ではないということだ。

激しいアクション、濃密な人間ドラマ、女性の生きざまを描く表現には、現在の映画とは異なる独自の魅力がある。

【五社英雄に関するよくある質問(FAQ)】

Q1:五社英雄はいつ亡くなりましたか?

A1:1992年8月30日です。食道がんを患い、手術を経験した後も映画制作を続けました。63歳で亡くなっています。

Q2:五社英雄の映画監督デビュー作は何ですか?

A2:1964年公開の『三匹の侍』です。テレビ版は1963年にフジテレビで始まった時代劇で、映画版には丹波哲郎、平幹二朗、長門勇らが出演しました。テレビ演出家としての監督デビューは1959年です。

Q3:五社英雄がフジテレビを退社した理由は何ですか?

A3:1980年の短銃不法所持事件に関わったことが理由です。事件後、フジテレビを依願退職しました。その後、1982年の『鬼龍院花子の生涯』で映画監督として再起しました。

Q4:五社英雄の娘は誰ですか?

A4:娘は五社巴です。五社プロダクションの代表取締役を務め、父の作品の継承や映画・テレビ制作に関わる活動を続けています。

Q5:五社英雄の代表作は何ですか?

A5:『三匹の侍』『御用金』『人斬り』『鬼龍院花子の生涯』『陽暉楼』『極道の妻たち』『吉原炎上』『女殺油地獄』などです。時代劇から女性群像劇まで、幅広いジャンルの作品を残しています。

五社英雄の生涯は、テレビ演出家としての成功、1980年のフジテレビ退社、1982年の映画界復帰、そして食道がんとの闘病という、大きな転換点の連続だった。

特に重要なのは、監督としてのキャリアを前半と後半で分けて考えることだ。

前半は『三匹の侍』『御用金』『人斬り』などに代表される、リアリティーを重視したアクション時代劇。

後半は『鬼龍院花子の生涯』『陽暉楼』『極道の妻たち』『吉原炎上』などに代表される、女性の情念や愛憎を大胆に描いた映画群だ。

五社英雄を知るなら、次の順番で作品を見ると演出の変化が理解しやすい。

1. 『三匹の侍』:五社独自の殺陣とアクションを知る。
2. 『鬼龍院花子の生涯』:映画監督としての復活と女性描写の変化を見る。
3. 『陽暉楼』:映像美と人間ドラマの融合を味わう。
4. 『極道の妻たち』:女性を主人公にした任侠映画の革新性を知る。
5. 『吉原炎上』:女性群像劇の完成度を楽しむ。
6. 『女殺油地獄』:晩年の五社が最後まで追求した情念の表現を見る。

五社英雄の評価を、単に「昭和の豪快な映画監督」という言葉だけで終わらせるのは惜しい。

テレビと映画の垣根を越え、音響や殺陣の表現を変え、男性中心だった娯楽映画に女性たちの強烈な生きざまを持ち込んだ。その功績は、現在の視点から見ても興味深い。

2026年現在、五社英雄は故人でありながら、作品を通じてその演出思想を確認できる監督だ。 まずは『三匹の侍』と『鬼龍院花子の生涯』を見比べること。それが、五社英雄という映画監督の本質を理解する最良の入口となる。

主な参考資料:日本映画監督協会、武蔵野美術大学イメージライブラリー、KINENOTE、光文社、日本アカデミー賞公式サイト、国立映画アーカイブ、京都ヒストリカ国際映画祭、映画.com、婦人公論。

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デジタルマーケター 雨宮 理沙
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レーベル公式のリリースとライブ主催者の発表を一次情報とし、セットリストや動員は公式発表で再確認します。

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